クーデター

マスコミに載らない海外記事   メタボ・カモ


Paul Craig Roberts

2013年7月13日

アメリカ人はクーデターに苦悩しているのに、それを認めるのをためらっている。現在ワシントンで支配をしている政権は、憲法上と、法律上の正統性に欠けている。アメリカ人は、行政府は法を超越すると主張し、アメリ憲法を単なる“紙くず同然”と見なす権力の強奪者連中によって支配されている

違憲政府は、違法政府だ。忠誠の誓いでは、“外国であれ、国内であれ、あらゆる敵に対する”憲法の擁護が必須だ。建国の始祖達が明らかにした通り、憲法の主要な敵は政府自身なのだ。権力は束縛されるのを嫌い、常に自らを制約から解き放そうとするのだ。

ワシントンの政権の基盤は、強奪した権力にすぎない。オバマ政権は、ブッシュ/チェイニー政権同様、正統性はないのだ。アメリカ人は、法と憲法によってではなく、噓とむき出しの暴力で支配する違法な政府によって迫害されている。政府にいる連中は、アメリ憲法を“自分達の手を縛る鎖”と見なしている。

南アフリカアパルトヘイト政権の方が、ワシントンの政権よりまっとうだった。パレスチナイスラエルアパルトヘイト政権の方がよりまっとうだ。タリバンの方が、よりまっとうだ。ムアマル・カダフィサダム・フセインの方が、ずっと正統だった。

ブッシュ/オバマ政権が残した唯一の憲法上の保護は憲法修正第2条だが、アメリカ政府の武力と、国民に認められた武力の不均衡を考えれば、意味のない修正条項だ。ライフル銃一丁を持って立ち上がり、国土安全保障省の2,700輌の戦車一輌、あるいは無人飛行機一機、あるいは防具で重装備したスワット部隊から自分や家族を守れる国民など皆無だ。

中世ヨーロッパ暗黒時代の農奴同様、アメリカ国民は、行政府にいる誰か知らない人物の権限で、選び出され、いかなる証拠も裁判で全く提示されずに、その人物の親族にも、行方に関する情報を知らせずに、穴蔵に投げ込まれ、拷問されかねないのだ。あるいは、説明無しで、飛行機による旅行の権利を奪うリストに載せられかねないのだ。盗聴されていない環境での面と向かっての会話以外の、あらゆるアメリカ人の、あらゆる通信は、国家シュタージ庁NSAに盗聴され、記録され、そこから“国内過激派”を生み出すべく、語句を組み立てることも可能だ。

アメリカ国民を穴蔵に投げ込むのが余りに面倒な場合には、その国民を無人機から発射されるヘルファイア・ミサイルで好き飛ばせば済む。説明は全く不要だ。専制君主オバマにとって、撲滅された人間など、リスト上の氏名にすぎない。

アメリカ大統領は、自分には、こうした憲法上禁じられた権利があると宣言し、彼の政権は、アメリカ国民を弾圧し、殺害するために、そうした権利を行使している。大統領が、自分の意思は法と憲法よりも上位だと主張している事実は周知の事だ。ところが、権力簒奪者を弾劾しようという要求は皆無だ。議会は無気力だ。奴隷は従順なのだ。

民主主義に責任を持つべき大統領を、ローマ皇帝へと変身させるのを手助けした連中の中には、その反逆罪への報奨としてて、カリフォルニア大学バークレー法科大学院の法学教授の座を得たジョン・ユもいる。反逆罪ということで、ユのお仲間、ジェイ・スコット・バイビーは、連邦第9巡回区控訴裁判所裁判官に任命される見返りを受けた。今や、行政府は法を超越していると、バークレー校法学教授が教え、連邦巡回控訴裁判所裁判官が裁定するのだ。

行政府によるアメリカに対するクーデターは成功した。問題はこうだ。それは継続するだろうか? 現在、行政府は、噓つき、犯罪人と国賊で構成されている。地球上の悪はワシントンに集合しているもののようだ。

