本澤二郎の「日本の風景」(1277)

東芝の素顔>(その十一)
 日本の原子力ムラは無力そのものである。政府も打つ手などない。必死で水をぶっかけるだけだ。そこからの大量の高濃度の汚染水の処理もズサンだった。地下水や海水へと流れ込んでいることが、最近になってわかった。東電にまともな技術者などいないことも判明した。それどころか原子炉を製造した東芝などでさえも。なんと彼ら原発メーカーは、政府を動かして、無知な途上国指導者工作に専念、そこへと原子炉売り込みを図っている。中国もその標的という。対抗するように今「このままでは永遠に収束しない」という衝撃的な本が、永田町で話題になっている。


村上誠一郎著「福島原発の真実」>
 著者は自民党きっての政策通で知られる村上誠一郎。若いころは、三木武夫河本敏夫の薫陶を受けて政界入りした。日本を駄目にした東大法学部出身だが、彼はあらゆる政策課題に真剣に取り組む点で、無責任な官僚と異なる。恐らくは、彼は与野党議員の知的政策レベルをはるかに超えている。日本の財政破綻をいち早く察知、警鐘を鳴らしてきた御仁でもある。
 3・11を目の前にして、彼は自らの人脈を使って福島事件を徹底的に洗った。事態の深刻さに驚愕した。嘘と隠ぺいという無責任な実態に愕然とするや、国会で追及した。
 チェルノブイリ大惨事において、当時の隣国ポーランドが、自国の児童らに打った緊急措置さえ取らなかった日本政府に怒りを爆発させた、唯一の政治家となった。
<永遠に収束しない>
 当時の野田内閣は既に収束宣言をしている。とんでもない嘘である。この本で、村上は「このままでは福島原発は永遠に収束しない」と断言している。彼の主張は、この1点に収斂されている。
 原発問題の専門家は、この指摘に頭を垂れるしかないだろう。原子力ムラの面々の反論を聞きたいものである。反論できる御用学者・専門家はいないだろう。
 今日、素人でも理解出来ることだが、東電も経済産業省にも福島を封じ込めるプロはいない。そもそも原子炉のメルトダウンを想定した技術などない。炉心溶融は起きない、という原子炉メーカーの言い分を政府も東電も信じ込んでいたのだから。
 一般論でいうと、問題を生じた製品は製造者の責任において処理される。当たり前のことである。その製品についての詳細など利用者はわからない。便利さを拝借しているだけである。
 しかし、核分裂となると、これは自動車や冷蔵庫とは違う。爆発による放射能の大量放出に打つ手など無い。しかも、日本は地震大国だ。本来、建設してはならなかった。それでも、というのであれば、巨大地震や巨大津波にも耐えられるものでなければならない。
 この基本的な対応のない人災原発だった。なぜなら炉心溶融放射能放出はない、という非科学的な思い込みによる原発建設だったからである。核分裂を利用しての電力は、もっとも科学的でなければならない。
 実際は、原子炉メーカーからの非科学的安全神話を、政府・議会・電力会社も受け入れてきた。この恐ろしいほどの非科学的安全神話を、彼らはマスコミを使って無知な国民に宣伝していたにすぎなかった。
国際原子力機関もお手上げ>
 目下、IAEAから専門家が福島を調査している。果たして、いい結論を出せるだろうか。既に2年も経過している福島で何ができるのか。
 この間、福島で何をしてきたのか。ぶっちゃけて言うと、上から水をかけるだけだった。そこに大量の放射能汚染水がたまる。これを海に垂れ流してもいたようだが、これは当事者が口を開かないとわからない。しかし、海水と魚介類から、それが事実であることが、ほぼ証明されている。
 安心して魚介類を食べられなくなっている日本である。
 ここにきて汚染水をためていた貯水槽からの漏れが判明した。地下水汚染も確実であろう。首都圏の水がめも環境省調査でSOSの状態にあることが判明している。これらにIAEAが適切な方法と技術を提案できるのであろうか。
<溶融核燃料が未確認>
 村上はメルトダウンメルトスルーした炉心溶融した核燃料が、どこにあるのか、どこに流れ込んでいるのか、誰もわかっていない、このことを強く主張している。
 そういえば、新聞テレビもこの事実を報道しようとしていない。NHKもまたあたり障りのない嘘報道に徹している。村上ならずとも怒り心頭であろう。福島や隣県の住民の思いは、ただ事ではないだろう。
 見えない、臭いもしない放射能をいいことに、当局は真実を伝えようとしていない。
 国会議員は国民の代表である。民意の代弁者だ。村上はその責任を果たそうと必死だ。国会で追及、そして今回、しびれをきらして「福島原発の真実」(東信堂・2000円)を上梓したものだ。次回に詳細を紹介するが、原子力ムラの面々だけでなく、国民の全てが読んで、福島の真実を知るべきであろう。
2013年4月19日9時29分記