本澤二郎の「日本の風景」(1131)

<食い逃げタヌキに外交難題>
 東京の8・15は、周辺国から飛んできた鋭い変化球ボールで、慌てふためく日本政府を印象付ける1日となった。香港の活動家が尖閣海域に侵入、一部が上陸した。日本政府は14人全員を逮捕、中国政府は直ちに「釈放せよ」と抗議してきた。新たな外交問題だ。14人の中に香港のジャーナリストもいるという。また、韓国大統領は天皇訪韓条件に加えて、従軍慰安婦問題で明確なメッセージを発した。歴史認識は隣国との友好の礎だ。これをいい加減に放置してきた責任は、どうみても日本政府にある。無能・無策の日本外交が露呈したものだ。


 昨日は都民の多くが東京を離脱したものの、急ぎUターンする日のため、陸も空も大混雑だった。その点、盆休み返上の老人組は、灰色の屋根の下で過ごすしかなかった。
 以前なら両親のいる実家に行く親孝行の8・15だったが、それも無くなってしまい、盆も正月もない生活である。昨夜は川崎と対岸の木更津で花火大会があった。ベランダから見えたのだが、花火は近くでないと、実感がわかない。だが、永田町と平河町は遠くても見える。
 御存じ、永田町のタヌキは、なんとか平河町のキツネを騙して、まんまと大増税法を成立させ、9月の民主党代表選での信任を得、さらにその先へと秘策を練っていた矢先の外交問題の表面化だ。夏休み返上で食い逃げを謀っていたのだが、韓国と中国からの横槍は鋭い。
 思えば日本の近隣外交は、ロシアで躓いてしまった。それが韓国と中国にも伝染した。寛容さを欠いた1本槍に、反撃の烽火が上がったかに見える。外交音痴の野田の右翼路線に処理は無理である。盆明けにキツネの攻勢が出てくるだろう。これをかわせるか。
<公債特例法案で捕捉すれば9月解散>
 国民生活をさらにひもじくさせる10%消費税と、そしてバラマキ官僚予算を成立させたものの、予算執行の金が無い。財布は空だ。公債発行という禁じ手法案を成立させなければ、国も地方も動きが止まる。
 何しろ日本の役人の給与はべら棒に高い。世界一かもしれない。司法立法行政に携わる役人の報酬は、人事院という民意にそむく官僚の手柄なのだ。3権の長の報酬は、ボーナス一つとってもすごい。年収200万円で生活している庶民からすると、目が飛び出るほどである。それが沈没している日本で行われている。 が、彼らの給与も借金の裏付けがないと支給されない。
 公債特例法案の処理の場面で、野田はもう一度、谷垣を騙す必要があるのだが、二度も騙されると、自民党総裁の芽も潰れてしまう。タヌキとキツネの化かし合い第2ラウンドが盆明けから始まる。
 キツネいかんで9月解散である。
民主党に延命装置はない>
 なぜ、民主党は逃げるのか。それは解散をすると、壊滅的な敗北が待ち構えている。首相官邸を包囲する、主婦・サラリーマンの野田打倒の怒りとうねりはただ事ではない。ようやく日本人が目を覚ましたのだ。
 インターネットで動く初めての総選挙でもあるからだ。歴史的勝利を収めた民主党は、そのほとんどの公約を反故にした。あまつさえ官僚の言い分に乗って、やるべきことをしないまま大増税を、自公を巻き込んで強行、民主政治のルールを破壊した。
 これがネットでがんがん流布されている。解散時期いかんでも、与党民主党が現状を維持できることなど100%ありえない。ネット社会では反民自公勢力が大勢を占めている。
 民主党につける延命装置などない。むろん、民主党と組んでいる国民新党議席ゼロになろう。財布の中身を判断して、若者も主婦も投票場に向かうことになるからだ。たとえ解散時期を10月に引き伸ばしても政権維持は不可能であろう。
<野田の落選勝手連に注目>
 野田の選挙区に落選させる市民運動が立ち上がった。野田を叩き潰す勝手連と呼んでいる。こんな事例を過去に知らない。野田の悪政に市民がしびれを切らして決起したのであろう。
 官邸包囲網の反原発・反10%の市民が、勝手連の運動体と思われる。この輪の中に反民自公の支持者も加わると、予想外の勢力となろう。千葉県の船橋習志野が、総選挙の目玉になろうか。週刊誌やスポーツ新聞が活躍するだろう。
 反原発のリーダー格が出馬すれば、寝ていても野田を退治出来ると思われる。注目したい。
無党派のネット若者が山を動かす>
 総選挙では「アラブの春」を連想させるような動きが、ひょっとして表面化するかもしれない。ネット社会の主役たちだ。新聞テレビの操作をやり過ごしている面々だ。
 政治的無関心層が覚醒した総選挙である。その予兆が官邸包囲デモだ。若者が声を上げ始めたことである。大学生から失業している若者らが、かなりの役割を果たすかもしれない。
 新聞テレビが軽視してきた無党派層である。有権者の6割から7割に達すると、筆者は分析している。「東京の春」は確実に起きるだろう。権限を行使するだけで、責任を取らない官僚政治を止める役割を果たすかもしれない。
2012年8月16日7時10分記