ワシントンが、国内法にも、国際法にも、完全に違反して、世界中をスパイしているというエドワード・スノーデンの証拠に対するワシントンの反応は、法と人権より、報復の快楽を、アメリカ政府が優先していることを、あらゆる国々に対し、はっきりと示した。

アメリカ政府の命令で、ヨーロッパの傀儡諸国は、ボリビア大統領の飛行機に、領空飛行許可を与えず、モラレス大統領を乗せた飛行機をオーストリアに着陸させ、捜索させた。アメリカ政府は、エドワード・スノーデンが飛行機に搭乗しているかも知れないと考えたのだ。アメリカ政府にとっては、国際法や外交特権の尊重より、スノーデン逮捕の方が大切なのだ。

アメリカ政府が、イギリスの傀儡に、スワット・チームをロンドンのエクアドル大使館に送り込み、ジュリアン・アサンジを引きずり出し、彼を水責めできるようCIAに引き渡すよう命令するのは、一体どれ程先のことだろう?

7月12日、スノーデンは、モスクワ空港で世界中の人権団体と会った。アメリカ政府による違法な権力の行使により、亡命を認めた中南米三国のいずれかに旅することを妨害されていると彼は述べた。それゆえ、スノーデンは、ロシアのプーチン大統領の条件を受け入れ、ロシアへの亡命を要請したと述べた。

のんきなアメリカ人や、過去を知らない若者達には、これの意味するところがわからない。私が職業生活をしていた頃には、真実を語る人々を迫害するのはソビエト・ロシアで、アメリカは彼らの亡命を認め、保護しようとしていた。現在は、真実を語る人々を迫害するのがアメリカ政府で、彼らを保護するのが、ロシアなのだ。

今回、アメリカ国民は、スノーデンは国賊だというアメリカ政府の噓には騙されていない。世論調査では、大多数のアメリカ人が、スノーデンを内部告発者と見ていることが分かっている。スノーデンの暴露で打撃を受けたのは、アメリカではない。民主主義、憲法アメリカ人に対するクーデターをなし遂げた、アメリカ政府内の犯罪人達が打撃を受けるのだ。スノーデンの頭皮を要求しているのは、アメリカ人ではなく、権力を掌握している犯罪人達だ。

オバマ政権はブッシュ/チェイニー政権同様、正統性はない。アメリカ人は、法と憲法によってではなく、噓とむき出しの暴力による違法な政府支配によって抑圧されている。

オバマ専制政治の下では、スノーデンのみならず、アメリカ国内で、真実を語る全てのアメリカ人が撲滅の標的とされている。国土安全保障省のボス、ジャネット・ナポリターノは、最近、専制政治に貢献したかどで、カリフォルニア大学学長に任命されたが、彼女は、国土安全保障省は、その焦点を、イスラム教テロリストから、“国内の過激派”に変えたと発言した。連中の犯罪を暴露して、政府を当惑させる、ブラッドリー・マニングやエドワード・スノーデンの様な真実を語る人々までも容易に対象にし得るどうにでも解釈できる、漠然とした言葉だ。ワシントンで違法な権力を握っている犯罪人どもは、真実を抑圧するか、そういう行為を大逆罪と再定義しないかぎり、生き残れないのだ。

もしアメリカ人がクーデターを黙認してしまえば、アメリカ人は自らを、しっかりと専制政治支配下に置くこととなる。

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the Westが購入可能だ。

記事原文のurl:www.paulcraigroberts.org/2013/07/13/coup-detat-paul-craig-roberts/

首相の考えを聞けないの? 参院選演説で聴衆のボード没収(東京新聞:ニュースの追跡)

「首相の考えを聞けないの? 参院選演説で聴衆のボード没収(東京新聞:ニュースの追跡)」  原子力・核問題
首相の考えを聞けないの? 参院選演説で聴衆のボード没収(東京新聞:ニュースの追跡)投稿者 播磨 日時 2013 年 7 月 14 日 から転載します。

