映画感想文;「アドルフの画集」

黄泉の国から   「岩下俊三(旧姓)のブログ」からリユーアル


いかにしてナチスが生まれたかについては多くの学説がありますが、各国自国の利益を基に作文した「歴史学」なるものを全く信用しない僕は独自に考えています。そしてその独自な考えこそ今の日本を覆い尽くしている時代の気分との相似形を危険視することに結びついているのです。(歴史について語るときは「です」「ます」調にならざるをえません)

アドルフヒットラー第一次大戦の不毛な戦いで消耗し、家族や恋人もなく貧困な若者でありましたがそれはそうした時代でもありドイツ人の若者に共通していた孤独であったと考えています。その孤独と屈辱的な敗戦に加えてベルサイユ条約という明らかにドイツの譲歩と妥協を押し付けられた情況は若者に将来の希望や人生設計を無化する作用がありました。

そこで芸術的才能がありながら社会に認められず、格差社会の底辺を彷徨うプライドだけ高い痩せた背の低いみすぼらしい青年アドルフはまだ何でもなかったけれど、同じように不満を抱えた希望のないドイツ人の若者の前でヘイトスピーチをしたのです。酒もたばこもやらないストイックな若者は自分の憎しみに酔ったのでしょう。そしてそこで
大衆の狂気に火が付いたのです。

孤独な若いひ弱な集団が強固な結束によって力を持つには、架空の敵にたいする憎しみを増大させるしかありません。何の特権も既得権もない最下層の人間の「特権」は幻想による「血」の共通性しかなかったのです。その架空の敵がユダヤであり、幻想の血の特権がゲルマン民族であったことは想像に難くないのです。

その歪な共同体意識でしか孤独が癒せなかったマイナスのエネルギーがダークサイトに向かわせたのは自然な成り行きでした。その血の団結を煽るには難しい言葉はいらないのです。ひたすらヘイトスピーチを繰り返せばよかったのでしょう。そして自分たちにある不遇は裕福な高利貸し(銀行)や宝石商(価値のないものを高く売る)そして学者芸術家(詐欺、魔法使い)によってもたらされたものであり、その卑劣な商売を牛耳っているユダヤこそドイツ人を貶めている内なる敵であるといいつづけることで、自分自身の価値を探すしかないぐらい若者は疲弊していたのです。

どんなに矛盾していてもいいし論理などいらないただ繰り返し口汚く己の不幸を「裕福な」ユダヤ人のせいにすれば
大衆は熱狂していったのでしょう。「俺の不幸はあいつのせい」俺が僕らの、、、になり、あいつがユダヤじんなったときアドルフヒットラーは英雄になり人々は熱狂したのです。

非理論的な言論を冷笑してはいけません。ヘイトスピーチを聞き流してはなりません。そこにこそ独裁政権の種子があるのです。そこに暴力が加わると事態はよりエスカレートしていきます。過激な口げんかに一発のびんた、これこそ無教養な人間の精神を揺るがすものはありません。けっして物のわかった高僧のお説教が、慈悲深い牧師がすさんだ魂を救済するとは限らないのです。

憎しみによる高揚感これこそが同志の結束を固め人々を熱狂させてしまうのです。挫折こそ負のエネルギーの源なのです。


念のために申し上げますがこれはなにも石原慎太郎橋下徹安倍晋三、石場茂、高市早苗にたいして言っているわけではありません。欧州でのしかも昔の話ですから誤解しないようにお願いします。