本澤二郎の「日本の風景」(1249)

<安倍デフレ脱却は嘘>
 またまた弱肉強食・格差拡大派の竹中平蔵一党が、公然と安倍官邸に乗り込んできた。そのせいだろうか、もともと国民の支持の低い政権に対して、列島から、新たな怒りが噴出してきた。そうした友人がまたしても1時間も電話をしてきた。「デフレ脱却は嘘である。副作用が怖い」と断じた。その通りである。安倍や竹中の浅智恵で、日本の沈下は止まるどころか、速度を速めることになろう。この国は3・11による放射能まみれから、とうとう政府の脳乱経済政策で、さらに悪化することになるのだろうか。


<物価は需要と供給で決まる>
 いま家庭の中は、物・モノで膨らんでいる。テレビのない家があるだろうか。洗濯機のない家庭など見つけることなどできない。多くが車を持って、途方もない高い税金を払っている。
 物の値段は需要と供給で決まる。この原則が変わることなど無い。需要が少ないところでは、価格は下がる、上がることはない。上げれば、さらに消費が冷え込むだけだ。小学生でもわかる理屈以前の理屈であろう。
 正確にいうと、全くゼロではない。古くなった洗濯機を買い替える家庭は少しある。しかし、お先真っ暗の世の中だから、庶民は安くていいものを購入する。海外からの、安くていいものが手に入る日本である。安かろう、悪かろう、の製品などに、市民は目もくれない。そんな製品は最初から排除される。
 買い替え需要は、したがって、景気を強く押し上げる力はない。多くの物産・工業製品は、今後とも横ばいか下がってゆく。コストの低い近隣諸国から安い製品が輸入されてくる。安倍の言う2%インフレは起きない。
<買いたい製品はない>
 要するに、これを買わないと生活が成り立たない、何としても買いたい、という製品が存在しない日本である。日本で売られる製品の競争は、それゆえに激しさを増すことになる。値下げ競争がなくなることはない。これぞ市場原理なのである。
 いま家電メーカーが4Kとかいうテレビ新製品を売り出したが、これに飛びつく家庭がどっと生まれる可能性はない。現在のテレビで十分間に合うからである。
 それは車についても同様である。高いものは一部の富裕層が手を出す程度だ。オバマに限らず、これから欧米各国の指導者は、当然のことながら優遇の塊である富裕層の課税強化に関心を抱いている。そのため、富裕層もまた消費に慎重になっている。
 結論をいうと、物が沢山売れることはない。金は動かない。日本だけでなく国際的な傾向である。世界的不況が、さらにそれに追い打ちをかけている。デフレ脱却はない。其の分、年金生活者は命をつなぐことが出来るのだが?
<投資先がない>
 財閥は莫大な預貯金・資産を保有している。200兆、300兆円だ。投資先があれば、いくらでも投資する余力を持っている。しかし、この世界的大不況下、利益を上げる投資先がない。
 政府・日銀が円札を輪転機にかけて刷りまくっても、実際のところ、無意味なのである。借りない。金はあるのだから。それでも刷りまくると言う、これの副作用が恐ろしい。