首相の考えを聞けないの? 参院選演説で聴衆のボード没収
2013/7/14 東京新聞朝刊 こちら特報部:ニュースの追跡より

原発廃炉に賛成?反対?」。安倍晋三首相の街頭演説で、女性(40)がこんな質問ボードを掲げようとして、没収された。掲げる前に、自民党スタッフや警察官を名乗る男性4人に取り上げられた。この様子の動画はインターネットで公開され、「言論封殺か」と疑問の声が噴出する騒ぎになっている。(出田阿生)

自民党福島県連は県内の全原発廃炉を公約にしているのに、党本部は再稼働を目指している。その矛盾が分からなかった。せっかく首相が来るなら、聞いてみたいと思って」

ボードを取り上げられた女性は福島県内に住む主婦。5児の母でもある。福島原発事故後、子どもを被ばくから守る活動に取り組んできたという。

「事件」が起きたのは、参院選公示日の4日。女性は、JR福島駅前で行われた安倍首相の第一声を聞きに行った。持っていたボードはA3判サイズ。「総理、質問です。原発廃炉に賛成?反対?」と印字した紙を段ボールに貼り付けた。「私たちの声を届けるチャンスはなかなかない。直接、質問に答えてはくれなくても、ボードの文字が首相の目にとまるかも知れないと思って」

演説会開始の前に、男性4人が取り囲んだ。一人は「警察の者ですが」と名乗った。別の一人は「ここは演説会で、国会とか質問して応答する場所じゃないですから」ととがめた。自民党スタッフの名刺を差し出した男性はボードを「一時預かる」と持ち去った。

男性たちは「どういったアレですか、どちらから来られたんですか」と質問を続け、「連絡先を教えて」と執拗(しつよう)に迫った。女性の住所や名前を聞き出してメモをした。

女性は、「もう帰りますから」と泣きながらその場を立ち去った。女性が演説を撮影しようとしたスマートフォンの動画に、一連の様子の一部が記録された。

「連絡先をしつこく聞かれ、本当に怖かった。逮捕されるのではと思うくらいだった」と女性は振り返る。ボードは一週間後の11日、教えていないはずの女性の勤務先宛てに、郵送で返却されてきた。

動画がアップされると、「言論の封殺ではないか」などと批判が噴出。弁護士有志が、自民党本部や警察庁福島県警に抗議文を提出した。事実関係を確認する質問状も送ったが、一切回答はないという。梓澤(あずさわ)和幸弁護士は「表現の自由の侵害だ。参院選初日で国民の政治意識が高まる時に、市民が首相に声を届けようとした行為を与党や警察とおぼしき人々が妨害した」と憤る。

安倍首相は、6月の東京都内の街頭演説で、環太平洋連携協定(TPP)に反対してドラムをたたいていた人たちを「左翼の演説妨害」と決めつけた文章をフェイスブックに書き込んだことがある。倉地智広弁護士は「自民党に反対する意見を首相の目に触れさせまいと、警察が過剰に反応したのではないか」と推測する。

自民党は、TBSのニュース番組の報道に「公正公平を欠く部分があった」と抗議し、一時取材を拒否した。田場暁生弁護士は「TBS問題もそうだが、大人げない対応だ。政権与党なのだから、もっと大きく構えればいい。ともかく公党として到底許される行為ではない」と話した。
 

コメント


01. 2013年7月14日 08:40:17 : XUd48KYCio
原発廃炉に賛成?反対?」の大プラカードを阿部と自民・公明の演説会で、掲げましょう!

02. 2013年7月14日 10:20:57 : 7oSKGju5kA
為政者は窃盗を行い警察はこれを幇助する。
一件罷り通った。 知らぬ顔も通した。
成功したと学習した。

二件目 三件目は遠からん。
数を重ね重ねて、何れ其此此処で当然の出来事となる。
他人の出来事では無くなる。

斯う云う事を涼しい顔でやり果せる輩の徒党だ
積重ね積重ね、既成事実化の暁には制度としての特高すら整備しかねない。
選挙は近い。奴らの議席を削れ!


