本澤二郎の「日本の風景」(1149)

<白アリ住宅に住めない>
 我が埴生の宿は、築30年を軽く超えている。床の一部がぶかぶかだ。手抜き工事かな、と思ったりしていたのだが、見当違いだった。白アリに食われているらしい。野田の「白アリ退治をしないと、増税は出来ないし、やらない」という公約破りのお陰である。白アリを退治しないと、埴生の宿に安心して住みつくことは出来ないのだ。あと5年もすれば、田舎に逆戻りするかもしれない。その時は白アリを退治した上で、という条件を処理した後になる。



<工事は大変?>
 白アリ退治は、聞いてみると、なかなか素人には厄介だ。その道の専門家でないと、やっつけることは出来ない。白アリに食いつかれている土台は、全て取り換えなければならない。白アリ全てを駆除しなければ、またやられてしまうらしい。一度は徹底して退治する必要がある。
 従って、住宅事情に詳しい者であれば、あらかじめ土台などをチェックする。おかしいと思ったら、すぐさま縁の下にもぐって駆除するのである。これを怠ると、それこそ大地震でなくても家が破壊してしまうだろう。
 人間は白アリと共存できない。こうした知識のない筆者も、野田の10%消費大増税によって覚醒させられた一人なのだ。要するの、10%消費税でも、日本丸の屋台骨は耐えられない。10%を白アリが食べてしまうからなのだ。
<白アリ放置で野田再選?>
 白アリを放置する野田ら松下政経塾は、日本国民をなんと思っているのであろうか。少なくとも主権者・主人という思いは、ひとかけらも無いのだろう。野田自身、公僕という観念が無いのだ。国民の生活など全く考えていない。
 そのはずである。彼の主人は国民ではなくて、国民が嫌う白アリなのである。10%は白アリのための餌なのだ。おわかりだろうか。10%は日本再生のためではない。白アリは野田が指弾していた官閥・霞が関の官僚のことである。原子力ムラもこの一角に潜んでいる。
<代表選は田舎の猿芝居>
 自らドジョウなどと称して、年収200万円以下の栄養不足の民の胃袋の足しになると見せかけて、その実、本当の姿はどうも船橋のタヌキである。断じてドジョウではない。ドジョウはタヌキが化けた姿なのだ。
 泉下で松下幸之助も感心しているに違いない。幸之助にしても「経営の神様」などと吹聴して生涯を送ったと見られているが、それらはマスコミを使っての虚像に過ぎない。
 隣国のリーダーを騙すことなどは、彼にとって簡単なことだった。遂には、脱税資金70億円で化け物を養成して政界に送り込み、見事、天下を取った。あまつさえ、今や白アリの餌(10%消費税)を用意したのだから、これは幸之助もびっくりだろう。
 しかも、不可能と思われていた原発再稼働さえも断行した。CIAも仰天している。タヌキは人間の命のことなど無関心らしい。まだ菅直人の方が、少しだけ人間に近い。彼は、脱原発に必死で取り組むと叫んでいるのだから。だが、待ってもらいたい。なぜそれを官邸の主の場面で断行しなかったのか。もし実行していれば、ドイツのメルケル首相と肩を並べることが出来たろうに。遅すぎる。菅も市民派の化けの皮が剥がれてしまった。

 タヌキは民主党代表選挙に出馬するという。まだ化かしの技術を残しているらしい。というよりも、狂喜する白アリが、野田を全面的に支援すると約束してくれているからだ。
 白アリ三昧の日本丸に乗客である国民は激怒している。タヌキの権力争いに興味など無い。そこで、タヌキは田舎の猿芝居よろしく、少しでも国民の気を引こうと言うのだ。目下、対抗馬擁立に向けた芝居も始まっている。
自民党総裁選は右翼ばかり>
 猿芝居に興味を持つ国民はいない。太鼓持ちは我が「ジャーナリスト」の面々である。新聞テレビである。「ナベツネ傘下のマスゴミ」などと人は呼んでいるらしい。
 猿芝居を演じることで、民主党人気を上げようと言うのだ。総選挙で壊滅的打撃を回避すれば、自民党の補完勢力になれるという魂胆なのであろう。民自公連立政権の夢を思い描いているのか?連中はとことん国民を見くびっているのだ。日本にだって魯迅はいるはずだ。

