本澤二郎の「日本の風景」(1295)

<安倍はナショナリスト国粋主義者
 自民党の歴史を知る者にとって、安倍晋三は極右政治家として定評がある。小泉純一郎が特別に引き立てない限り、彼は石原慎太郎レベルにも達することは出来なかった。9条改悪に突っ走る・過去を正当化する危険な政治家であるのだから。ゆえに筆者は、極右政治家・極右内閣と断じたのだが、ワシントンも同じような分析をしていた。日本の新聞テレビは、安倍をオプラートに包んで宣伝してきたのだが、もはや嘘は通用しない。彼はナショナリスト国粋主義者なのである。ドイツにネオナチ政権が誕生したようなものである。


<ワシントンは知っていた>
 韓国の朴大統領は「過去を反省しない者には未来はない」という趣旨の演説を、米連邦議会で行って喝采を浴びた。元ドイツ大統領のワイツゼッカーが指摘した内容でもある。
 これは世界常識である。知らないのは日本人のみ、なのだ。日本は国際社会の異端児なのである。読売のナベツネに引きずられる新聞テレビというのも、情けない。一人東京新聞日刊ゲンダイが正論を吐いているようだ。
 ナベツネのお陰で、朝日や毎日が失墜、東京とゲンダイが人気を博している新聞テレビ事情である。朝日の再生を期待する者としては、編集幹部を社会部に入れ替えよ、と進言したい。政治部と経済部がおかしな記事の元凶である。

 筆者の分析とワシントンのそれは一致していた。ワシントン分析は、CIAやペンタゴン(産軍複合体)・右翼シンクタンクのそれとは違っていたのだ。予想した通り、ホワイトハウスは「日本馬の調教師」の面々と同じではなかったのだ。
 韓国大統領と安倍首相の、ワシントンでの歓迎ぶりの落差の原因が、これで判明したことになる。「民主主義という共通の価値観で結ばれている」と吹聴する安倍や麻生は、見事に正体を暴かれたことになろう。
<米連邦議会事務局の報告書>
 米連邦議会の調査局は、議会の要請に従って、その都度、報告書をまとめる。公正・客観的なレポートとして、ワシントンで最も権威あるものである。有能な研究者で構成されている。こうした機関を有するワシントンに敬意を表したい。日本にもあるが、それは天と地の差がある。
 政党・政権に左右されることはない。CIA工作に批判的な機関のような印象さえ受ける。というのも、筆者は1度、ここに出向いてアジア・太平洋担当の専門家を取材したことがある。
 読売の改憲案の元凶を探ろうとして、彼らがどこまで関与しているのか、そのことを知っているのか、を確かめようとした。なんと彼らは、読売が改憲案を作成したという事実に驚愕した。椅子からのけぞって驚いたものだ。東京はリベラルの宮澤政権だったのだから。宮澤は護憲派で知られた。日本軍国主義復活・天皇国家主義の復活に反対していた。当時の筆者は、ナベツネの背後を財閥が固めていた、という事実に気付かなかった。

 岸信介中曽根康弘の戦前回帰思想を継承する安倍、それゆえに批判を強めている筆者なのだが、それを真正面から評論できない新聞テレビをも、同様の立場で批判している。
 余談になるが、同じくナショナリストの中曽根は、それゆえに政権発足前後にワシントンにものすごく気を使った。彼はレーガンに対して「日本不沈空母でソ連と対峙する」とぶちまくって、愚かな俳優大統領を籠絡した。
 彼の日本訪問時、自慢の「日の出山荘」の囲炉裏端で宴を開いて、核軍拡大統領を煙に巻いた。何度かこの山荘に行ったものだが、中曽根が座るように勧めてくれた座布団を、自ら「これは池田大作さんからいただいたものだ」と紹介した。
<安倍の衝撃>
 ナショナリスト国粋主義者が、戦後の21世紀の国際社会において通用などしない。争いを巻き起こす元凶であるからだ。現にその危険性を露わにしている。

特別公務員である議会人は、憲法を擁護する義務を負っている。その重責を担っている首相・内閣が、それに違反してぶち壊すというのだ。隣人の深い傷口に塩を擦り込んでいる靖国参拝・神社信仰を、国教化しようとしている、とも見られている。
 改憲強行の先駆けとして4月28日を「主権回復の日」として強行実施している。
 こうした具体的な事実を前にして、ワシントンの有能な研究者も、真正面から評価したものだ。しかし、安倍にとって連邦議会調査局レポートは、相当な衝撃であったろう。問題は、こうした彼の発言と行動を追及しない日本の議会に問題がある。
 野党による総攻撃が求められている。新聞テレビもまともに報道する義務があるだろう。
ホワイトハウスと米議会の信頼なし>
 はっきりしたことは、ワシントンで安倍は信頼されていないということだ。東アジアを混乱に陥れる危険な人物・ナショナリストとの評価が確定したのである。むろん、オバマも発言を避けているが、この認識を共有している。

 2月訪米を強行した安倍は、ホワイトハウスにとって招かざる客だったのだ。そうして見ると、ホワイトハウスと産軍複合体・CIAの安倍認識は大きく異なっている、ということでもあろう。
 2期目のオバマの強みでもあろう。イラクとアフガンを混迷にさせたCIAと産軍複合体、それゆえにオバマの政治的立場は強固になっている、と分析可能だろう。それは、言うところのジャパン・ハンドラーズの地盤沈下を裏付けている。
<ひどすぎるNHKの偏向報道
 それにしてもNHKの偏向報道は、このところひどすぎる。ワシントン特派員は、決まってコメンテイターに対日調教師を起用して、あたかもそれがワシントンを代表しているかのような報道をして、世論操作している。

 5月9日の昼のニュースでは、朴大統領の日本批判をTBSはまともに伝えたという。ついでテレビ朝日も少しだけ。ところがNHKは全く報道しなかった。異様なNHKを印象付けていたのだ。
 同日夜9時の番組の偏向ぶりも、よくネットで批判されているが、この日ももっぱら政府弁護に徹していた。朴議会演説という快挙を、悔し紛れに「ロビー活動の成果だ」と断じた。「アメリカ社会で拡大する韓国社会」に焦点を当てるものだった。
 韓国大統領演説はその前にオバマにも伝えられ、それは米紙にも大きく報じられている。安倍の暴走からして当たり前なのだが、それをNHKは意図的に問題をすり替えるのに懸命なのだ。

 国民の税金を使う公共放送の偏向報道は、実に怖い。年配者は戦前の大本営発表を連想することになる。
 安倍の官房機密費による新聞テレビ社長接待で、こうも狂う日本の新聞テレビに対して、民衆はどう立ち向かうべきだろうか。官邸と新聞テレビは既に、戦前回帰しているのだから。
2013年5月10日8時20分記