本澤二郎の「日本の風景」(1219)

<ワシントンの罠>
 内外の一般人は理解していないのだが、日本の政局の行方に一番関心を抱いているのはワシントンだ。彼らはワシントン寄りの政府誕生に持てる全ての工作を実施する。おわかりか?鳩山由紀夫小沢一郎が仕掛けた日本自立への道は、菅直人野田佳彦の下で逆戻りさせた。そして、今回の総選挙ではCIA期待の本命候補・安倍の自民党が王手をかけた。CIAは、過去に鳩山の祖父・一郎の後継に安倍の祖父・岸信介を擁立したことがある。同じ手口で歴史を繰り返す。ワシントンの忠犬から、ようやく脱却できると信じて、小沢・鳩山民主党政権に期待した国民は多かったはずだが、現在のワシントンは今ようやく安どの時を迎えている。


売国奴政権から抜け出せない日本人>
 40年前の72年に政治記者になった筆者は、しばらく戦争責任者であるA級戦犯容疑者の岸が、あろうことか政権を担当した理由がわからなかった。背後のCIAの強力な支援の存在を知らなかったからである。しかし、いまや多少の政治通であれば、岸がCIAから金銭面の面倒をもらっていたことも承知している。
 日本国民が期待する政府の誕生が許されない日本なのだ。沖縄を見れば一目瞭然だろう。米兵にも舐められている人権のない沖縄・日本である。この恥ずかしい日本を、本来の独立国にしようとする愛国者も、本物右翼左翼もいない。勇気のないリベラルは姿が見えない。
 ワシントンの傀儡政権しか存続できない日本である。売国奴が跋扈する日本なのだ。司法界・立法府・行政府・言論界の4権力とも、すべからくワシントンの僕(しもべ)だからである。
 その典型が石原や野田であり、いまや安倍に取って代わられようとしている。正に悲劇の日本なのだ。
 戦前は天皇に命を捧げてきた日本人エリートは、戦後はワシントンに忠誠を尽くしている。米留学組みに政権・財閥・官閥・言論界を牛耳させることで、ワシントンの傀儡・売国奴の体制が確立するのだ。
<台湾と同一レベルの日本>
 数年前に北京の大学で国際シンポジウムが行われた。そこで台湾の30代の学者と一緒になった。彼は日本に留学、そこで日本人女性と結婚した。日本語を、今も家庭内で使っている人物だ。
 たまたま小沢と鳩山が政権を担当しているころだから、2009年の暮れごろだったろう。筆者は日本にようやく明かりが灯ってきた、との日本報告をした。日米対等・アジア重視を公約した鳩山政権を評価しての東京レポートである。
 この報告に台湾の学者が異見を述べた。「そんなことが日本政府にできるだろうか」という疑問だった。ワシントンに逆らえる政府は出来ない、という彼の信念の披歴に戸惑ったものだが、しかし、現在では彼の持論が正しかった。
 「台湾で反ワシントンを口にしたら生きていられない」とも台北事情を説明してくれた。台湾当局の隅々にワシントンの息がかかっている、東京も同じではないか、と決めつけたのだ。
 悲しくもあるが、それが今回の総選挙結果になりそうだ。CIA工作は見事に成功した。小沢の盟友・鳩山は政界を引退した。小沢封じに全てのマスコミが動員されている。無党派の決起は期待できない。多くの国民は何も知らずに1票を行使するだろうし、棄権もするだろう。
<封じ込めた未来>
 日本政府与党は、常にワシントン寄りであることが宿命づけられている。それが3・11でも変わらない。愚民の連鎖に変化はない。知らぬは国民だけだ。ワシントン寄りの政権作りに、財閥・官閥と公正であるべきはずのマスコミも必死になって、姿を見せないCIA工作に協力した。
 かくして今回の総選挙でも、ワシントンの罠にかかった東京なのであることが判明してきた。CIAが最も警戒した小沢の未来の党を、彼らはまんまと抑え込むことに成功したからである。CIAが頼れる、安心出来る政権の誕生目前なのだ。その最大の功労者は、世論操作の最前線のマスコミである。司法まで動員したCIA工作を見事跳ね除けた小沢を、マスコミは依然としてまともに報道しないことで、彼を封じ込めてしまった。日本未来の党を、真正面から取り上げない不公正マスコミに無党派の決起は期待できないありさまなのだ。
 ワシントンのいいなりになる日本を「立派な民主主義の国」ともてはやした駐日米大使がいたが、それを聞いて喜んだ自民党政府やジャーナリストの日本は、今も存在しいている。ワシントンの罠は、こうして簡単に完結している。

 新聞テレビは、当初から3・11後の初の総選挙の争点隠しに熱心だった。争点は消費増税原発再稼働・TPP参加への対応に絞られる。これを肯定する民自公と反対の未来の党が、対立軸になっていることに目を塞いでしまった。
 そして、新聞テレビは自民と民主に的を絞って報道している。小沢の未来の党を薄めるために、石原・橋下の維新を大きく報道している。未来の存在をほとんどの国民は知らないまま12月16日の投票日を迎える。
<小党乱立>
 小党乱立は大政党を利する。誰にでもわかる。有権者を混乱させる。棄権票を増やす効果がある。多数の無党派を分断する効果的な方法でもある。多数派の無党派を抑制する格好の手段である。
 期待した小沢の指に止まった政党は、ごく限られている。この一つだけでも闇の勢力の暗躍を見てとれるだろう。期待の未来の党を押しつぶし、加えて小党を乱立させれば、浮上するのは堅い宗教票に乗った自民党が大勝する仕掛けである。
 改憲軍拡・戦争国家への日本改造を叫ぶ安倍に投票する、平和主義と日中友好を標榜する宗教票に、今日の愚劣な日本人のおぞましい心理を見てとれるだろう。
共産党はCIA工作を先取りするかのように大量の候補者を立てて、結果的に大政党に塩を送っている。先日、偶然ジムで運動をしながら見てしまったのだが、共産党の公約は多くは理解できる。しかし、官閥への大改革公約がない。血税の多くが、霞が関の利権に吸い取られていることに無頓着なのだ。無駄を放置して日本再生は無理だ。危機的な状況下でさえも、この政党は民意を代弁できない。北京が軽視する理由かもしれない。
<石原と小沢の共食い>
 共産党に足を引っ張らせて、未来と維新をケンカさせる。それでいて小沢の発言を新聞テレビは報道しない。典型的な差別報道である。いうなれば、石原と小沢を共食いさせているのだ。
 選挙上手の小沢も、今度ばかりは手足をもぎ取られたダルマである。ワシントンに一人抵抗する小沢を封じ込める、反対に極右を宣伝し、極右政府を誕生させる工作に、率先して先走る新聞テレビの日本である。
 
 日本に極右政権が誕生すると、どんな事態が招来するのであろうか。ただでさえ大不況下の日本である。日中関係の経済破綻は、さらに深刻化することになろう。そこでの戦争体制化など想像もしたくないのだが、これほど馬鹿げた好戦的公約が飛び出す総選挙も戦後にはなかったことである。
 そんな政党である自民党・維新そして公明党、さらに民主党の大連立になると、戦前の近衛翼賛体制そのものであろう。天皇国家主義そのものである。戦争法規や徴兵制も浮上する。それでも、ワシントンの駒として、奴隷人間として生きようとする日本人なのであろうか。
 悲観的過ぎようか?
2012年12月10日9時45分記