本澤二郎の「日本の風景」(1259)

<不条理の横行>
 主権者の1票が、ずっと侵害されてきている。とうとう司法が怒りの判決を相次いで下している。不正選挙疑惑も出ている昨年の12・16総選挙には、違憲無効の判決も出た。要するに、議会も政府も正統性を有していないのだ。関係者は抜本改革して、改めて総選挙を実施しなければならない。しかし、その自覚がまるでない。一方で、深刻な問題であるTPPについて安倍内閣は「参加したい」と前のめりの政策を打ち出している。それだけではない。貨幣乱発の日本銀行が誕生させた。独立性を放り投げた日銀総裁は、それでもって「2年以内に2%インフレを実現する」と、まるで与党政府のような公約をして、輸入品の大幅値上げを断行して、庶民の懐を直撃している。3・11教訓に反して安倍内閣は、秘書官や経済ブレーンに原子炉メーカー社長など原子力ムラの代表を起用している。いたるところで不条理が横行する永田町の日本である。



<党利党略の選挙制度
 国民は、1票の格差解消と同時に議員数の大幅削減、議員報酬の半減を求めている。日本丸が沈没している、正にそのさ中なのだから。当たり前の国民の切なる要望である。だが、安倍首相は「0増5減」をやることだ、と開き直っている。有権者を馬鹿にしている。
 多すぎる国会議員など半分で十分だ。報酬半減で十分である。そうすれば役人の定員と給与も半減できる。世紀の行財政改革が実現出来るだろう。その結果、無駄な歳出を無くすことが出来るだろう。そうすると、1000兆円の借金大国の前途にも明るさが出てくることになる。孫たちに負債を残すことも無くなるかもしれない。若者に夢と希望を与えられるだろう。極論かもしれないが、今は非常事態の日本である。これくらいの覚悟が議会・政府に求められている。
 日本丸が安全航海してゆくためには、これくらいのことは仕方がないだろう。怨むなら中曽根バブルに怒りをぶつけるしかないだろう。あるいは借金を膨らませた小泉内閣に抗議したらいい。
 米粒ほどの尖閣が沈没しても構わないが、日本列島が沈没しては1億2000万人が生きては行けないのだから。
 党利党略をぶつけ合っている現在の安倍・自民党など全政党の責任は重大である。すべからく清水の舞台から飛び降りてもらわないと、日本人は生きられない。そこまで追い詰められているのである。
<株屋は浮かれ>
 貨幣乱発による円安誘導政策に、行き場のない資金を抱える外国の機関投資家が浮かれだした。株の上昇である。実態経済に変化など起きていない。
 彼らが日本経済の先行きに希望を見出したわけではない。いずれ真っ先に資金を回収するだろう。ババ抜きのババを引くのは、決まって小銭を持っている日本人投資家?である。一部に株高に浮かれている日本人も出てきているらしい。
 円安は国際収支を大きく悪化させている。赤字国転落の行き着く先は暗い。安倍・自民党の思惑は、7月の参院選まで浮かれた状態に持ち込めばOKなのだ。新聞テレビの宣伝がカギを握っているのだが、その点でナベツネ放送は安心なのだろう。
<物価高が庶民直撃>
 しかし、既に円安効果は急激な物価高、それも白物家電や車は下がっても、生活必需品に値上がりムードが押し寄せている。ガソリンの高騰はマイカー族を直撃している。輸送業界も痛撃を受けている。
 輸入飼料の高騰は、養豚牛鶏の肉の高騰を約束するだろう。資源のすべてを外国に頼っている日本では、物価の高騰は庶民・弱者を痛め尽くすだろう。それも4月以降から極端に現れるだろう。
 デフレ経済から2%もの大幅インフレ経済に持ち込むとどうなるのか。来年以降には消費税の大増税が追い打ちをかけてくる。大不況下のハイパーインフレにならないのか?安倍の野望である憲法改悪・軍国主義の日本改造が、これで実現できるのだろうか。
 アジアの人民・国際世論が許さないだろう。
原発東電は過去最大料金>
 物価高の先陣を、ガソリンと東京電力の電気料金が買って出ることになる。日銀の黒田とかいう総裁は大喜びするのだろうか。
 東京電力福島原発廃炉にも50年、100年をかけてゆくことになる。メルトスルーした核物質の処理や地下水や海水の汚染のことを考えただけでも絶望的になってしまう。1600本近い使用済み核燃料棒が破壊されたプールから、万一飛び出すようなことが起きると、首都圏どころか地球までが破壊される。
 この危機的事態に蓋を懸けておいて、円安による原油高騰をよいことに電気料金を高騰させるのだという。弱者は唯々諾々と追従するのであろうか。
<追い詰められる非正規社員
 就職が出来なくて自殺する若者が増えてきている、と当局は公表している。せっかく就職しても多くの若者は、身分も地位も不安定な非正規社員契約社員だ。
 彼らには過酷な仕事と低賃金が相場だ。正社員との格差は広がるばかりだ。これは小泉内閣から進行した社会現象である。政治で摘み取るしか方法はない。だが、安倍内閣はこれの推進役の竹中平蔵を官邸に招き入れている。
 若者の反乱が起きないと、誰が断言できようか。
<この世は闇か>
 「右を向いても左を向いても、この世は真っ暗闇」という歌詞があったように記憶している。敗戦後のどさくさのころを歌ったものだろう。戦後67年後に同じような事態が浸透している日本ではないだろうか。
 財政の破たんは、日本の医療や福祉を破壊する。年金を破綻させる。それを放置して相変わらず莫大な赤字予算・バラマキ予算を編成・強行する日本政府である。
 中曽根バブルの崩壊とその後の借金予算で日本丸の船底に大きな穴が空いている。いくら金をつぎ込んでも借金は減らない。逆に雪だるまのように増大している。そうして自民党は敗退したのだが、いま同じ輩が政権を担当している。
 日本人の民度を裏付けている。新聞テレビの責任だ。彼らは政府(権力)と財閥(金)に忠実な僕(しもべ)なのだ。それの成果である。大失敗した張本人を再び選択したのだ。うまくやれるわけがない。
 お先真っ暗な闇の世界に連れ込まれる日本人なのである。
<それでも参院選で安倍・自民党圧勝?>
 それでも夏の参院選自民党政権・自公連立政権が過半数を取るのだという。まともな政党が存在しないからだ。米粒のような政党が、いくつか存在するだけである。このボンクラ政党にもあきれるばかりである。
 民意を理解していない。小党ほど党利党略政党なのだ。国民の悲痛を理解できないのだ。共産党社民党・生活・緑は、今後とも正論を吐くのであれば、大局に準じるべきだろう。極右の維新は、日本の前途に暗雲を投げかけている。マスコミの宣伝効果ゆえに、である。極右に塩を送る新聞テレビに問題がある。
2013年3月30日20時10分記