 その自民党総裁選はというと、これが百鬼夜行もいいところである。キツネが次々と手を上げて収拾がつかない。群雄割拠・下剋上である。
 もはや自民党に人材はいない。小物ばかりだ。名前を覚えられないもの、鋭い目つきのものもいるが、いずれも思想面では岸信介中曽根康弘のような極右ばかりだ。
 筆者の現役時代の自民党は、ずっとましだった。右翼に対抗するリベラル派、平和主義派など粒がそろっていた。取材していても、取材のし甲斐があった。今の政治記者は、どんな思いでパソコンを打ちこんでいるのであろうか。
<白アリ経済で円高利益なし>
 キツネとタヌキの化かし合いをしていると、白アリは、ますます元気が出てくるらしい。肝心の善政をやろうとはしない。せっかくの超円高も還元させない。これは実に困ったものである。
 この円高でエネルギー資源は、安く手に入るのだが、これを庶民に還元させようとしない。東電は9月から8%以上の料金値上げを勝ち取って、内心ほくそ笑んでいる。原子力ムラの白アリも笑いが止まらない。石油・ガソリン業界は、本来、リッター70円か80円のはずだが、140円以上とバカ高い。こちらも白アリ天下を印象付けているだろう。
 アメリカなどでは高速道路は無料である。だから人も物もよく動く。日本は白アリが、ぱっくりと口を開けて庶民の懐に手を突っ込んでくる。経済活動を抑制している。天下の大道を利用するのにも、白アリが待ち構えている日本だ。この変形した経済を官僚社会主義と喝破したのは、宇都宮徳馬である。60年以上前のことだ。
 そういえば、車に課税される税金は世界一高い。電気料金だけではない。鉄道・航空運賃など人と物の移動にべら棒に金がかかる日本だ。まともな経済活動を抑制している白アリ経済(官僚統制経済)なのである。
 車と道路を米国並みにするだけで、日本経済は相当活性化するというのに、依然として白アリに食い荒らされたままだ。
 白アリに民自公どころか、永田町全体が食い荒らされているからなのだ。
<白アリを忘れさせる自然?>
 官僚組織は、もとはといえば国民に奉仕するためのものだが、立法府も司法も、肝心の土台・根幹を彼らに牛耳られてしまっている。そして、とうとう屋台骨も腐り果てようとしている。
 白アリ退治に政治が成功していないからだ。彼らは戦前の天皇から、戦後のCIAに転身して、そこに身を委ねて反省するところが無い。国民の覚醒が不十分なのも原因だが、正義のメディアが堕落してしまっていることに起因している。

 唯一、心なごませてくれるのが自然である。とりわけ故郷の自然は、たとえそこが東電原発放射能に汚染されていたとしても。悲しいことだが、それを視覚で確認できないからだ。房総半島では、もうごく一部を除いて黄金の水田は姿を消してしまった。東京が熱帯夜でも、田舎ではひんやりとした冷気と虫たちの合奏とでねぐらを優しく迎えてくれる。孤独の好きな人間であれば、埴生の宿は最高のくつろぎの場所なのだが。

 ブルーベリー農家の主が、一夜、彼の自宅に招いてくれた。これも救いなのだが、ビールで乾杯すると、たちまち政治の体たらくが話題の主人公になって、酔った心を揺さぶる。白アリを退治する政治の確立を叫ぶことになる。これも自然の中では健康的だ。

 隣家のSさんが、今回も茄子をくれた。大きい茄子は出荷しないという。ならば大ぶりの茄子をもいで東京土産にした。自宅のナツメも育っていた。去年から少しだけ食べるようにした。田舎にいると、興味のないタヌキとキツネの化かしの芝居に付き合わされなくていい。
2012年9月7日22時55分記