本澤二郎の「日本の風景」(1144)

<米共和党大会に異変>
 フロリダでの米共和党大統領指名大会が、強い暴風雨に見舞われて1日延期を余儀なくされた。そのため、米マスコミのトップニュースは党大会報道よりも、異常気候に奪われたほどだ。気候変動も、いうなればワシントンの経済政策と関係している。富豪のロムニー候補への地球の嫌がらせとも受け取れよう。マスコミはしかし、ロムニー夫人の演説、ついでライアン副大統領候補の演説から、俄然、ボルテージを上げてロムニー勝利を印象付ける報道をしている。マスコミ対策は、資金が豊富なだけにあきれるばかりだ。だが、意外な事態も起きていた。



ロン・ポール支持者が大会ボイコット>
 ロン・ポール下院議員支持者が、大会運営を巡って反発、大会をボイコットしたのだ。予想外の出来事だったらしい。昨日、一部の新聞が東京に伝えてきた。むろん、NHKは無視したようだ。
 共和党大統領候補を最後までロムニーと争ったロン・ポールを、日本のマスコミは全く報道しなかった。差別報道の背景を、このあと説明するが、彼はワシントンでリバタリアン自由至上主義者と呼ばれているが、筆者の目にはリベラリスト、それも戦闘的リベラリストである。
 日本の政治家でいうと、宇都宮徳馬ではないだろうか。リベラリストは好戦派を嫌う。いうなれば反戦・平和・軍縮である。これが安全保障・外交政策の基本原則だ。従って寛容・友好を重視する。
 これは日本国憲法の立場なのである。過去の教訓から導き出されたものである。「大正デモクラシーにその根ッ子がある」と宇都宮は生前、筆者に語っていた。よく思索すれば、日本人の多くが理解出来るだろう。「日本人の平和主義はいい加減なものではない」という彼の主張は、全くその通りなのである。
<危ない強いアメリカ論>
 戦争は悪しき人間、悪しきリーダーによって引き起こされる。悪しきリーダーの黒幕は、軍閥軍需産業に取り込まれたリーダーなのだ。金が絡んでいる。それに懐柔された学者の論文やジャーナリストのペンによって、世論操作が行われて、戦端が開かれる。
 今回の党大会では既にその芽が噴出している。「強いアメリカ」論だ。衰退過程に突入したワシントン右翼の最後のあがきなのだが、ここは国際社会が油断していると、本当に人類が深刻な打撃を受けることになる。
 イスラエルは既に、イラン攻撃に向けた準備に躍起となっている。イラク・アフガンで叩きのめされた中で、オバマ政権にそんな余裕はない。必死でイスラエルを抑え込んでいるが、其の分、イスラエルの立場を支援するワシントン随一の政治工作機関のユダヤロビーは、共和党ロムニーにテコ入れしている。資金面で共和党オバマ民主党を圧倒している。さしずめ、ロムニーは戦争屋のレーガン・ブッシュの再来といっていい。
 ロムニー政権の誕生は、中東戦争を予見させるものだろう。産軍複合体政権そのもの、との見方も当たっていよう。露骨に軍事攻勢をかけるため、国際社会は常に最悪の事態を覚悟しなければならないだろう。日本の右翼政権と官閥・財閥は、むろん、この流れを歓迎している。要注意だ。それこそ石油危機どころではなくなる。自衛隊はいいように悪用されよう。
<CIA廃止のロン・ポール
 ワシントンの戦争屋の対外工作は、すべてをCIAが担当している。今日では素人でも理解している。このCIAに真っ向から立ち向かった小沢一郎は、やはり評価に値する。亀井静香は公然と「CIAに殺されても屈しない」と口走っている。対米自立派の代表格のもう一人は鳩山由紀夫である。
 対米自立派の有力な支援者が、ロン・ポールとその支持者ということになる。彼らはCIA廃止論者なのだ。海外の米軍基地の撤廃をも、公約している。CIAと海外米軍基地をなくせば、アメリカは戦争しない。出来なくなる。アメリカの若者が戦場で殺されることない。いわんや他国民を殺害することも無い。
 ロン・ポールは平和主義者なのだ。
日本の沖縄県民が、どうして彼らと連携しようとしないのか、これは不思議でならない。どうして日本のマスコミは彼のことを1行も書かないのか。
 CIAに恐れおののいている沖縄でいいのか。ならば亀井のような人物を知事にしてはどうか。CIAに抑え込まれている新聞テレビを、なんとか解放できる智恵を日本人は編み出さねばならない。
<若者や退役軍人に人気のポール>
 戦争で利益を上げるのは軍需産業軍閥である。被害者は戦場に駆り出される若者だ。その家庭である。平和を重視するアメリカの若者が、ポール支持者だ。ベトナムイラク・アフガンに駆り出された元米兵・退役軍人が、熱心なポール支持者である。
戦争が経済を破綻させる元凶だ。そう考える共和党保守派の「ティーパーティー」にも、ポール支持者はいる。考えて見るがいい。アメリカ社会は多様化社会の典型的な国である。イスラエルにだって平和主義者はいる。ワシントンの産軍体制を嫌う平和主義者の国際的連帯が、いま求められている。
 幸い、アメリカ市民の好感度・女性人気は富豪候補ではなくオバマである。戦争を拒絶する人類は、ジャーナリストはロムニー宣伝をしてはならない。
2012年8月31日記