本澤二郎の「日本の風景」(1085)

<ドイツのテレビが福島の闇暴く>
 動画サイト「YOU TUBE」で見た読者もいると思う。ドイツのテレビ局ZDFが1年後の福島を取材している。日本のマスコミ報道と天地の開きがある。知り合いのジャーナリストに数年ぶりメールを送ると、返信が返ってきた。「今もドイツのテレビで仕事をしている、最近の報道番組を見てください」とアドレスも添付してきた。開くと、それがZDFの見事な取材だった。改めて、NHKなど日本のテレビ局がまともな取材による真実究明を怠っていることが判明する。



 3月20日に放映された内容は「フクシマの嘘」と題して、当時の菅直人首相や東電原発に抵抗した佐藤栄佐久福島県知事ら、それに原発点検作業をしていたGE技術者の証言などを紹介している。それらは全てが、ほとんどの日本人の知らない驚愕すべき真実なのだ。
 こうした立派な取材をしない、させない日本マスコミの弱体ぶりに改めて、マスコミの世界に身を置いてきた者にとって衝撃を受けるばかりである。ZDFに敬意を表したい。
<変身総理を退陣させた原子力ムラ>
 3・11以後、急にメディアに登場した言葉というと、この原子力ムラである。原子力に関係する派閥、原発利権に群がる一群の人々と解していたのだが、福島原発作業員によると「政府、東電、大学の学者ら」という。
 菅直人はインタビューで「大学や役所で原発を推進する立場だと、金や出世が約束される。反対すると干されてしまう。こうしたことは国全体に及んでいる」と決めつけた。頷くほかない。
 原子力ムラが権力と金を握っているというのである。反対すると、生活が困窮するという仕組みが確立している、というのだ。なんとも恐ろしい日本であろうか。
 菅総理は3・11事件の不手際で退陣したと思っていたのだが、本人によると、この原子力ムラの圧力で引きずり降ろされてしまったという。当人がそういうのだから、事実なのだ。

 原子力ムラは脱原発に変身した菅を危険人物と判定して、マスコミなどを動員して辞めさせたのである。日本の闇の一部は、こうして当事者の証言によって明らかにされた。ドイツテレビ局の成果である。
 菅直人政策秘書は、より具体的に震源地は「原発官僚のいる役所」と決めつけている。同じ認識である。彼は自らの責任で辞めたのではなかった。原子力ムラの意向に反したため、引きずり降ろされたのだ。日本政治の真相を物語る秘話である。うさんくさい官僚政治の一面でもあろう。

 思い出したことがある。93年の米国取材訪問で知ったのだが、当時のワシントンの主人公になったばかりのクリントンは、貿易摩擦問題で悩んでいた。官邸や自民党への圧力に、全く効果が出ないことに苛立ちを感じていた。どうしてか。原因がようやく判明した。日本政治の実権を握っているのは、官僚・霞が関だということを。官僚攻撃をしてクリントン政権は、米ビッグ3を再生させることに成功した。菅直人脱原発派に変身したことで、彼らに押しつぶされたのだ。本人の貴重な証言をドイツのテレビに明かしたのだ。
 小沢の標的は霞が関だ。そんな小沢批判する今の菅も頭がおかしくなっているのだろうか。
 ドイツZDFは原子力ムラを「犯罪的ネットワーク」と断罪した。
福島原発は欠陥原子炉とGE技術者が証言>
 ドイツZDFの記者は、その後米サンフランシスコに飛ぶ。そこで福島のGE原発の点検補修工事を10年余に渡って働いてきた原発技術者を直撃した。
 菅直人の証言も衝撃的だが、GEの元エンジニアの証言も同様だった。「福島原発の問題は何度もあった」「89年には大きな亀裂を見つけた。重大な欠陥である。ところが、報告書には嘘のことを書かされた。ねつ造文書だ。仕事を続けたいために屈してしまった」「10年間、沈黙した後に日本の官庁に告発したが、そこでももみ消されてしまった」
 当事者の生々しい証言に、またしてもがっくりしてしまった。恐ろしい東電であろうか。原子力ムラは悪魔の巣窟なのだ。
 データの改ざんは検察官だけではなかった。原子力ムラの常套手段なのである。国民の安心・安全をぶち壊す悪魔の所業に辟易させられよう。
原発反対で逮捕された佐藤知事>
 福島県前知事の佐藤栄佐久は、東電原発に抵抗して実弟の事件捏造捜査で逮捕された。これは東電OL殺人事件の真相を解明する上でも参考になろう。現在の知事は原発派知事として原発推進に走ってきて、そのツケを3・11で支払わされている。彼は会津のもうろく爺さんと関係があるのか。爺さんの息子は米CIAとの関係を指摘されている。類は類を呼ぶ。
 現佐藤知事の心境はどういうものか?原発反対派の前知事に対するZDFのインタビューは、これも東電の権力を悪用した手口を見事に暴いている。記録映像には、殊勝な勝俣も前知事の前に姿を見せている。
 ZDFは東電に抵抗した栄佐久知事に対して「2004年から復讐が開始された」と解説、知事も「不正な土地取引事件をでっちあげられた」と証言するのである。最近まで、こうした経緯を知らなかった筆者である。
 思うに、この事件は小沢問題とも共通する。陸山会の土地取引事件化である。検察とマスコミがグルになって、霞が関とCIAに敵対した小沢を半殺しにしようとする。そのためには、なんでもねつ造して犯罪に仕立て上げる。筆者は判官びいきになるしかないのだが、ここ数年で小沢事件は、権力の乱用と横暴を十分過ぎるほど内外に提供してくれている。

 国家犯罪である。小沢事件に菅直人も多かれ少なかれ介在している。野田佳彦はどっぷりとつかっているようだ。悪しき人物が権力を手にすると、政治も経済も社会も混乱に陥れてしまう。

 筆者の知る池田勇人は、毎朝東に向かって「今日も無事に日本が安泰であるように」と両手を合わせて祈念して1日の始まりとした、と秘書の木村貢から聞いたものだ。
 善良な首相だったのだろう。野田と違う。
<57人に乾杯>
 昨日の大増税法案に与党民主党から鳩山や小沢ら57人が反対票を投じた。あっぱれである。さぞや疲れたろう。しばしの休息が必要だ。参院での審議でも公約違反の10%大増税法案に抵抗してゆく。多数無党派は民自公の増税派を許さない。近い将来の総選挙を待ち構えている。
 ひるむな、さらに勇気を、と訴えない。
<メディア覚醒に市民の決起を>
 大義なしの大増税強行策は、ブッシュのイラク攻撃にも似ている。民意は、現在の壮大な無駄排除・富裕層向けの不公正な税制改革を求めている。一大行財政改革だ。今がその絶好期なのだ。そうすればヒトラー誕生を阻止、日本再生を実現することが出来る。
 日刊ゲンダイに次いで、東京新聞もしっかりと民意に波長を合わせている。読売・朝日・毎日の不買運動、NHKの受信料不払い運動が、市民レベルで推進されてきているとも聞く。
 メディアを財閥・官閥・CIAから切り離す努力をすることが、市民に課せられている。
2012年6月27日10時45分記