本澤二郎の「日本の風景」(1227)

<長州党になった安倍・自民党
 旧福田派の元ベテラン秘書だけが知る、安倍・極右自民党の正体を分析、伝授してくれた。さすがに視点がすばらしい。「今の自民党は長州党と呼ぶ方が正しい。自由民主の政党ではない」というのである。いわれてみると、今回の総選挙に向けた安倍執行部の面々は、確かに長州かその周辺の議員によって編成されていた。長州閥というと、明治の陸軍がそうだったが、今の安倍体制もそっくりなのである。波乱の原因だ。


 「副総裁の高村、選挙対策委員長の河村が安倍と同じ山口県、幹事長の石破がすぐ隣の取鳥県、総務会長の細田島根県ではないか。3役と選対が文字通り長州閥といっていい。自民党とはいえない。中国地方以外に党の要人が一人もいない。これでは国民政党どころの話ではない。だからこそ、安倍の改憲軍拡公約が大手を振った理由である」
 頷ける解説である。執行部を身内で固めたのだ。「平和憲法を潰して戦争国家への改造をしたい」と大声を張り上げた安倍に党内からクレームがつかなかった理由が、これで説明がつくだろう。白状すると、筆者もここまでは読めなかった。
<派閥が復活か>
 さて300近い議席を手にした安倍執行部が、これを掌握出来るであろうか。無理である。「3人寄れば派閥が出来る」とは、生前の大平正芳の至言である。
 派閥を束ねるための手口は、金とポストである。官邸の金庫を握る安倍と党本部の金庫を掌握する石破が、最大派閥を形成する有利な地位にある。二人の攻防は、選挙戦中から始まっている。しかし、2人で300人を束ねることは不可能だから、これ以外に数人の大ボス、中ボス、小ボスが生まれるだろう。
 人事と金の不公平な配分が、党内に亀裂を生むことになる。新派閥形成の行方が注目されよう。それぞれのスポンサーも、側面から人事に介入してくるだろう。
<税金泥棒>
 良心的な元自民党本部職員は、世襲議員に対して厳しい評価をする。議席も金・ポストも彼らが優先して占拠してしまうからだ。自民党の悪弊の最たるものである。
 ここからは進歩的な政策が表面化することはない。それでも愚民ばかりの有権者は、世襲候補を支援している。お粗末なことは、これに貧者の団体と言われた宗教組織が、支援をしているという事実など過去に想像できなかった。
 案の定、自公連立の政策協定は原発であいまい、改憲軍拡路線に公明は大幅に譲歩してしまった。安倍暴走を手助けする公明ということになる。
 「世襲議員は税金泥棒」という元自民党本部職員は、怒りながら3家を俎上に乗せた。意外に国民は気付いていない。
 「石原家3人、福田家2人、安倍家2人はひどすぎないか。石原はオヤジと2人のセガレがバッジをつけている。こんな大それた税金泥棒はいない。マスコミは一つとして批判しない。福田家は群馬と東京の越智家の2人、安倍家は岸家に養子に行った者と2人だ。こんな悪辣な税金泥棒を放置していいのか。民主国家といえるのか」と厳しく追及している。
 ひも付きのない愛国者の指摘に同感したい。愚民のなせる仕業だろう。日本は変わらない。変わるとすれば悪く変わるだろう。
<安倍・日銀・株屋>
 安倍の最初の手口は、株屋の傀儡よろしく円札を刷りまくるというのだ。悪の権化とされる日本銀行輪転機を回転させて、株屋にばらまくというのだ。既にその効果が出ている。
 「風が吹くと桶屋がもうかる」というが、実態経済と無縁な札を刷りまくると、これは野田が言っていたように株屋がもうかる仕掛けになる。株屋は値が上がったり下がったりすることで、途方もない儲けを出せる世界だ。安倍のスポンサーが見えるだろう。
 ギャンブルだ。ジャーナリストが手を出してはならない世界でもある。
 不要な円を刷りまくると、円の価値は低下する。日本国債も下がる。日銀が安倍に屈すると、それこそA級戦犯として、民衆の怒りを買うことになろう。
<国民審査に重大疑念>
 最高裁の内幕に詳しい元国土庁長官秘書官は、今回の総選挙と同時に実施された10人の最高裁の栽判官の国民審査のやり方にも、怒りを爆発させている。
 何者か分からないようにさせておいて、罷免裁判官には×、それ以外は無印で、というやり方に「重大な問題がある」と決めつける。先の小沢裁判で果たした最高裁の手口は、民主政治に重大な懸念を与えている。
 法曹界の多くは×をつけたろうが、一般人はその判断能力を欠いているため、仕方なく無印にする。それでもって「信認した」とされる。これは悪辣な方法で、民主的ではない。最高裁憲法の番人だ。法治国家としての最後の砦だ。
 元秘書官は「約500万人の主権者がNOと罷免要求したことに対して、それでも信認されたで済ましていいのか」と怒りを爆発させた。小沢裁判に限らない。司法の腐敗を、かつて自民党幹事長を歴任した加藤紘一も指摘していた。国民審査もまた、政治不信を増大させる原因でもある。強く指摘しておきたい。
2012年12月20日8時45分記