本澤二郎の「日本の風景」(1304)

ナショナリスト・安倍首相の誤算>
 「おごる平家」のメッキがはげてきた。安倍内閣のことである。オバマに嫌われていた安倍の衝撃は、日本の新聞テレビが隠していた彼の正体、すなわちナショナリスト国家主義者)だと、米連邦議会調査局に暴かれたことである。侵略戦争東京裁判を肯定する日本国首相に対して、ワシントンはNOという判定を下したのだ。中曽根康弘は、俳優大統領のレーガンをうまく誤魔化すことが出来たが、安倍は「70%支持」という偽りの数字に浮かれて、本性を丸出しにして、国際社会では失速してしまった。アジア・欧米諸国の信頼を失ってしまったことになる。



<檜舞台で踊る黒子>
 北朝鮮工作は、日米同盟論者の安倍にしては珍しく独走した。極秘の工作をしたのだが、密使が平壌に着いた途端に暴かれてしまった。
 安倍の秘密工作は、最初から露呈してしまったことになる。これにソウルやワシントンが驚いた。6カ国協議の枠外で、安倍は独断で演じていたことが判明したのだから。
 「ナショナリストを信用すると大変なことになる」という事実を、各国は突きつけられたことになる。これまた安倍の誤算だった。昨日は、ご丁寧にも安倍は自ら決断した黒子、といっても檜舞台で踊りまくった人物と会見までして、その愚を天下にさらした。
<厳しい韓国世論>
 安倍は、米外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」とのインタビューでも、本性をさらけ出していた。ここが中曽根との違いだ。中曽根のずる賢さを小泉は学んだが、安倍は出来なかった。
 彼は「靖国参拝と米国立墓地のアーリントン参拝とは同じことだ」と断じてしまった。まさにナショナリストの本領を発揮した発言だった。靖国とアーリントンは全く違う。だからこそ福田康夫は、小泉内閣官房長官時代に「アーリントンのような、誰もが参拝できる無宗教の国立墓地を建立しよう」と提言していたのだが。
 福田と安倍は異質の政治家である。靖国は戦争神社、今もれっきとした宗教法人である。被侵略国民から忌み嫌われている宗教施設だ。国際常識である。
 さっそく韓国の有力紙「朝鮮日報」は激しく非難した。「侵略戦争を主導した戦犯が合祀されている宗教施設」と断じた上で、安倍発言を「詭弁」だと決めつけた。
 「東亜日報」も反撃した。「靖国には、国際社会が判決を下したA級戦犯が合祀されている」「首相の靖国参拝は、過去の侵略戦争に国家として免罪符を与える、同時に戦後の国際秩序を否定する行為だ」と断じた。
 赤紙1枚で「天皇の戦争」に有無を言わせずに駆り出されて、戦場で犬死にした青年の家族の中には、靖国に合祀されていることに反発している。今時「英霊」という誤魔化しなど通用しない。
 「共に祖父を首相・大統領にいただく孫同士の対中連携」を当然視していた安倍のもくろみは、見事に外れてしまった。
<沈下した米国の対日調教師>
 安倍のワシントン人脈は、米産軍体制の強硬右派の共和党である。そして日本の平和憲法を解体して、米軍の手先として活用できる日本改造を要求する「ジャパン・ハンドラーズ」「日本馬の調教師」で知られるM・グリーン、R・アーミテージ、J・カーチス、J・ナイは、オバマの2期目で地盤沈下している。
 滑稽なことは、いまも日本の新聞テレビは、彼らに付き従っている。特にNHKである。
 米連邦議会調査局の「安倍・ナショナリスト」と断じた報告書に一番驚いたのが、彼ら日本人特派員だった。
 オバマ政権は、新駐日大使にケネディ人気にあやかっての女性大使人事を薦めているのだが、それでも日本国内に警戒する向きもある。ただ、女性は男性に比べて金に対して抵抗力はあるものだ。彼女がCIAの手先になれるか?
 女性の人権侵害発言の安倍にとっては、やっかいな米国大使かもしれない。
<ムサシ工作のない選挙戦>
 先に「70%支持率の安倍内閣」下の山口参院補選は、自公候補が勝利したものの、投票率の低さには驚いた。そして今回のさいたま市長選挙で自公は大敗した。これはどういうことか?
 筆者は12・26総選挙結果に仰天した一人である。自民党の得票率は10%台だ。それでいて議席率は3分の2に近い。あの猪瀬が都知事選で430万の得票を得たことになっている。
 その後に民間選挙屋「ムサシ」のことを知って驚いた。投票用紙から、票読みまで選挙の全てを独占的に行ってきたのだから。票の運搬・管理全てを。選挙管理委員会が「ムサシ」に丸投げしていたのだ。腰を抜かすほど驚いた。
 このことをほとんどの国民は知らない。現在も。議会でも問題にならない。新聞テレビも報道しない。主権者の意思表示を「ムサシ」が判定していたことを、有権者はしらない。
 富士通が作った票読み機のコンピューターは、操作可能という専門家の指摘もある。開票に関与した関係者の一部から内部告発も出ているという。不正選挙のことである。
 グーグルのネット掲示板には「ムサシ」の不正を暴く記事が沢山出ている。「ムサシ」の釈明はない。おかしいのだ。
 不正行為を自粛しているのだろうか。その結果が、さいたま市長選だったのか?つまり公正な選挙では、自公は必ずしも有権者の大半を抑えてはいない。
 問題は、次の都議会選挙と参院選挙に「ムサシ」がどう出るのか?最大の注目点である。430万人気の猪瀬と一緒のポスターを使えば、候補者全てが楽勝になる都議選なのだが?
<救いは大馬鹿な野党と新聞テレビ>
 安倍の嬉しい誤算は、新聞テレビがアベノミクスを宣伝、あたかも日本の経済は復活したように報道してくれる点である。極右の正体について蓋をしていてくれることだ。
 新聞テレビの首脳部が、全てナベツネになってくれたことだろう。このことは筆者の驚きの一つだ。権力に屈した新聞テレビに愕然とする。金を出す財閥に従う新聞テレビなのだ。

 もう一つの嬉しい誤算は、野党の体たらくである。公明党は言うに及ばず、共産党までが支援をしてくれる。宗教団体が固い票で支援してくれる。後者は当選しない候補者を沢山出馬させて、事実上、自民党を助けてくれる。野党を束ねる民主党では全くない点だ。
 これが自公圧勝ムードを作り上げてくれている。改憲・戦争の出来る日本改造を目の前にして、興奮する安倍なのか?しかし、国際社会はこれに従属してくれるだろうか?ネット社会の現在ではある。
2013年5月22日9時50分記