本澤二郎の「日本の風景」(1203)

<石原の狂気・日本核武装論>
 狂気の日本人が列島上空で舞い上がっている。維新の会代表に就任したばかりの石原慎太郎が11月20日、こともあろうに日本特派員協会で、持論の日本核武装論を爆発させた。初めて本人から直接、それを聞いた外国人特派員を驚愕させた。いち早く広島・長崎・福島の被爆・被曝地から、激しい怒りの声が上がっている。平和憲法を破棄したいと口にする彼の本心は、日本核武装にあったのだ。これが日本極右・維新の正体なのだ。カンボジアでは隣国の指導者らが「日本軍国主義清算していない日本」と警鐘を鳴らした翌日のことである。こんな危険な人物を、都知事に担いできた都議会と都民であった。


<恐怖の「日本維新の会」>
 当初は大阪の役人退治に集中、人々を納得させていた橋下だ。維新の会を立ち上げ、石原に飛びついた途端に自らの正体をさらけだした。それが明治維新ならぬ平成維新であろう。現在の人間天皇を、再び戦前の「神様天皇」に押し上げての日本核武装が、彼らの最終目的・狙いなのであろう?3・11からまだ2年も経っていない。列島の反原発市民運動による官邸包囲の金曜デモは、止まる気配はなく、今も続いている。45年以来、日本人の核アレルギーは根強い。3・11東電福島原発爆発事件は、再び日本人の反核アレルギーに点火させている。
 財閥の傀儡政権でも、原発再稼働に踏み切ったものの、公約には2030年代の原発ゼロを約束している。嘘に違いないだろうが、わずかでも議席を維持しようとしての浅はかな野田謀略であろう。国民を2度も騙せると考えているのだろうか。
 反原発の多数国民の思いを石原と橋下は、ぶち破ろうと言うのであろうか。覚醒した大阪と東京の市民は、今度は騙されないと信じたい。
 橋下は「企業献金禁止」公約を早くも止めた。金の出入りが激しくなってきたのであろう。博打企業からの金が欲しくなったものか。要するにいい加減なのだ。こんな人物を、連日宣伝する新聞テレビの日本が悲しい。
<安倍は円の紙切れ化宣言>
 狂気は自民党にも襲いかかっている。3代目の首相失格者がリードする自民党である。なんと景気対策のために、円札を刷りまくることだと言うのだ。日本経済と社会を、さらに混迷化させようと言うのだ。
 円を紙くずにする安倍の日銀封じである。「米国勤務時代に麻薬を覚えた」と昔の安倍を知る旧福田派関係者は「また始めたのか」と危惧している。「円を印刷すれば景気がよくなる」という安倍の馬鹿主張には、さすがに財務省日本銀行も反対の声を挙げた。専門家は「45年時のハイパーインフレにしようとしているらしい。それで1000兆円の借金を棒引きしようといのだろうが、こんな馬鹿げた手口が使えるわけが無い」と反発している。
 しかし、これも日本核武装と同時に心配だ。「自公プラス民」の3党連立が具体化すると、あるいは「自民公プラス維新」の連立政権になると、改憲核武装へと大きく踏み出す危険性も出てくる。
 ここは日本人全てが、この選挙を本当に真剣に受け止めて1票を投じないと、極右・天皇国家主義の日本へと進行しかねない。大変なことになる。善良な日本国民が、官邸に押し掛けているが、全ての有権者がこのレベルで投票する必要があろう。これに失敗したら?
