本澤二郎の「日本の風景」(1303)

徳洲会の危機>
 67の大病院を抱える社団医療法人「徳洲会」が危機の状態にある。その深刻な事態を、事情通が電話してきた。石原のセガレと同様の、大がかりな選挙違反事件が発覚してしまったからである。彼は「瓦解寸前の徳洲会」と決めつけるのである。御大・徳田虎雄の今は「裸の王様」とも断じた。「社団医療法人は税制上の大優遇措置を受けている」ことは、その道の者であればよく知っている。「私物化は出来ない」のだが、その悪辣な私物化が露見してしまった。



<医療法人取り消しへ>
 医療法人が、禁じられている選挙違反事件を起こした。それも常習犯なのだ。「前代未聞の大事件の発覚」なのである。
 「一つの病院から10人を徳田選挙の運動員に変身させて派遣していた」という驚愕すべき事件である。内部告発で表面化、これを「東洋経済」が既に報じている。全部で367人の医療従事者を運動員として投入した、というのだから、これはひどい選挙違反事件である。
 徳洲会の中枢にいた元責任者の告発である。
 「石原のセガレは、パチンコメーカーから2人の社員を運動員として使っていた。其の事が今、大事になってしまった。セガレはピンチに立たされている。この違反事件は参院選後に本格捜査が始まる。徳田家の場合、400人近い医療関係者を、昨年の12月総選挙どころか、前々回から強行していた」と事情通もあきれ返っている。
 徳田と石原の濃密な関係も浮き彫りになる事案でもある。永田町全体を巻き込む一大疑獄事件に発展する、とも予測する。病院設立に関与した政治家・腐敗官僚を暴きだすことが出来れば、霞が関も永田町も大掃除できる事案というのだ。
<看護部長らを選抜>
 「看護部長以下10人を選抜して、彼女らを飛行機に乗せて鹿児島県に送り込む。ホテルを借り切っての宿泊・食事代だけでも、億の金を必要とする。これを誰が指示したのか。3親等内の者の関与で議員失格となる」
 頷ける事実が克明に判明しているようだ。
 問題は選挙違反事件に終わらない。医療法人の認可有無も問われることになる。厚生官僚の天下り一つとっても、深刻な問題を提供するだろう。
 「選挙資金の出所を問い詰めてゆくと、脱税による刑事罰も発生する」とも事情通は指摘する。単純な選挙違反事件ではなくなる。正に疑獄事件の様相を呈する、というのだ。
<徳田王国の崩壊>
 医療法人としての認可を取り消される、という場面も出てくる。徳田王国の崩壊が目に見えてくる。67病院をハゲタカが狙うことにもなろうか。怪しげな外国資本が導入されると、日本の皆保険制度に穴があく。TPP導入も絡んでくるかもしれない。
 日本の医療福祉制度とも関係する事態も想定されよう。国民の関心は、改めて強まるかもしれない。石原家だけの小さな問題に終わらない。となると、当局は蓋をしようとするだろうが、ここまで真相が明らかになってしまったのだ。
 小沢事件並みの強引な捜査をしなくても、材料は揃っているのである。蓋をすれば、霞が関も永田町にも火の粉が降り注ぐ事案なのだ。
<20億円持ち逃げ事件>
 事情通はこんなことも解説した。
 「徳田は海外から1%以下の安い金利の金を借りてきて、それを病院建設に充ててきた。その金を有効に流用もしてきた。言うところの金融業だ。闇金融である。その金の一部20億円を側近のHが持ち逃げした」
 20億円の持ち逃げ事件は、捜査当局に被害届が出されていない。そんな金だと承知しているからこそ、Hは持ち逃げしたのだという。
 「この男は40代。徳田・金融チームのメンバーだった」「さすがに首にしたが、訴えられていない」という。20億円事件の当事者は、のうのうと暮らしている、というのである。
 もう一人の首になったNの場合、30億円の使途不明金が理由という。徳田が立ち上げた「自由連合」関連というのだ。別の30億円の中には「石原にも流れている」と事情通は断言している。「都知事選がらみだ」という。
<鹿児島県警を買収?>
 こうした事件の山を目の前にして、鹿児島県警は「見て見ぬふりをしている」といって、事情通は憤慨している。
 徳洲会病院の内情を知る別の友人は「医師のたらい回しをして利益を挙げている無茶苦茶な病院」と断じた。67病院で働く医療従事者は、実に2万7000人というのだ。
 ちょっとした医療財閥である。政治工作資金は、医療法人という優遇制度を悪用して生み出された腐敗資金であろう。
 徳田が政界入りするころ、彼はよく宇都宮事務所に顔を出していたものだ。それにしても67病院と2万7000人には圧倒される。この巨大な利権維持のためにセガレを選挙に担ぎ出して、内閣にも押し込んだ。そこにも腐敗資金が流れ込んでいるはずだ。一大疑獄事件の解明が急がれよう。
 朝日の社会部に期待したい。    2013年5月21日9時45分記