03. 函館の犬。 2013年7月14日 10:36:40 : bhbAK3m6MJQx2 : tzp2jKBlo2
安倍が演説にきたら、FUCK YOU!のプラカードをかかげようぜ。

04. 2013年7月14日 10:47:58 : mEvNfNbpJY
ヤりまくったったら エ~ねん!
多分、、この程度の自由しか あれへんのやから、、

05. 2013年7月14日 11:16:05 : NNHQF4oi2I
安倍晋三の 目的が、「言論封殺だ」

 原発報道と 言論封殺 が 安倍自民党の 政治目的だ


06. crites 2013年7月14日 13:18:26 : Lb4g7GWIhFnZM : G31buyzTAk
質問ボードを掲げることが、法的に問題があるかどうか。問題がなければやるべきことは簡単だ。

日本全国、すべての候補者の前で質問ボードを掲げればいい。

これで常に原発が論点になるよ。


07. 2013年7月14日 13:43:42 : ac4I6pF4sY
原発廃炉に賛成?反対?」っていうプラカードを掲げるだけなら、演説の妨害にはならないと思うんだけどね。
それを没収するというのは、やっぱり表現の自由の弾圧じゃないかな。
原発問題について知りたいという「知る権利」を根底から否定している。

08. crites 2013年7月14日 13:51:02 : Lb4g7GWIhFnZM : pNbHJX0mZE
>>07
>「原発廃炉に賛成?反対?」っていうプラカードを掲げるだけなら、演説の妨害にはならないと思うんだけどね。

このあたりを専門家がしっかり判断する必要があるね。逮捕されないように(笑)。

問題がないんだったら、プラカードを掲げることをムーブメントにすればいい。

自民党の候補者の前だと危ないんだったら(笑)、別の候補者でも全然構わないでしょ。動きを作ればいいんだから。

山本太郎の前から始めればいいんだよ。


09. 2013年7月14日 15:24:24 : MUywgL6w4H
まさに中世

10. 中田のみや 2013年7月14日 17:52:38 : Ppx1BoMyX1YIQ : vecfdCa5Dk
名前とっ電話番号をしつこく聞いていた。公安だろう。個人情報を徹底的にしらべ、ブラックリスト入りでしょう。これから大変だろう。小生も、就職するまで追っかけられた。何かあると、自分だけ地検に出頭を求められたり、自由が聞かなくなる。恐ろしい国ですよ。頭の悪い警察はひつこく見張るしね。

11. 2013年7月14日 19:09:38 : DnMKHAQt3w
参院選自民党だけには入れてはいけない。

12. 2013年7月14日 19:53:08 : etbD7QLSBw
>男性たちは「どういったアレですか、どちらから来られたんですか」と質問を続け、「連絡先を教えて」と執拗(しつよう)に迫った。
>女性の住所や名前を聞き出してメモをした。

こうやって国民を弾圧してたのか?

自民党が、ここまで恐ろしい政党だとは知らなかったな。
自民党は落とさなければ、人権を剥奪されて、○されてしまうな。

10さんそこまでひどいんじゃ、逆ブラックリストを作る必要がありますね?


13. 2013年7月14日 20:50:30 : oLYPlmPKz6

 『言論の自由』を邪魔する背広族。
 この憲法違反の族を誰が取り締まってくれるのですか?

