本澤二郎の「日本の風景」(1136)

尖閣騒動の黒い野望>
 尖閣騒動の、そもそもの発端は極右都知事尖閣購入問題からである。島の所有権者が金に困り、ひと儲けしたいというところから始まった。これに山東昭子という、いわくつきの自民党参院議員が介在した。その前に同知事は、ウイグル族アメリカ亡命女性を日本に招待して、靖国参拝までさせて中国を刺激した。今年は日中友好40周年だ。記念すべき祝いの日中関係を、破壊しようとの野望が極右の策略と見てとれる。日中分断のワシントンの思惑と連動しているかもしれない。その先に尖閣上陸騒動、ついで自衛隊出動発言が首相と防衛副大臣から飛び出して、東アジアを緊張の渦に巻き込んでいる。黒い野望が見えてくるのだが。


<海保の陰に政府中枢の策略>
 冷静に分析すれば、極右勢力の野望に政府も手を貸していると認識すべきだろう。島の購入金額も、野田が乗り出して大きく吊り上っている。分け前が気にはなる不動産物件だ。
 国と東京都を巻き込んだ島の所有者は、まれにみる強欲な輩ともいえる。これに興奮した香港の右翼が連動する形となった。香港の彼らと日米の黒い野望との間に連携が取れているのかどうか。これは調べる必要があろう。
 そこで新たな問題は、島を警戒している海上保安庁の対応である。なぜ尖閣上陸を許したのか?ここが怪しい。比例して自民党民主党の民族・国家主義の面々が、近くで慰霊祭なるものを強行した。このうちの10人が上陸した、というよりも、上陸を許した?海保の狙い・思惑はどこにあったのか。海保に指令を出した政府中枢の狙いは?
 これは単純な方程式では解けない。
<5人はマスコミ>
 結論を言うと、日中対立を煽る狙いを明確に見て取れる。ここにも重大な鍵が隠されている。
 そして10人だか9人なのか不明だが、このうちの半数がマスコミ関係者というのである。政府の許可がない上陸は、軽犯罪法に違反する。公正な報道をするジャーナリストがなぜ極右の地方議員と一緒に上陸したのか。法律を犯した理由である。しかもマスコミ関係者の情報は消えたままだ。極右とマスコミ右翼が連携した慰霊祭と島上陸という分析も可能だろう。不可解である。
 香港からの船にもマスコミ人が乗っていたが、当然のことながら報道に徹して自ら上陸はしていない。日本の方が、かなり大がかりで悪質ではないか。公正中立の原則を破っているマスコミなのだ。ここは徹底して取り調べる必要があろう。議会での追及も必要である。うやむやな処理は許されない。
<日中分断の黒幕>
 日本と中国が仲良くすることは、東アジアの平和と安定の基礎である。筆者の信念でもある。二度と戦争を起こさせない、との覚悟なのだ。幸い、北京も同じ立場である。
 だが、ソ連が崩壊、代わって中国が台頭するや、ワシントンの、特に大統領府や国務省の外交担当者のラチ外にある産軍複合体という闇の権力は、中国を敵視することで、それを飯のタネにしている。莫大な軍事利権で生存する死の商人といってもいいだろう。
 日中分断の先に、沖縄の基地強化と自衛隊の米軍化が推進されてきている。すなわち、産軍複合体の指令を受けた日本政府、防衛省と外務省ということになる。
 こんな危険な罠を、追及できないジャーナリズムと議会に辟易するばかりである。「アメリカにNOといえる日本」で都知事になった石原ではなかったか。その同じ人物が、わざわざワシントンまで行って「尖閣を東京都が購入する」と公約して、騒動の火種を提供した。
 どうだろう、これくらいの方程式は解けるだろう。日中分断の黒い野望は、日本の極右・反共勢力だけではない。ワシントンもからんでいる。CIAも、である。というよりも、CIAのお膳立ての中で石原は動いている。ウイグルへの取り組みも絡んでいる。それを40周年にぶつけてきた。
 おりしも北京は政権交代の大事な時期でもある。
<友好が唯一最善>
 日本が72年に中国との戦争状態に終止符を打った田中―大平連合の政治決断は、当然のこととはいえ、戦後の外交史の快挙といっていい。毛沢東周恩来の中国は、空前とも言える賠償を放棄したことも、これはすごいことである。
 大平がODA支援を申し出たことも評価できよう。正に、これは日中友好の賜物である。ワシントンの中ソ分断策も幸いした。中国は市場経済を導入して、見事に経済を成長させた。訒小平の路線が幸いした。
 中国は経済的にも軍事的にも大国の地位を確立した。隣人の成功を喜んで受け入れる日本の寛容さが求められた。そうしてこそ中国の成果を、日本も享受できるからである。そして共に東アジアの繁栄と平和を手にすることが、何よりも重要なのだ。
 平和友好外交を日本国憲法は、日本政府と議会に命じている。だが、これにワシントンと野田内閣が反抗している。かつて吉田内閣は再軍備を強要してきたワシントンに対して、憲法9条を楯にしてこれを抑え込んだ。これも快挙だ。それゆえにCIAは造船疑獄というスキャンダルによって、吉田を退陣させたものである。A級戦犯容疑者をCIAが擁立させる原因となったものだ。
 歴史は繰り返す。アジア重視・日米対等論の鳩山−小沢連合を、スキャンダルと普天間で潰す見返りが、極右の松下政経塾の擁立だった。くっきりと今の日本政府の正体を分析することが可能だろう。
国家主義民族主義の野望>
 多くの国民にとって信じがたいことだろうが、戦前の帝国主義天皇国家主義に心酔する輩が、この日本にわずかだが、まだ存在している。
 筆者が、それこそ命がけで公開した本の中に「大勲位 中曽根康弘」(健友館)があるが、それである。ここではCIAの野望について触れていないが、悲しい現実として容認せざるを得ないのである。
 分析の基礎をなしたのは、宇都宮徳馬のリベラル・平和主義である。これに不勉強な共産党を含めた野党は、太刀打ちできていないのが、これまた悲しい。松下政経塾を立ち上げた幸之助のナショナル(国家主義民族主義)と不思議と重なるではないか。
 そのナショナルが中国にいち早く進出し、暴利をむさぼっていたというのも興味深い。あわててパナソニックに改名したものの、政治はそのままである。
 政治と経済は分離していない。かつてのソ連、最近までのアメリカ、その前の大英帝国しかりだ。一体なのだ。片方が崩壊すると、もう一方も崩れてしまう。栄枯盛衰は世の常である。
<自立する9条平和外交>
 今の日本がワシントンに服従しているかぎり、衰退する運命にある。舵を東アジアに切り替える。平和憲法を着実に行うことで、隣国の信頼を勝ち得ることが可能なのだ。
CIAの策略に便乗している日本の官僚政治、その尻馬に乗る野田内閣に明日はないだろう。大局を見よ、である。尖閣騒動にかまけている時間など、東京にはない。
自立する日本、自ら2本足で歩く日本の基礎は平和主義外交である。これが過去の大失敗の歴史的教訓なのである。軍事的平和などは思考停止もいいところで、愚の骨頂というべきだろう。9条は世界・人類の希望なのだ。
2012年8月23日7時55分記