本澤二郎の「日本の風景」(1134)

職能別組合で人権を守れ>
 休日のテレビ番組にはニュース報道が少なく、見るべきものが無い。そんな中でひときわ群を抜いているのが、TBSの「報道特集」である。土曜日の夕刻だ。ここではジャーナリズムの存在を確認出来る。数少ない番組だ。特に日本テレビやフジテレビと比較すると、優れている。公正中立・不偏不党の精神が、ほぼ貫かれている。8月18日は、悲惨な状態に置かれている労働者にスポットをあてていた。


 人権派の弁護士の「日本は企業別組合。これが日本を駄目にしている。職能別・産業別の組合にすべきである」と訴えていたことを思い出した。番組では「3人に1人が非正規社員」と指摘していたが、こうした流れは確か小泉―竹中ラインが強行に推進した。
 小泉内閣負の遺産の一つだろう。それを強行に押し付けた竹中という学者がいたことを、労働者は忘れてはなるまい。小泉の先輩である東芝元社長を起用したことと、同時にワシントンが求めた新自由主義を竹中が強行したものである。慶応閥で推進した。そこにオリックスも介入した。
<無数の一人が決起せよ>
 かつて「連合の罪と罰」(データハウス)を執筆した筆者である。日本の労働組合をマクロ的に分析したつもりだが、それは右傾化した「連合」によって、比例して日本政治の右傾化に影響を与えた点を指摘した。これは中曽根の天皇国家主義の策略にはまってしまったことを意味したからだ。
 「連合」の果たすべき本来の姿にさせたい、とのりべラル派の思いもあったが、残念ながら成果を出すことはできなかった。むしろ、企業別労働組合の「連合」のもとで、小泉―竹中政策は強行された。結果、「連合」以外の無数の労働者の人権はズタズタにされてしまった。その一角をTBSは報道したものだ。
 しかし、こんな姿の日本の労働界・サラリーマン世界をどうするか。
 細かい法的な手法を知らないが、無数の労働者の一人一人が職能別の組合を立ち上げる。その点を線でつなげてゆくのである。IT産業で働く人たちの人権侵害は悪辣すぎる。労働組合もない。まずは1人で決起すればいい。
 職能別労組が大きく膨らんでゆくと、強欲経営陣に対抗することが出来るだろう。恐らく一部では動き出しているかもしれない。労働者・サラリーマンは自らを守るために、まずは点を確保、そこから線へと拡大するのである。全ての労働者が覚醒した時に日本社会は公正が確保されるのである。座して死を待つほど、人間は愚かであってはなるまい。
<御用化した企業別組合
 鉄道などの民営化の狙いは、赤字経営を改善するとされているが、当局の本当の狙いは全く違った。筆者を含め多くの国民は、たとえば国鉄の場合、サービスがよくなる、衛生的な便所になる、というレベルで民営化を評価したのだが、実際は政府に従順な鉄道組合へと懐柔するためだった。
 もっとも、そうした当局の野望に屈しない労働組合も存続している。それゆえに当局は、ねつ造証拠で関係者を逮捕・勾留するという政治弾圧を強行している。しかし、それにも屈しない、しかも平和運動に必死で取り組む組合の姿は、実に立派である。
 残念ながら、日本のほとんどの労働組合は、企業・経営者と癒着してしまっている。御用組合といっていい。彼らは差別されている非正規社員に目を向けようとしない。労働者の人権侵害に無頓着だ。いわんや平和運動を放棄してしまっている。「連合」の罪と罰は計り知れないものがある。
労働貴族化した連合>
 日本国憲法は、労働者の人権・地位向上のために労働基本権を付与している。団結権・団体交渉権・団体行動権を明文化している。会社側の人事権・賃金に対抗出来るようにしている。その柱はスト権である。
 いまの日本の労働組合は、このスト権行使をすっかりと忘れてしまっている。労使協調路線を採用しているからだ。自ら手足を縛ってしまった愚かな労働組合だ。
ストをしないと、組合に資金がたまる。これが労働組合指導者を堕落させ、遂には貴族化させる。
 特に「連合」の役員経験者の貴族化は目に余るものがある。酒池肉林を象徴するような無様な様子を見てとれる。経営陣と癒着する労働貴族ばかりという。
市民社会に貢献しない権力維持組合>
 従って彼ら労働貴族には、市民社会に貢献するという姿勢など皆無である。飲み食いが先行するため、それは富豪資本家・保守政治家に追随している。ここからは、社会貢献という発想は生まれない。保守化し、権力維持に傾斜する。革新のかけらも無く、社会の右傾化・保守化に埋没する、有害無益の存在でしかない。
 いうなれば、彼らを支えているのは非正規社員といってもいい。非正規社員一人一人が組合を立ち上げるしかない。職能別組合を結成すれば、日本変革も夢ではない。
 人権侵害のない日本へと大きく前進させることが可能なのだ。少しの勇気で可能となろう。
2012年8月19日10時10分記