本澤二郎の「日本の風景」(1224)

ペンタゴンの陰謀>
 12月6日にサルバドーレ・アンジェレラ米軍司令官が、日本記者クラブで記者会見を行っている。遅ればせながらYOU TUBEで確認したので、要点を紹介しながら解説を試みようと思う。筆者の関心事の第一は、司令官が空軍出身ということである。ワシントン・ペンタゴンの産軍複合体の思惑・陰謀が何なのか、を垣間見ることが出来る。とてつもなく高額な戦闘機の売り込みと、沖縄の戦略的重視のためであろうが、まずは武器商人よろしく借金で首の回らない日本での金もうけが、最大の理由なのではないか。


<米軍司令官は空軍出身>
 司令官は81年に空軍士官学校を卒業、在日米軍勤務は今回で5回目だ。日本人脈は豊富である。新型戦闘機売り込みには最適な武器商人ということだ。しかも、今回の日本赴任の前には、ペンタゴン国防総省で勤務している。米産軍体制の枢要な軍高官である。
 彼は「(沖縄の)嘉手納には(ステルス戦闘機)F22を配備してある。いずれ(次の)F35も」とも豪語した。中国軍けん制役も兼ねている。
 一見して危機に対応しようとの構えを見せるが、筆者には全くそう思えない。緊張要因として、逆に平和と安定を疎外することにもなりかねないのである。
在日米軍の目的の嘘>
 彼は3・11関連で、自らペンタゴンから救援活動を行った、と自画自賛した。「日本国民が力強く立ち上がったことに感動した」とも口を滑らせた。決してそんな日本になってはいない。震災復興は遅れ、放射能の実態に蓋をかけて、市民の関心を他に向けさせているにすぎない。
 多くの人々は将来に不安を抱き、若者に希望が失われている。とてもではないが、力強く立ち上がってなどいない。
 司令官の次の言葉が気になった。「在日米軍の目的、それは5万人の米兵と家族、民間人は、日米同盟強化のため、日本の自衛のために当たっている」と。通訳に誤りがなければ、これは嘘である。
 日本防衛は、日本駐留のための口実である。世界中の人たちが承知していることではないか。ワシントン・ペンタゴンのアジア太平洋戦略のためである。ワシントンの嘘を垂れ流す与野党政治家と新聞テレビは、その点で罪が重い。
 嘘でなくて真実というのであれば、沖縄県民全てが基地返還やオスプレイ配備反対を叫ぶはずがない。5回も日本に来て、それでいて、こうした嘘を平然とつく米軍司令官は悪魔の使いなのだろうか。
オスプレイ配備は当然>
 沖縄どころか、日本全土でオスプレイ配備に反対している。日本の主権者がNOを突きつけている。そのことについて在日米軍司令官は「特段、問題はない。オスプレイの安全性に問題はない。2か月の運用に誇りを持っている」と開き直った。
 これでは、さしずめ45年に厚木飛行場に降り立ったマッカーサー元帥並みではないか。問答無用と日本の主権を斬り捨てるのだ。悪辣な空軍の司令官であろうか。
 彼はオスプレイの3大メリットを宣伝することも忘れなかった。「速度が2倍、積載は3倍、飛行範囲は4倍」といって胸を張ると、さらに「有用な機種だ」ともうそぶいた。兵器メーカーの広報官も兼ねていた。日本と日本人を舐めているのである。
地位協定見直し不要>
 沖縄の人権は、戦後67年間に渡って米兵に蹂躙されてきている。それは40年前、日本に施政権が返還された後も続いてきている。
 今回の総選挙では大馬鹿な保守党候補は「沖縄の犠牲で日本の今日がある」などとほざく演説をする者がテレビに映っていた。ワシントンの奴隷になっている自分がわからないのか。沖縄にも「沖縄の犠牲で本土は助かっている」と宣伝する者がいる。
 冗談ではない。真実を言うと、日本はワシントンに占領されているのではないか。独立国の日本ではない。自立していない。2本の足で立っていない。ワシントンの奴隷ではないのか。
 日本の主権は、ワシントンによって牛耳られているのではないのか。これを否定できる日本人はいるだろうか。元自民党秘書でさえも「アメリカの州の一つ。米兵にも舐められている日本」と指摘している。「日本はアメリカの属国どころか、属領ではないか」とは、アメリカで30年も石油採掘に励んできた人物の指摘である。
 政党・政治家でこうした事実を容認する者はいない。彼らこそワシントンの奴隷だからである。確かに戦後の占領政策にいい面はある。これも事実だが、日本支配の現実はそのままである。安倍・自民党の日米同盟論の正体であろう。
 従って、米軍司令官は記者団の質問に対して「日米地位協定の見直しは必要ない」と一蹴した。オスプレイの運用に「誇れる」とうそぶく空軍の指揮官は、米兵の問題に付いてのルールは「今まで通り」と言明した。
尖閣防衛はワシントンがOKすれば>
 「北朝鮮のミサイルを撃ち落とせるのか」という疑問には「その能力は持っている」と言い放った。新型のレーダー配備について日米韓3カ国で協議、進行中であるとも語った。
 日本の新聞テレビや御用学者・評論家がわめき続ける「尖閣防衛」について、彼は珍しく慎重に答弁した。「具体的なオペに言及できない。政府で議論しており、いま予測できない。条約上の義務があるため、政府から声がかかれば、日本防衛のためにサポートする用意ができている」と発言した。
 中国との争いはただ事ではない。断じて起きてはならない。そのことを承知しているのであろう。そして、こうも釘を刺した。「平和的に解決することが重要である」と。たかだか小さな島の領有権騒動で米軍を動かせるわけがない。それくらいのことが分からないのか、と言っているようにも筆者には聞こえる。
 アフガン・イラク戦争で米軍の精神状態は、まともではなくなっているだろう。新たな戦争などNOである。イランとの戦争もNOである。その上、大中国と?ありえないことである。
<嘉手納は重要な基地>
 93年の訪米取材中、米海軍将校を経て大学の教官になっている人物と意見交換した。そのとき、彼は「他の米軍基地が全てなくなっても、横須賀は手離せない」と語った。
 帰国して自衛隊幹部に感想を求めると、彼は「海の連中は横須賀、空は嘉手納というでしょう」と述べたが、全くその通りだった。
 「嘉手納は戦闘の出来る最大規模の空軍基地だ。太平洋有事の鍵を握っている。常に重要な基地であり続ける」と本音を漏らした。「さらに拡充する考えは」という質問には「そう見ていない」と即答した。彼らにとって嘉手納は十分すぎる機能を有する基地というのである。
 横須賀も嘉手納もペンタゴンの最前線の重要な基地である。それも日本防衛のためではない。米産軍体制のアジア太平洋のキーストーンであり続けるというのである。 
ペンタゴンのペット政権が誕生>
 そんな時に彼らワシントンは、もっとも扱いやすい安倍・自民党の復活を、明日の投票で手にできる。彼らの工作の一大成果といっていい。ペンタゴンの武器商人の心ははずんでいるだろう。
 岸・中曽根・小泉とそして安倍である。しかし、日本のポケットには借用証しか入っていない。
 それでも、司令官夫人も子供たちも大の日本好き、クリスマス休暇ではアメリカの知り合いを東京案内できるとはしゃいでいるという。
2012年12月15日9時15分記