本澤二郎の「日本の風景」(1558)

<「戦争する日本」へ王手をかけた安倍内閣
 核・原発から武器弾薬輸出攻勢をかける安倍内閣は、いよいよ本丸・集団的自衛権の行使に向けた最後の地ならしに突入した。既に、北岡という極右の御用学者らを動員、いかさまの理論武装に事実上、決着をつけてしまった。残るは連立相手の公明党創価学会を攻略するだけである。3月6日に安倍は開始のゴングを鳴らした。


<笹川資金で力つけた石破はOK>
 安倍は集団的自衛権行使に突入する意志を、まず幹事長の石破に伝えた。石破について、彼の鋭い目つきから動物の名前も仲間からもらっている。狙ったら相手を逃がさない。
 公明党攻略においても成功しているようだ。官僚の息子だった彼は、旧田中派時代において、政治資金を笹川(今の日本財団)にねだった、と仲間が指摘していた。確認していないが、恐らくそうかもしれない。
 笹川の諜報工作は、中国に向けられてきており、専門家の中には「カネで人民解放軍や医師団を懐柔してきた」と指摘する向きもある。
 石破は、安倍との会談のあと、自派の会合で「こと集団的自衛権の行使について、自分と安倍の考えは一致している」とうそぶいた。彼は笹川資金だけではない。財閥の武器弾薬メーカーとも一体化している。
 財閥の意向を受けている点で安倍と同類なのだ。
統一教会顧問弁護士の高村もOK>
 安倍は、続いて副総裁の高村を官邸に呼んで協力を要請した。憲法を学んだ弁護士だと言うのに、大変な反共右翼で知られる。それでいて日中友好議員連盟の会長にもなった御仁だ。
 かつて選挙区のライバル・佐藤栄作の息子・信二は、知り合いの政治家に対して「奴は統一教会の顧問弁護士だ」と吹聴していた。筆者は親しかった政治家に聞いている。
 同協会と岸・安倍家は深い仲だ。同協会を通して、安倍と高村は連携している、とも見られている。政界は不気味な世界なのだ。むろん、中国や北朝鮮を嫌う人物だから、集団的自衛権の行使を当然のことだと理解している高村だ。それゆえの副総裁起用だったのであろう。
 彼のような右翼が、平和勢力の三木派次いで河本派に所属していたことが不思議なことだった。ちなみに安倍政治に真っ向、批判している村上誠一郎は河本が将来を期待した政治家だった。このことからも極右に乗っ取られてしまった自民党を象徴している。
<大臣と取引した太田もOK>
 そして、何としても驚きは公明党の変質である。従来の主張を全てドブに捨てて、ワシントンが国家主義国粋主義と断罪する政権を、同党と同党を支援している創価学会という宗教団体が、それこそ必死で支えていることである。
 国家神道を引きずる神道過激派である安倍を支援して、日本を戦争国家へと導いている。ここはどうしても理解できない。北京もソウルも頭を抱えている有り様だ。
 筆者のもとには「公明党の太田は石破との密約で大臣を射止めた」との情報が入っている。また、本人は「安倍路線に違和感などない」と議会答弁して、安倍にもひれ伏していることを内外に誇示している。信濃町の取材の中には、事情通の「池田名誉会長が排除した人物」との指摘もあったほどである。
 「第2の矢野」と指弾する理由だ。
<山口もほぼOK>
 公明党代表の山口も、安倍にほぼ懐柔されたようである。北京から相手にされないとわかると、安倍の推薦でインドを訪問、そこで原発の売り込みに汗をかいている。原発輸出は核の輸出でもある。
 彼は公明党の右翼化に向けて慎重な舵取りをしている。3月5日の自民党の金集めの集会で「自民党公明党に隙間があるが、風は吹いていない」と語っている。
 安倍政治と池田政治は水と油だ。好戦派と反戦派である。大きな隙間がある。そこは認めながら、山口は「隙間風は吹いていない」と豪語した。その心は「うまくやっていますよ。離婚はしません」という宣言である。
 太田同様に安倍にひれ伏してしまっている。
<池田斬りの行方?>
 SOSの信濃町である。既に信濃町も狂いだしている。最も抵抗すべきだった平成の治安維持法である特定秘密保護法に対して、公明党は率先して強行の戦列に加わっている。この政治的汚点が消えることはない。これに屈した信濃町創価学会だ。
 安倍の靖国参拝に対しても、傍観視していてソウルと北京を驚かせた。どう考えても、まともな平和的宗教団体とは言えなくなっている。宗教学者は「国家神道に仏教・法華経がひれ伏したも同然」と解釈している。
 そして、その先の安倍政治の本丸、戦争する日本改造ともいえる集団的自衛権行使の決断を、いま信濃町の中枢に求めている。これにどう対応するのであろうか。仮に太田や山口の意向に乗ってしまうと、同党のこれまで国民や信者に約束してきた政治的行為全てを放棄することになるのである。
 いうなれば「池田名誉会長を葬り去る」という重大な決断をすることになる。安倍・石破・太田・山口の「池田斬り」の行方が、集団的自衛権行使の最大の山場なのだ。これは単なる1宗教団体の問題では済まない。教団による平和主義の先駆的活動は、中国や韓国に限らない。世界的な広がりで強力に推進してきた池田平和路線を、国際社会は評価してきている。
 憲法違反である集団的自衛権行使を、内閣の一存で政策変更することについて、米紙NYタイムズも反対している。北京もソウルも大反対だ。
<与党でないと困る理由を公開せよ>
 改めて、極右政権に加担する公明党創価学会の真相を知りたい。与党・権力維持が果たす政治的宗教的意味合いについてだ。
 野党になると不都合なことは何か、ということである。この組織はカネに困らない。自民党の料亭政治に屈する必要はない。国会議員も学会幹部も十分に肥えている。餓死したという話を聞いたことが無い。
<危機の安倍・国家主義政権>
 あえて権力にしがみつく理由などない。今は、日本も日本国民も存亡の危機に立たされている。その局面で、どうして歴史の教訓を踏みにじるのか。平和憲法に盾突こうとするのか。何としても説明責任を果たしてもらわねばならない。
 その点で、安倍・国家主義もまた目下、最大の難関に立たされていることなのである。「池田斬り」は、日本のみならずアジア・国際社会に衝撃を与えることにもつながるという事実にも着目したい。
2014年3月7日5時15分記