本澤二郎の「日本の風景」(1141)

<朝日全議員原発アンケートで判明した衝撃度>
 世の中には世論調査というものが氾濫している。そう宣言して公表することで、あたかもそれが全体の声であるかのように、国民全てに押し付けることが出来るからだ。だが、多くはそこに落とし穴がある。ある意図を持っての調査が少なくないからだ。第一まともな調査には相当な資金を必要とする。同時に公正な調査員の確保と中立的公正な質問が前提となる。この二つの条件を満たせる調査会社は、ほぼゼロに近い。政府の世論調査の信ぴょう性はむろん低い。当然だろう。小沢叩きの新聞社による小沢調査も同じだ。問いかけ方・問いかける内容でも変化する。その点で、1昨日朝日新聞が公表した全国会議員に対する原発調査は、電話でなく書類方式による単純明快な質問のため、正確度は高い。ある程度予想されてはいたのだが、やはり衝撃的数字が目に止まった。


 質問内容は「原発ゼロか」「15%か」「それとも20から25%か」という目下、政府が主導して国民のごく一部に聞いている数値内容を、そっくり衆参国会議員に聞いたものらしい。
 官僚や財界人の多くは、現状維持派であることが最初からわかっている。保守化している政党・政治家もそうだろう。近く実施されるはずの総選挙では、国民の命に向き合おうとしない政党・政治家を叩き落とすための材料とも言える、今回の朝日調査を筆者なりの分析によって紹介することにしたい。
原発ゼロの生活・共産党社民党
 回答者は434人。全体の60%だ。40%は今も、右にするか左にするかで迷っている。党本部の指令待ちの自立性のない屑議員でもあろう。議員定数を40%カットすべきだろう。民主党の議員削減案は党利党略でお粗末すぎる。

 生活34、共産党15、社民党10が原発ゼロと回答した。ということは、この3党が民意を代表している。ただし、小沢党の一部にはまだおかしな人物がいる。有権者の目は、生活党の全てに鋭い監視を求めている。小沢を理解しない議員がいるのだ。
 小沢の指導力が試されていることでもあろう。この3党が「オリーブの木」の役目を果たすことになる。政界再編軸の有資格者だ。柔軟すぎる対応によって、原発党を撃破する責任が課せられている。その責任は重い。
<狂った民主党
 民主党は40%、83人が原発ゼロ派である。これは不可解な数字である。選挙目当てであろう。政治信念からではないことがわかる。
 もし、本当に原発ゼロであれば、野田の収束宣言や再稼働に対して、内部から突き崩すことができたろう。しかし、偽りの収束宣言にも、再稼働にも83人の決起は見られなかった。国民の代表ではない。議員失格である。
 それは狂った民主党を露呈している。日本国民にとって無用な存在だろう。こんな政党だから、極右の地方政党が国政を狙うことになる。極右なるがゆえに金も集まる日本、極右と結びつく財閥にも困ったものである。日本の恥部だ。
原発利権の自民党
 自民党はもう時代錯誤のどうしようもない政党へと堕落してしまった。筆者はこの政党とは、現役の政治記者として20年も付き合ってきたのだが、情けない気分である。表現のしようがない。

 保守本流宏池会は、国民の合意を政治に反映させる派閥であると、同会を創設した池田勇人の側近・黒金泰美が筆者に語ってくれた。目線は国民にあった。宮澤喜一自民党総裁に就任したその日の、筆者との単独インタビューで「宏池会はリベラル派」と解説した。
 保守本流の元祖・吉田茂は、9条を楯にしてワシントンの再軍備強要をはねつけた。大平正芳の後継者となった鈴木善幸は、宇都宮徳馬邸の観桜会によく姿を見せている。宇都宮こそリベラリストの代表だった。現自民党総裁谷垣禎一の父親は、大平側近で知られた。セガレはそれを学んでいない。
 小泉内閣以降、自民党にリベラル・平和軍縮派がいなくなっている。原発ゼロ派3人は、その証明ともいえる。大半が電力・原子力ムラに絡め取られてしまったのだ。政権を失って当然なのだろう。
 右翼化した自民党は、民意をくみ取ることが出来なくなってしまったのだ。
<悲しい公明党
 公明党原発ゼロ派も、自民党に右ならへしてか、たったの4人。これも悲しい数字だ。支持者の戸惑いを見てとれそうだ。
 公明党支持者の中には「公明党こそ原発反対政党」と意気込んで吹聴する者がいるようだが、この数字をみてどう思っているだろうか。自民党の補完政党になって以来、体質に変化が起きていることは承知していたが、これほどまで民意と離れてしまったことに驚きを禁じ得ない。
 悲しい政党へと落ち込んでしまったようだ。
<官邸包囲デモに原発差し止め判決の元裁判長も>
 ネット掲示板でいいニュースを知った。この日本に原発差し止め判決を書いた勇気ある裁判官がいたということ、そして今弁護士として首相官邸の野田打倒デモに参加していた、というのである。
 2006年3月、金沢地裁原発NOの判決を出した井戸謙一裁判長だ。彼は官邸前で「二つのことに驚いている」と切り出した。「一つは、これほどまでに国が国民を守らないということだ」といい、具体的に3・11直後にヨウ素剤さえも配布しなかった政府・東電。例のスピーディーのデータを隠したことを指摘した。
 村上誠一郎議員が「チェルノブイリ事件では、隣国のポーランドでさえもヨウ素剤を子供たちに配った。どうして日本政府はそうしなかったのか」と激しく国会質問をしていたことを思い出した。被曝した子供たちの数年後が哀れだ。悪辣な政府である。
 「二つ目は政府が平然と国民の意見を無視し続けていることだ」とも断罪した。元裁判長の指摘に反論できる国会議員がいるだろうか。彼は「誰のための政治をしているのか」と叫んで、狂った首相に噛みついた。

 これについては御用評論家でない、無冠の帝王として筆者が回答する責任があろう。「第一に松下財閥のため、総じて日本財閥のため、第二は日本政治の隠れた主役である官僚・霞が関のため、第三はワシントンのための野田政治」とコメントできる。屈米派政権のなれの果てである。

 外交は友好を基本とする。日米友好・日中友好である。日韓・日朝友好だ。独立国として対等が原則だ。屈米政権が世界のどこにあろうか。愛国者であれば、誰しもがそう考えている。日本人の多数はそう考えている。財閥・官僚政権は民意を代表できない。
2012年8月28日8時00分記