本澤二郎の「日本の風景」(1263)

東芝の素顔>(その五)
 東芝パソコンのせいか。昨日の原稿の一部が消えてしまっていた。本日追加挿入することにした。海外での安い部品を調達した東芝パソコンに問題があるのか。それとも原子炉や武器弾薬の製造に熱中しているための手抜きなのか?我が家では洗濯機と冷蔵庫は、購入して数年後に故障、いまは別のメーカーに切り替えた。白物家電の評判はよくない。其の分、政界工作に余念がないのだろうか。民主党政権が潰れて一番ほっとした財閥企業が、原子炉メーカーかもしれない。既に安倍を走らせて原発輸出にも目途をつけている?「福島が収拾してないのに輸出攻勢はないだろう」と以前、亀井静香が吠えていた。


<政治に便乗する体質>
 東芝安倍内閣が発足すると、直ちに社長の佐々木が、安倍が復活させたばかりの経済財政諮問会議の委員に就任した。佐々木は3・11直後の福島原発爆破事件の渦中に、時の菅直人首相から官邸に呼び付けられた人物で知られる。彼こそが原子炉メーカーの中心人物だ。東電首脳部は原発の技術的なことは何も知らない。心臓が破裂する中で、菅は佐々木に収束への指令を発したものだ。そんな佐々木が安倍政権で晴れての官邸入りだ。安倍との深いつながりを印象付けた東芝である。こんな大胆な人事も珍しい。
 佐々木人事の背景には、小泉内閣との太い結びつきをみてとれる。東芝の社長、会長、相談役を歴任した西室泰三だ。彼は小泉内閣霞が関の委員を総なめにしている。事実上の内閣の経済ブレーンだった。郵政民営化でも、竹中平蔵と共に大活躍した。
しかもブッシュ時代の日米官民会議の日本側座長も務めた。ワシントンはゴールドマン・サックスCEOである。西室はブッシュ政権に対して日本側の顔役を演じた。財務省にも介入、はては日本広告協会理事長も務めて、新聞テレビに睨みを利かせた。西室は小泉内閣の下で、国家権力を自在に駆使した経済人、財閥の代表を演じ続けた。新聞テレビは一斉に小泉を持ち上げた。いまは安倍を必死で支援の報道をしている。
 その下で佐々木も働いた。もっともコストのかかる危険な原子炉、そのメーカーを、西室の背後で汗をかいて手にした。小泉―安倍体制の下で、彼は米原子炉メーカーの高額買収に成功したのである。原子炉と佐々木は一体関係にある。原子炉をはずしたら佐々木は存在しない。そんな佐々木を安倍は官邸にスカウトしたのだ。この内閣の性格は、内外政とも小泉内閣に連動しているのだろう。
<安倍人事の3つのポイント>
 昨日、自民党内の一部でしかないリベラル派に電話をしてみた。元小泉内閣の閣僚である。彼は「安倍人事はお友達、右翼の子分、論功行賞の3点で編成されている」と断じた。
 言われると、確かにそうである。甘利や菅は典型的なお友達だ。安心してポストを任せることが出来る。裏切りを心配しなくていい。右翼の子分というと、自民党政調会長高市が筆頭であろう。これらも裏切りは考えられない。閣内や党内に反乱があれば、彼らが封じ込めてくれるだろう。これも祖父の岸信介譲り人事かもしれない。あとは論功行賞ということになる。
 東芝の佐々木はどうか?小泉内閣で官邸入りした安倍は、西室の配下の佐々木と関係ができたろう。お友達の民間人かもしれない。改憲軍拡の日本で暴利を得ようと野心をたぎらせる佐々木は、右翼の仲間・民間人であるかもしれない。
 自民党の総裁選挙では、党員人気の石破を撃破した安倍の実力というと、それは金力である。思想信条の薄い自民党議員は金によって動く。国会議員を買収する資金さえあれば天下人になれる。金こそが、総裁選必勝の決定打となる。ワシントンのネオコンも支援の手を差し伸べていた。旧田中派の石破よりも、暴走気味の石原のセガレよりも、安倍は安心出来るだろう。そうしてみると、東芝は相当の裏金を安倍に献金したのではないだろうか。事情通の分析でもあるのだが。
 政治は金と票で動く世界である。日本に限らないだろうが、大方の国では、これが通り相場となっている。安倍の祖父はCIAが資金面でも応援した。その結果、A級戦犯容疑者が自民党総裁・首相になって、ワシントン指示の日米隷属のための安保改定を強行、約束を果たした。以来、日本の政治はワシントンへの忠誠を余儀なくされた。例外が田中内閣の自立外交だった。
 それゆえのロッキード事件での田中逮捕事件となった。中曽根は徹底してワシントンにひざまずいた。小泉も、である。
<黒子浮上の東芝
 昨4月2日、銀座の新歌舞伎座こけら落としが行われた。ひのき舞台は世襲の名優たちによって占拠された。黒子の出番はない。
 民主政治の下では、あくまでも国民から選ばれた人物が立法府を構成する。そこの第一党・多数党が政府を編成する。そこでは官僚も、いわんや財閥も黒子役でなければならない。黒子がひのき舞台で踊りまくることなど想像もつかない。これは約束事なのだ。民主政治のルールとなっている。
 黒子である財閥の代表がひのき舞台に上がることは、本来は好ましいものではない。国民の代表ではないからだ。役人のような国家試験の合格者でもないのだから。東芝はここをわきまえていない。黒子が舞台に上がって演じる?歌舞伎の世界では考えられない。
 事情は少し違うが、消費税10%を強行した財務省事務次官は、本年度予算で500億円を天下り先顧問のIT企業にプレゼントした。途端に社長になった。
<専門家は国民愚弄>
 勝という元財務省事務次官は、官僚と財界の関係を露骨に印象付けている。しかし、官邸に乗り込んだわけではない。他方、東芝社長は福島原発が燃えさかる渦中だというのに、これみよがしに官邸の経済政策の中枢に席を置いた。これは通常ありえない、信じられないことなのだ。事情通は「国民を舐めているからだ」と酷評した。 2013年4月3日10時45分記