吉田元所長は現代版犠牲システムに殺された (永田町異聞)

「吉田元所長は現代版犠牲システムに殺された (永田町異聞) 」  原子力・核問題
吉田元所長は現代版犠牲システムに殺された (永田町異聞)  投稿者 赤かぶ 日時 2013 年 7 月 14 日 から転載します。

2013年07月14日 永田町異聞

福島第1原子力発電所の元所長、吉田昌郎の死因となった食道ガンと、放射線被ばくの因果関係はないと東京電力は言う。そう簡単に判断してよいものだろうか。

吉田所長の被ばく量が70ミリシーベルト。これは東電の隠ぺい体質のなかから出てきた数字で、あてにはならない。

原発作業員の被曝限度100ミリシーベルトを下回っているから問題ないというが、その説明も明確な科学的データにもとづくものではない。

ICRPが緊急時に100ミリシーベルトまで認めているというのが唯一の拠り所だろう。

文科省はこう説明する。「一般人の線量限度は本来、年1ミリシーベルトだが、ICRP原発事故などの緊急時には年20〜100ミリシーベルト、事故収束後は1〜20ミリシーベルトを認めている」。

ICRPが許容放射線量の根拠にしているのは、広島、長崎の被爆者の健康被害データと、原爆投下時の放射線量の暫定的な推定値だ。福島が直面しているような「微量放射線」の影響を調査した結果にもとづくものではない。

広島、長崎の被爆者については、原爆傷害調査委員会(ABCC)が、白血病やガンなどの健康被害を追跡調査したデータがある。ところが、原爆投下時にどれだけの放射線量があったのかが定かでないため、放射線量と人体への影響についての相関関係を解明しきれていない。

ネバダなど過去の核実験の測定値にもとづいて、広島、長崎の放射線量を推定した値を、広島、長崎で集めた発病データにあてはめて、人体が放射線でこうむる影響を計算した結果が、ICRPの許容放射能の数値のもとになっている。

筆者の知る限り、微量放射線が人体に与える影響についての調査結果を人類にもたらしたのは1977年の「マンクーゾ報告」をおいてほかにない。

マンクーゾ博士が米・ワシントン州のハンフォード原子力施設労働者の健康被害を追跡した調査である。米政府・エネルギー省に「ペルソナ・ノン・グラータ」(危険人物)の烙印を押されたマンクーゾ博士から直接、話を聞いたジャーナリスト、内橋克人の著書「原発への警鐘」によると、調査結果の概略はこうだ。

◇1944年〜72年に至る29年間に、ハンフォード原子力施設で働いた労働者2万4939人のうち、調査時点での死亡者3520名。そのうち白血病を含むガンによる死者670名。全米白人のガン死亡率より6%以上も高かった。
ガンで死亡した労働者が生前、職場で浴びた外部放射線量は平均1.38ラド、ガン以外の死者の平均線量は0.99ラドだった。ガンによる死者のほうが生前、40%多く放射線を浴びていたことになる。◇

放射線の単位であるラド、レム、シーベルト、グレイ、ベクレルはそれぞれ定義が異なり、単純に換算できないが、ここでは便宜的に、1ラド=0.01グレイ=0.01シーベルトとする。

ガンで死亡した労働者の浴びた外部放射線量1.38ラドというと、0.0138シーベルト、すなわち13.8ミリシーベルトである。もちろん年間の被曝量ということであろう。

そしてマンクーゾ報告はこう結論づける。「人間の生命を大事にするというのなら、原子力発電所の内部で働く作業従事者の被曝線量は年間0.1レム(1ミリシーベルト)以下に抑えるべきである」

わが国では、ICRPの勧告をもとに年間の放射線許容量として、一般人の場合で1ミリシーベルト放射線業務従事者なら50ミリシーベルトという数字を採用してきた。

原発従事者でも1ミリシーベルト以下というマンクーゾ報告の結論からすると、吉田所長の浴びた70ミリシーベルトというのは、とんでもなく高い数字である。

しかし、原発で働く人の許容放射線量を1ミリシーベルト以下にしようと思えば、作業効率やコスト面などで難しく、現実の問題として、原発そのものを否定することにつながる。

当然、米国の国策にそぐわず、原発関係者や学者らから「科学的信憑性に欠ける」などと一斉攻撃を浴びて、マンクーゾ報告は米政府の手で抹殺され、学界の深い闇の底に葬られたのである。