 人々が消費したい物がない、需要が無いのだから、投資は出来ない。したがって雇用は増えない。逆に、資本家は社員の削減、非正規社員による雇用調整に熱心である。労働者の給与は悪化するばかりだから、消費は落ち込んで、景気はさらに落ち込む。
 中曽根バブル崩壊後の20年余、こうした右下がりの経済の日本である。自公政権の公共事業のバラマキで、既に財政は破綻しているではないか。それでいて、また同じことを自公はやろうとしている。狂気の経済政策である。
<空洞化は必然>
 政治と経済の不安の連鎖が市民の心を暗くしている。日本国内に新規の工場は出来ない。むしろ、どんどん縮小・閉鎖されて、海外へ出て行っている。
 いうところの空洞化は定着してしまっている。その上、石原と野田の尖閣問題の表面化で、日本製品は中国で売れなくなってしまった。これの大打撃は実に大きい。日中関係の凍結状態によって、欧米や韓国・ASEANは大喜びだ。
 一部の工場は、中国からASEANへと工場を移転させている。日本には戻らない。戻れない。中小企業でさえも中国・ASEANへと移転している今日だ。日本の空洞化は定着してしまっているのである。
 日本で作った高額な商品は売れない。競争力を失っている。値引きして下げるしかないのだ。インフレは起きない。デフレの継続だ。
<日銀の輪転機を回して超借金・国家破綻>
 さすがに、就任早々の今は口に出さないが、安倍の頭脳の低さを永田町の住人は、昔からよく知っている。誰も期待などしていない。強いて言うと、安保政策で改憲軍拡論者・好戦派ということぐらいである。
 それにしても、安倍の経済政策は恐怖だ。副作用の大きなガン治療薬を、何も知らない日本人に対して、生体実験をしようというのである。さすがに、外国では使われない。いまは質素倹約しかないというのに。
 安倍は、経済などまるでわかっていない。既に1度経験済みであろう。これまで苦労したことなどない無能人間だと、永田町で評価されてきている。常に、誰かの操り人形だ。そういえば、目下、ワシントンの操り人形になろうとして1月訪米を具体化させようとしたが、ワシントンからも“待った”がかかった。
そのせいかどうか、ただひたすら2%インフレ実現のためにと、経済財政諮問会議を発足させ、昨日初会合を開いた。なんと竹中一派の原発推進派ばかりのメンバーである。彼らと共に、まずは日銀の輪転機を奪い取って、円札を刷りまくるというのだ。その結果、円の価値は下がる。日本国債も下がる。円安にぶれさせるのだという。
 他方、超バラマキ公共事業予算を編成する。金が無いのだから、むろん、国債を大量発行して、現在の1000兆円借金を、さらに膨らませてゆく。孫やひ孫たちに借金を残してゆく、という馬鹿げた政策を強行するというのだ。
 野田も狂っていたが、安倍はその数倍、狂っているのである。国家破綻へと突き進むというのだろう。欧米は苦しくとも歳出削減、財政の健全化に死に物狂いの努力をしているのに、である。
<円安・生活必需品値上げで個人破産>
 円安によって財閥輸出企業は、多少もうかるだろうが、各国とも景気は悪化している。極端に輸出は伸びない。それよりも、輸入大国の日本の被害は、庶民生活を直撃してくる。この副作用が怖い。既にガソリンや灯油の大幅値上げに悲鳴を上げている列島である。
 電気・ガスは言うに及ばず、食料品をも直撃してくる。市民生活の悪化は、さらに消費を落とし、景気を冷え込ませることになろう。
 10%消費税下の生活必需品の大幅値上げの影響は計り知れない。
 円刷り政策は、国の財政と家計を破綻させることになろう。
<五輪誘致の無駄作戦にマスコミ動員>
 おまけ付きの2013年のお笑い無駄遣いの筆頭は、2020年の東京五輪誘致という。猪瀬や石原は、その関連の無駄経費を肩代わりしてくれるだろうか。NHKはじめ新聞テレビが大宣伝に躍起だが、財政も家計も破綻するような東京での開催は、壮大なる無駄・借金を膨らませるだけであろう。
 開催派は数千億円の借金を肩代わりする覚悟があるのかどうか。是非とも聞きたいところである。これも孫子らへのツケになるのである。
 昨日、初めて上野の東京都美術館に足を向けた。日本書道美術院主催の第67回「日書展」で孫が入賞したというので、家族を代表して見に行った。「挑戦」という文字だ。いい字である。
 人間は常に挑戦が必要だが、国民を不幸にするような挑戦はNOである。美術館には早くも五輪誘致の垂れ幕がかかっていた。
2013年1月10日8時35分記