鳩山由紀夫を排除した野田・民主党
 民主党を立ち上げた責任者との思いが、これまで鳩山由紀夫の心を支えていたようだ。祖父の一郎の民主党と結びつけた思いなのか。ここが小沢一郎との違いだった。
 だが、野田は松下政経塾の排除のための踏み絵を用意した。「10%に賛成しろ」「TPPも」が、それである。これに誓約しないと公認しないという野田方針、すなわち政経塾の排除論理に、鳩山は政界引退を決めた。
 潔いようだが、見方を変えると、衰退松下PANASONICに、ブリジストンが屈したことになる。
<小沢・亀井・山田は反撃の烽火>
 ご存知、野田の嘘にいち早く決起したのが、小沢である。亀井静香も連立から離脱した。二人とも自らの信念を貫いた。これに反TPPの山田元農水相も加わった。
 3者の共通項は反10%、反原発、反TPPである。日本国民の総意はこの3点に集約される。多くの市民がこのことに気付いて投票すれば、日本は変わる、変えられるのだが。
 日刊ゲンダイ東京新聞が、こうした国民の総意を代弁して報道している。敬意を表したい。特に前者の鋭い政治分析は突出していてすばらしい。
原発維持の経団連と連合の蜜月>
 昨日のテレビは、石原の記者会見だけではなかった。経団連と連合のトップ会談の様子も、テレビが大きく報じた。こちらも二人のボケじいさんが「経済成長を」と合唱した。富豪の代表は「2030年代に原発停止をすることは止めろ」と叫んでいた。
 東芝・日立・三菱の原発御三家の意向を貫いている財閥経団連だ。これにNOといえない労働貴族である。現に、連合の第63回中央委員会では、一部から出た「原発に依存しない社会を目指せ」という正論を封じ込めてしまったという。財閥も労働貴族も狂っている。
 民主党の支持基盤がこの体たらくだ。野田・民主党原発政策がいい加減なことも納得出来る。極右・狂気が乱舞する日本列島である。
オバマ会談は10分足らず>
 「TPPの決意は変わりません」とカンボジアオバマに忠誠ぶりを示した野田である。その日米首脳会談時間は25分。通訳時間を除くと、せいぜい発言時間は10分にも満たない。消える野田との会談に、ワシントンは肘鉄を食らわせたのだ。そのため報道陣向けの野田会見は、相当作り話が入っていると理解すべきだろう。お粗末だ。所詮、女房孝行のための政府専用機を使っての、最後の最悪のカンボジア旅行である。
 野田の地元には三宅雪子という元気のいい候補が、野田退治に立ち上がった。「10%を廃案に」「原発は10年後に廃止」「TPPは反対」と叫んで、船橋の街頭に立った。初めて彼女の姿をテレビで見た。野田退治を成功させる責任が、地元有権者の側にある。
ちなみにオバマ目標は立派だ。「富裕層にはクリントン時代の税率に戻す」「利益を挙げている石油企業への補助金を停止させ、クリーンエネルギー分野の雇用と技術開発を支援する」「戦争の10年間を終わらせ道路、橋、学校を再建する」と米CNNにコメントしている。
中韓首脳が軍国主義批判>
 「日本は軍国主義清算をしていない」「日本の右傾化は深刻な問題」と昨日、韓国のKBSが報道した。これはカンボジアでの中韓首脳会談での、中国首相の温家宝と韓国大統領の李明博のやりとりの一部である。
 尖閣竹島の領有権問題の背後に、過去を清算出来ていない日本の現状についての両者の共通認識を披歴したものだろう。石原や橋下、野田と安倍らの跋扈する日本への警戒心がみなぎっていることがわかる。
 日本の右翼化が中韓蜜月を演出している。このことは南北朝鮮の和解にもつながってゆく。この視点からだとプラスかもしれないが。
 もはや東アジアだけではない。世界も中国を抜きに何事も論じられない時代だ。その中国をアメリカは警戒している。そのアメリカの手先になって、愚かにも中国に対抗する国は日本だけだ。韓国は米軍基地を抱えながらも、日本の真似はしない。むろん、台湾はそうした馬鹿げたゲームから卒業した。ASEANも中国との関係構築に必死である。
 孤立する日本だ。処理不能原発という恐ろしい課題を、目の前に背負った日本である。それでいて、そこから目をそらせようとする民主・自民の原発維持勢力が存在する日本だ。そこに核武装論の石原維新が加わる日本に明日はないだろう。      2012年11月21日10時15分記