高田昌幸著『真実』

高田昌幸著『真実』新聞は何故警察権力に屈せねばならなかったのか:孫崎 享氏」  その他
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高田昌幸著『真実』:高田氏から頂戴。

印象を書くが、その前に何故私が警察の裏金報道に関心を持つかを述べる方がよいだろう。

私の『日米同盟の正体』からの抜粋。

高知新聞は警察の捜査費問題を二〇〇三年七月に報道します。

警察の裏金問題というのは大変なエネルギーが必要です。

担当の記者は書くか書かないかで究極の選択を迫られた。

警察の幹部から『書いたらおまえは敵になる』『尾行する』『携帯の履歴を調べる』と言われ、『書かなかったら一生おまえにネタをやる』といわれます。

そこで彼は悩む。

書いたらガサ入れに高知新聞だけ知らないと言うことがあるかもしれない。

書かなかったら、おそらく本当に一生ネタをくれるだろう。

彼が迫られたのは新聞記者なのか、新聞社員なのかということだろうと思います。

社員として出世するなら会社が嫌がる原稿は、取り下げるの選択はあったと思います。

社員として出世しようと思えば警察と取引する方法もあった

抜かれないため、組織の中で何とか生き残っていくための仕事をやって、それだけで手一杯。

しかし、自己保身のために忠実な会社員の道を選んだら、つまり新聞記者を捨てたら、新聞記者になった意味はありません」(依光隆高知新聞編集部次長、)―(筆者注:「記者」はあらゆる分野での任務に該当する)。

つまり、『新聞記者』になるか『新聞社員』になるかの問は『外交官』になるか『外務省員』になるかの問でもあったのです。

さて新聞記者を選択したらどうなるか。

どんな運命が待っていたか、それを高田昌幸著『真実』が書いています。

北海道新聞は2003年から約1年半北海道警察の裏金問題を報道。

結局道警本部長が北海道議会で謝罪する事態に。

かつ9億円幹部等の負担で全額返済。

この裏金報道は2004年新聞協会賞を受賞する。

しかしこの本はこれからスタート。

道警は追い詰めた北海道新聞に反撃を開始する

道警は「自分達は裏金作りを認め議会で謝罪しけじめつけ。

道新も裏金問題で騒ぎすぎ.やり過ぎだ。

新聞社がけじめをつけていない」とけじめを要求。

道警本部長にきた樋口氏(後警視総監)が対応。

「うちから求めていることがあるだろう。そのけじめが必要なのだ」。

道新不祥事が発覚する。

北海道新聞は道警のしめつけに、たまらず、「裏金取材班の解体」を行う。

先ずデスクで指揮した高田氏は外れロンドン支局へ。

後、運動部担当へ。

さらに取材の同僚記者は皆警察担当を外れる。

警察の追求はここで終わらない。

「おわび社告」掲載を要求。

更に佐々木元総務部長〈道警NO2)が高田氏を名誉毀損で訴える。

道新は道警と手打ちを模索。

それは高田氏を差し出す形で。

裏金報道を行った記者の首を差し出す形で。

暴力団みたい。

早坂氏(道新)は佐々木氏に「佐々木さんの提訴方針が避けられないのであれば、事前に道新がどこまで負けるかを決めておく出来レース裁判をやりましょう。形だけ裁判やって和解しましよう」と働きかけ。

この本の問いかけ。

「新聞は何故警察権力に屈せねばならなかったのか。組織はなぜ個人を切り捨てながら生き延びようとするのか」。

北海道警察北海道新聞の姿はまさに日本社会の縮図。

正義のために、組織のために戦っているはずの人間を組織が裏切る。

戦った高田氏は母体の北海道新聞に裏切られる。

もし、日本のマスコミを論じようとするなら、この本を読むべきである。

そしてマスコミの暗部を理解すべきである。

そして、日本社会は組織を守る人間を平気で切る淋しい社会であることも、同時に知って下さい

高田昌幸氏・52歳:こんな有能な記者を生かせない日本社会、偉そうな顔している日本のメディア、貴方方は何だ。

ブログ「4月から高知新聞記者になります。郷里に戻って年老いた両親と暮らしながら、地道な取材の現場に戻り、そして、もろもろのことを目指す、というのも悪くないことだと考えている」