本澤二郎の「日本の風景」(1200)

<石原・橋下の極右野合>
 石原を尊敬する橋下である。金と票を提供するスポンサーも共通だ。予想通り12月16日の解散日に、旗揚げしたばかりの石原新党「太陽の党」を解消して、橋下の「日本維新の会」に合流を決めた。極右の野合である。典型的ともいえる日本初の極右連合の誕生となる。恐らく、こうした事態を想定した「週刊朝日」の連載記事だったのだろう。あっさりと謝罪した朝日新聞は、阪神支局襲撃事件以来、極右に弱い体質を、今回もさらけ出してしまったようだ。ともあれ双方は共に、極右の宗教団体が金と票を提供しているわけだから、筋書き通りのマスコミ向けの演技に過ぎない。小沢新党「生活」の動きを報道しない新聞テレビも連日、二人の独裁的扇動者を大々的に宣伝している。無知な国民を欺こうと支援している。それにしても、専門家は「生長の家」は政治から足を洗ったと認識していたのだが、実はそうではなかった。石原と橋下を走らせて、総選挙後の大化け(圧勝)を狙っているようなのだ。



<自公民プラス極右の大連立狙い>
 予想される筋書きは、大嘘つき民主党の大敗は決まっている。極右化した自民党も勝てる材料はない。もっぱら公明党創価学会の、いわば神頼みである。
 現時点での両党を足しても過半数に届かない。その不足分を極右の野合政党がカバーする、と黒幕は胸算用をしているのだろう。ということは、ワシントンのネオコンが期待する原発政策と10%消費大増税、そしてTPPを推進する政権が誕生する確率がかなり出てくる。
 自公民プラス極右新党の大連立政権が待ち構えているとの大胆予測が成り立つ。むろん、日本の内外政は破綻してゆくことになろう。
生長の家創価学会の対決?>
 宗教は元来、平和主義のはずだが、天皇家の宗教である「神社神道」と「生長の家」は別格で、好んで極右路線・改憲軍拡路線を貫いてきている。石原や平沼の平和憲法批判も、これと歩調を合わせて異常でさえある。自民党派閥政治を政治記者として20年ほど見聞してきたための、自然に体得した知識である。
 他方の創価学会は、公明党を立ち上げて、当初はリーダーの弱者擁護・平和主義によって、自民党の右翼腐敗体質を追及、一定の支持を得てきた。いうところの中道路線だ。外交政策では、親中政党として72年の国交正常化にも相応の貢献をしてきた。筆者は「大中国の真実」(データハウス)で評価し、紹介したほどである。しかし、大きく変化してゆく。
 細川・連立内閣で与党に加わり、続いて自民党復権すると、同党の補完政党にのめり込んでしまった。権力の仲間入りを果たしたことで、自民党の右傾化の波に呑みこまれてしまったともいえる。

 深刻な事態は、支持基盤の学会リーダーが数年前、事実上現場から離脱すると、公明党の右傾化・自民党化は顕著になる。最近では、弱者いじめの10%消費税に賛成するわ、反原発精神を放棄するという、自民党そのものの体質に変貌してしまった。
創価学会もまた公明党の右傾化を受け入れてしまった、と分析する専門家は少なくない。戸惑いを見せる支持者も多いと聞く。以前のような馬力を喪失しているようだ。結局のところ、豊富な資金力と票を活用して、自民党の腐敗と極右体質を変革させるだろうと期待していた一部の専門家を失望させている。興味深いことは、今回の選挙では、学会が支援する極右安倍の自民党と、石原―橋下連合を支える「生長の家」が激突する構図、いわば宗教戦争の様相さえ見せている。

 政党と教団の連携・一体化は、自民党の派閥の終焉に比例していることも無視できない要因である。権力が支持基盤そのものだった派閥政治は、権力を失うと、極端に弱体化する。その派閥さえもが小選挙区制が衰退させてしまった。無気力政党の自民党なのだ。いきおい宗教に頼ることになる。学会が補完する自民党へと変貌している。
<二人の扇動者に騙されるな>
 石原と橋下の極右連合について、元福田派のベテラン秘書は「二人ともアジテーター(扇動者)で中身はない。橋下は格差社会を作った小泉ブレーンの竹中ではないか。ろくな者が付いていない。だいたい石原に飛びつくこと自体、政治音痴だ。40歳で政治などわかるわけがない」と手厳しい批判をしている。
 「石原は小さい派閥の中川派さえも維持できなかった。二人の息子の金作りで手いっぱい。核武装論・平和憲法破棄論という石原の野合についていける日本人はほとんどいない。そんな石原を宣伝するマスコミが日本を狂わせている。だいたいオウム事件の総括さえしていない。自公をつぶすといいながら、都知事には猪瀬を自公とかつぐ。狂っている」
 「橋下の消費税の地方税化という主張も、竹中の入れ智恵にすぎない。地方を知らない言い分だ。地方も腐っている。欧米のように地方議員はボランティアにしないと、地方の財政はもたない。地方に大金を流すと、それは中央の腐敗利権政治が地方にも蔓延することを意味する」

 どうやら結論は、以上の問題を指摘しない日本ジャーナリズム批判に行き着く。不甲斐ないマスコミが、日本を腐らせているのである。
2012年11月17日8時50分記