本澤二郎の「日本の風景」(1211)

<読売新聞の狂気>
 11月29日付の読売新聞社説には驚いた。まともな内容ではないのは分かりきっているが、なんとリベラルの3極「未来の党」をこき下ろしている。極右の3極は、大いに宣伝しているようだが、原発のない社会を約束した脱原発・卒原発の「未来の党」を、くそみそに叩いている。異様な社説だ。ナベツネ自ら手を加えたのかもしれない。従来からの原子力ムラの言い分を代弁して、リベラル党批判を繰り広げる。自由だが、ジャーナリズムの論調にほど遠い。原発が国力の源泉という価値観には、あきれてモノも言えない。新聞の品位などまるでない。


 原発があれば、いつでも核兵器を作れる、と言いたいのだろうか。恐ろしい新聞だ。中曽根康弘石原慎太郎核武装論に共鳴しているのかもしれない。もともと日本国憲法を否定するような、いかがわしい新聞だから、こちらも大分慣れてきてはいる。いえることは真実・客観報道を旨としている新聞ではない。不偏不党という国民への約束を放棄してしまっている。
 読売を読む価値のない新聞と考えているジャーナリストの目からは、恐らく野田内閣の原発再稼働も国力維持のため支持していると思われる。脱原発の目標と決意がなければ、自然エネルギー開発が爆発的に進行することはない。これが広島・長崎・福島の教訓である。
 そうして何としても命を守ることを最優先にする、これが正確な世論なのである。脱原発原発のない社会が、日本人・人類の夢だ。それを実現する日本にすることが、政治の役割だ。そう国民に呼びかけるジャーナリズムが、当たり前の言論・社論なのだ。読売は狂った言論だ。
<3・11を学ばない原発推進新聞>
 3・11の教訓は、人間として守るべきで、誰も異論を差し挟む余地など無い。現に危険な原発はほとんどが停止している。安心安全が確保されていないのだ。たとえ施設そのものが、あやふやな当面のルールをクリヤーしても、大地震や大津波に対応出来るとは限らない。それを3・11は裏付けた。
 原子力ムラが作り上げた安全神話は、他人を欺く宣伝だった。国力がどうこうのと叫ぶ前に、日本人は生きなければならない。
 危険と共存する社会を変革する、それが政治の使命であろう。言論界の立場ではないか。
 ワシントンにリベラルなクリントン政権が発足した当初の93年に訪米取材した目的の一つは、公然と改憲軍拡論を社論に掲げた読売新聞の背後に「ワシントンの影」が存在するのかどうか、を確認するためだった。
 そのために国務省国防総省シンクタンク・証券会社・軍需産業を歩いた。議会の研究者は、読売の改憲論を説明すると、座っていた椅子をのけぞらせたものだ。それほど衝撃的な印象を与えた。それもそうだろう、日本一の発行部数を誇る新聞が、改憲軍拡ラッパを吹き鳴らしているのだから。
 国防総省軍縮担当将校は「日本はまたアメリカと戦争をするつもりなのか」と詰問してきた。クリントンを誕生させた当時のアメリカ政府の対応は、実に健全で安心させられた。
 この取材旅行では、元ワシントン支局のナベツネが関係した共和党ネオコンは、密かに地底に隠れていて筆者の取材に引っかかることはなかったと思われる。
原子力ムラの広報紙>
 それにしても、多くの日本人は野球の読売にほだされて、この野望を秘めた新聞と言う事実を知らずに購読している。教養人を相手にしていない。大衆を洗脳教育しようとしている。
 戦後、旧内務官僚がトップに座ると、庶民が興味を示す社会ネタを中心にした。野球報道で部数を伸ばした。内務官僚は地方自治体に強い。自治体に読売を押し付けてゆく。こうして戦前の小さな新聞は、瞬く間に朝日や毎日に肩を並べた。
正力松太郎こそが、その主役である。旧内務官僚である。彼が議会に登場すると、内務官僚後輩の中曽根らを率いて原発推進の旗振り役を始めた。正力の配下がナベツネだった。
読売が原子力ムラを立ち上げた元凶といってもいい。その思惑は、いつでも核兵器を作れるということを内外に誇示することだった。こうした危険な思想ではなかろうか。過去を反省していない。
ナベツネ新聞が原子力ムラの広報紙ということは、巨額の原発ビジネス利権にも関与しているとの疑惑も持たれかねない。未来の党は、目下の国民が共有する原発・消費税・TPPに対して、もっとも厳しい政策をわかりやすく掲げているリベラル党である。
一挙に国民の支持が集まる可能性を秘めている。そこを連中は警戒している。だからこそ、結党したばかりの新党を真っ向から切り捨てて、有権者の目を曇らせようというのだ。
<強力ミノファーゲンC>
 ナベツネもよく使った薬に、ミノファーゲン製薬の強力ミノファーゲンCがある。ナベツネの保証人になって、読売に入社させ、仲人もした宇都宮徳馬が設立した製薬会社である。
 副作用がほとんどない、それでいて免疫力を高めてくれる、という実にすごい薬である。衆議院議長をした河野洋平なども使っているはずだ。宇都宮事務所に出入りしていた政界・言論界のほとんどが、主人の説明に感心して秘書に注射してもらっていた。
 宇都宮は風邪をひきそうになると、いつもの量を倍にした。目の前でそれを見てきた筆者だ。この強ミノが健康薬だ。肝臓の特効薬・アレルギーの特効薬として、どこの病院に行っても注射してくれる。

 実を言うと、なぜ読売の暴走社説を知ったのか、というと、風邪予防を兼ねて、近くの病院で強ミノを打ってもらった。待ち時間に待合室においてあった読売を開いたところ、とんでもない社論が目に飛び込んできた。
 ということは、宇都宮が「今日の読売新聞を読んで、感想を書け」と言っているように感じた。そう思ってペンを走らせている。「健全なジャーナリズムが存在しないと、民主主義は正常に機能しない」という彼の口癖を想起させる。

 先日、若者のホームレスが増えている、という衝撃的な映像をみた。政治経済の崩壊現象を物語っている。恥ずかしいばかりの衰退日本は、放射能にも襲われている。「内部被曝が深刻。それは沖縄にいても」と専門家は指摘している。列島で生きる全ての生き物が、危険にさらされている。
 そこから抜け出せるかもしれない政党というと、財閥と官閥とCIAとの関係が薄く、かつ無党派の支持を集めそうな政党は、未来の党だけである。社民党共産党ではない。そのことを、原発新聞が公然と証明してくれたことは、決してマイナスばかりではない。
 読売離れは、いまや知識人だけではないのだから。
2012年11月30日9時40分記