'自由貿易'と呼ばれているものは、一体何なのだろう?

マスコミに載らない海外記事   メタボ・カモ


2012年9月19日 11:00 AM

The Seattle Times

Jon Talton

提案されている環太平洋戦略的経済連携協定に関する懸念はもっともだ。全国ネットのテレビで、アル・ゴアが協定賛成を主張して、ロス・ペローを粉砕したNAFTA討論から、我々は遥か彼方まで来てしまった。当時は、大半のアメリカ人は、全員が障壁を下げ、市場を自由化するという同じルールで行動するものとして売り込まれた"自由貿易"における勝者だった。議論の中で最も忘れがたいのは、アメリカの雇用が"吸い込みの大爆音"と共に流出するというペローの予言だ。

特に中国が世界貿易機関WTOに加盟して、自らのルールで行動しはじめて以来、それが起きた。何百万もの雇用が失われた、産業が発達した中西部においてのみならず、ノース、サウスの両キャロライナ州の、壊滅した繊維、衣料と家具部門でも。その代わりになるのは、限られた数のウォルマートの案内係や、コール・センターや、サーバー・ファームの清掃作業員の仕事だけだ。ワシントンは別で、勝者だ。だが、事業に対し、税制上の優遇措置、節税策、軍への納入契約等によって補助を受けているボーイング社と、同社の航空機を外国に売ろうと強力に推進しているアメリカ政府がなければ、状況は違っていた可能性がある。

だから、過去18年間我々が目にしてきたのは、実際は"自由貿易"ではなく、管理貿易なのだ。しかもアメリカには膨大な貿易赤字があり、それが改められれば、高い失業を修復するのに大いに役立つだろうが、我々は敗者の側なのだ。我々の消費熱にも、確かに責められるべき部分はある。しかし、それを言うなら、中国等の国々の保護政策や、雇用を海外に移そうとするアメリカ企業の熱意とて同じことだ。アメリカが、その歴史の大半の期間、自国産業を関税で保護する為に、何もしなかったわけではない。

情報公開: 中国のWTO加盟については懸念をしてはいたものの、私は大半の経歴を、NAFTAを含めた自由貿易の擁護者としてやってきた。一つには、自由貿易で、二十世紀前半、世界を震撼させたような紛争を避けられるのではないかと考えて同意したのだ。中国が沖合の天然資源を巡って隣国と対峙する際に、これが本当かどうか、わかるだろう。ともあれ私は、このケインズの言葉の通りにしたい。"状況が変われば、私は考えを変える。諸君はどうされるのかな?" そして、アメリカの貿易戦略は破綻している。

環太平洋戦略的経済連携協定は、政権の主張とは違って、他の通商協定、東アジア地域包括的経済連携RCEPと競合している。後者には、東南アジアの10ヶ国に加え、中国、インド、韓国、ニュージーランドとオーストラリア(TPP参加国の内の6ヶ国を含め)が加わっている。アジア太平洋経済協力会議APEC)という"自由貿易"構想もある。我々全員WTOに加盟しているのに、一体なぜこうした特別な協定が必要なのだろう?

レーガン大統領の通商交渉担当者クライド・プレストウィッツが、彼の外交政策ブログに答えを書いている。

これは全く自由貿易の話ではない、あるいは少なくとも、ほとんど自由貿易とは関係ない... こうした条約は全て影響力の行使が狙いだ。そうした条約の一つとして、実際には、通商と投資の重要な要素に対処していない。これらの国々の多くは輸出主導型の成長戦略を推進しておりmanage自国通貨が割安に評価されるようにして 輸出を支援する方法として。多くの国は地場産業と技術開発政策も推進し、技術移転を市場アクセスの条件にしている。多くの国は、外国からの投資や技術移転を誘致する為に、大幅な優遇税制措置や、他の刺激策も提示している。あらゆる自由貿易協定にもかかわらず、事実は、これらの国々の多くの市場は、世界の中でも、最も管理されており、参入が困難なものだ。しかもこれらの国々の大半は恒久的な貿易黒字だ。ところが、こうした問題は決して交渉課題には載らない。

記事原文のurl:seattletimes.com/html/soundeconomywithjontalton/2019199177_what_is_this_thing_called_free.html

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NAFTAには賛成だったという著者、君子豹変の見本?

引用されているクライド・プレストウィッツ記事、是非英文をお読み頂きたい。文末は下記。「実際ほとんど別の手段による戦争だ。」

It really is pretty much war by other means.

とんでもない政治家連中の、とんでもない茶番ばかり報じられる。小選挙区制度がその大きな原因の一つだろうと思うのだが、とてつもなく高い供託金も大きな原因の一つだろう。

東京新聞2012年9月24日 朝刊【社会】
供託金600万円 出馬足かせ 脱原発団体「高いけど集めるしか」

一部引用させて頂こう。

 選挙に立候補する際に必要な供託金。制度そのものがない国もある中、日本は衆院選だと小選挙区三百万円、比例代表六百万円と世界一高い水準にある。一定の得票数に達しないと没収され、長年「立候補の権利を侵害している」との批判が根強いが今、あらためて疑問視する声が強くなっている。脱原発を求める市民団体は次の衆院選で候補者を立てようとしているが供託金の高さが普通の市民の出馬に大きな足かせとなるためだ。 (森本智之)

だから

 世界を見渡せば、供託金の制度がある国は少数派だ。国立国会図書館によると、米国やフランス、ドイツ、イタリアなど大半の欧州諸国に制度そのものがない。英国(約六万二千円)、カナダ(約八万円)、韓国(約百五万円)も日本ほど高くはない。

 財団法人世界平和研究所の大沢淳主任研究員によると、「候補者乱立の不利益よりも立候補の自由の方が大切」として供託金制度を廃止した国や、供託金の代わりに住民の署名を一定数集めることを課している国もある。大沢氏は「高額の供託金は人材の新陳代謝の妨げになっている。解決法を講じるべきだ」と指摘している。

2012年9月25日 (火) TPP・ACTA | 固定リンク