筆者は、現代における「犠牲のシステム」を象徴するのが吉田所長の死であると受け止めている。

北朝鮮拉致被害者、蓮池薫さんの実兄、蓮池透さんが原子力燃料サイクル部長までつとめた東京電力を2009年に早期退職し、月刊誌「世界」2011年8月号の対談「東京電力という社会問題」で、次のような証言をしている。

原子力は安いという神話がありますが、内部の雰囲気では逆ですね。原子力は故障ばかりで稼働率が上がらないうえに安全対策にも莫大なカネがかかる。資材部門からは原子力はカネがかかりすぎるとよく言われていました」

原子力燃料サイクル部長だった人物から、あっさり「原子力はカネがかかる」と、本音が飛び出してきたのは驚きだった。

「単価が火力と変わらないということになると、原子力の優位性が失われてしまいます。そこで、とにかく発電単価を下げるために、一時、コストダウンの嵐が吹きまくりました。…言うまでもなくコストダウンと安全性の確保は矛盾する要求です。安全性を犠牲にせずにコストダウンを実現しなければならない。そこが非常に難しい問題でした」

「今回も、無制限にお金をかけて要塞のような原発を築いておけば、あるいは事故は防げたかもしれません。しかし、東京電力は利潤を追求しなければならない民間会社であるわけです」

危険性を内包する原子力発電を推進するための最大のPR材料としてでっち上げた「安い発電単価」を維持するため、東電という会社が安全性よりもコストダウンに比重を置く経営戦略を進めてきたことをうかがわせる。

そのように作為的にひねり出したコスト等のデータを、寸分の疑いもなく官僚や学者らが受け取って、そのまま世間に垂れ流し、原子力は安いエネルギーであるということが神話化していったのだろう。

原子力事業は、国益の名のもとに経済的発展を優先してきた国家運営が内蔵する「犠牲のシステム」と深く結びついている。

犠牲とは「供犠」(サクリファイス)のことであり、もともとは神に生贄をささげることによって神の保護を獲得し、犠牲をささげる者が生き延びるという古来からのシステムである。

東京への電力供給の犠牲になってきたのがフクシマの人々であり、アメリカ軍への便宜供与の犠牲を強いられているのがオキナワの人々である。

大企業が世界競争に勝ち抜くための犠牲となっているのが非正規雇用の働き手であり、外資を含む大型小売店乱立の犠牲となっているのが、年々、減り続けている自営業者である。

福島第一をはじめとする各原子力発電所で、日常的に被曝を余儀なくされている作業員たちは、供犠システムにおける生贄の象徴と言うこともできよう。

社会に埋め込まれた供犠の構造と、事なかれ主義が結びついたとき、誰も責任を負わないまま、無数の人命が危険にさらされる。


新 恭  (ツイッターアカウント:aratakyo)



コメント


01. 2013年7月14日 19:38:55 : mzJGbzbTRY
 新 恭(ツイッターアカウント:aratakyo)さま

現在の日本社会を現しています。残念なことに
まさにそのとおりです。選挙がマスコミ偽装

のとおりの投票行動に終われば
さらに現社会が悪化するだけと危惧しています。



02. 2013年7月14日 21:26:34 : FVfQJ8R1lU
日本人は世界住民より一足早く、自滅へとひた進んでいます。
日本で起きたことは、やがて世界でも起きます。
日本人が自滅した途を、世界住民が反面教師として活かしてもらえるでしょうか。
デブリは地下にめり込んでおり、半永久に取り出す事は叶いません。
世界は核毒物で侵されて、日本は三分割で無くなっていくでしょう。
百年後の地球はどのような世界に変わっているのでしょう。

03. 2013年7月14日 21:33:51 : KQjCIJpAYQ
いちど起こったら、永久に「緊急事態」が続く状況って、
何なんですかね。無法、ですよ。

04. 2013年7月14日 21:40:25 : 6RxiEwTbRo
悪魔東電の一職員に過ぎない
吉田が死んだくらいで大騒ぎすんな!
もっと他にやる事があるだろう。