本澤二郎の「日本の風景」(1316)

<「石原慎太郎国賊」と自民の政策通>
 「20キロ痩せれば総理大臣」と評されている自民党村上誠一郎の「励ます会」が、6月11日小雨がぱらつく東京・芝の東京プリンスホテルで盛大に開催された。村上の後輩・野田聖子同党総務会長が激励に駆けつけた。「政治家は本当にいい加減」と決めつける彼女は、先輩を「正論を剛速球で投げる自民党の第一人者」と紹介した。筆者は、この日北京訪問から疲れて戻ったばかりだったが、中国・中央テレビの張剣記者も参加すると言うので、午後6時からの会に駆けつけた。


 安倍内閣の騙しの政治にストレスがたまる点で、永田町27年の村上も同様なのであろう。1時間近い時局講演で「維新の会」の石原と橋下を真っ向から斬り捨てて会場を沸かせた。「日中関係をぶち壊し、東京の銀行を破綻させた。正に国賊ではないか」と斬り捨てた。「こんな人物を都民はなぜ都知事にもしたのか」と激しく噛みついた。筆者の思いを代弁してくれた格好である。
<「維新の橋下も狂っている」と>
 石原の配下・橋下にも矛先を向けた。「デリケートな問題になぜ軽々しく発言するのか。狂っている。本当に情けない」といって、橋下の従軍慰安婦必要論をぶった切った。二人のお陰で、外交はめちゃくちゃにされてしまったのだから。彼は怒り狂ったように批判してとうぜんだった。本来、野党の党首が激しく非難すべきところだが、今の野党はどうかしている。国民の期待に応えられる野党が存在していない。それが安倍政権を存続させている。
 ともあれ、村上発言によって久しぶりに溜飲を下げることが出来た。「励ます会」に駆け付けたかいがあった。
<連携派の安倍もマスコミも批判しない>
 石原と橋下の暴言の下地を作ったのは、いうまでもなく安倍晋三である。安倍は過去を正当化する「維新の会」との連立構想を抱いていた。参院選で大量得票すれば、改憲のための3分の2を勝ち取れる。そのために公明党を斬り捨てても、維新との連立を考えていた、と周辺は見ている。
 安倍と維新で、日本外交は破綻寸前に追い込まれている。米中に袋叩きにされている昨今である。国家主義の怖さなのだが、それを「マスコミも批判しない。おかしい」と村上の怒りは、マスコミにも向ける。これも正論である。自民党内で正論を吐ける唯一の政治家である。
 腐りきっている政党・政治家とマスコミ、その背後を財閥がコントロールしている日本である。
アベノミクスに重大懸念>
 輪転機を回して円札を刷りまくることで、円の価値を下げているアベノミクスにも、政界随一の財政通は重大な懸念を示した。国家主義者のやることに、まともな政策などありえない。懸念は当然であろう。「経常収支が赤字になると、それこそ大変なことになる」と早くも警鐘を鳴らした。安倍の成長戦略にも評価出来る中身はない、とも断じた。
<1945年を超えた財政悪化>
 彼は財務省に作らせたグラフを提示しながら、既に円がゼロになった1945年(敗戦時)よりも、財政赤字は悪化している事実を、無知で無関心なこの場の聴衆に向かって声を張り上げた。「落選覚悟で真実を伝えるべきだ」と叫ぶ村上は、宮澤賢治の「雨ニモマケズ」の詩を紹介しながら涙声を上げた。
 官僚も政治家も「いい加減すぎる」ことへの無念さをにじませた。先に、この場所で開かれた町村派のパーティーに来たことがある。安倍政権を支える派閥の集会に、公明党代表までが熱い声援を送っていたことに、正直なところ違和感を覚えた。むろん、この村上の正論の集会に同党の参加者はいない。「自民党にリベラルがいなくなってしまった」と嘆く村上である。
 極右政権下、日本政治はますます劣化してゆく。
<ベントの遅れが致命傷>
 正論派の村上は、大変な勉強家で知られる。自民党きっての政策通である。
 その持ち味が福島原発問題でも発揮された。彼は「福島原発の真実」(東信堂)として出版した。自民党から公明、共産党まで、とことん国会追及できなかった深刻な問題である。未だに真実を隠している。「このままでは永遠に収束しない」と断じる村上は、東電など政府・原子力ムラの「いい加減さ」に怒りをぶちまけながら、次々と真相を明かしてゆく。小気味の良いほど切れ味がいい。ことほど当局がいい加減すぎるからだ。
 「菅が現地入りしたことで、ベントが遅れた。その遅れが、海から陸へと吹く風に乗って大惨事となってしまった」と当時の菅首相にも怒りをぶちまける。メルトダウンを2カ月も隠した民主党政権の罪も重い。
 菅の現地入りを容認した原子力ムラの判断に問題があった。ことほど日本の原発技術レベルは低い。それでいて、その危険な原発を、安倍は先頭に立って売りまくろうとしている。狂気であろう。
2013年6月11日記
(注、時々本ブログの訪問者数が出ない。どうしてか?息子は多分、許容量の関係ではないだろうか、というのだが。アクセスが殺到しているというのだ)