孫崎「米国にとって重要なのは、儲かる国か儲からない国か、ということ」孫崎享氏インタビュー

「孫崎「米国にとって重要なのは、儲かる国か儲からない国か、ということ」孫崎享氏インタビュー:岩上安身氏」  憲法・軍備・安全保障
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以下、連投します。

これから、6月17日(月)孫崎享氏インタビューの実況ツイートをいたします。

岩上「孫崎先生、お久しぶりです」

孫崎「今日も皇居を3周してきました。本当なら昼寝をする時間なんですが…」

岩上「たまたま先客がいらっしゃって、取材を受けてくれることになりました」

岩上「今日、打ち合わせをしようと先生に話したら、『出たとこ勝負でいいんじゃないか』とおっしゃられました」

孫崎「今日見ているのは、岩上さんのファンですから…」

岩上「まずお聞きしたいのは、『PRISM』の問題です」

孫崎「こうしたことは私たちは想定はしていました。それが今回、明確にやっていると(判明した)。この問題で一番怒っているのはEUです」

孫崎「今回のサミットでもこの問題を取り上げると言っている。安倍さんは何て言うでしょうね(笑)星条旗新聞の出だしは『我々は何を食べ、何を買い、何をGoogleで検索しているか、見られている』と」

孫崎「『大統領令』という本がありました。自衛隊機が国会に突入し、大統領が殺されるという話。そして、大統領令で、すべてがコントロールされていく。これが今起こっている」

孫崎「ボストン爆破テロの話もおかしい。どこで爆弾がつくられたかという話が出てきていない。おそらく自宅では作られていないんでしょう。犯人像について、初めは『孤独』で『イスラーム』だという報道」

孫崎「彼は、1年ほど前、ロシアの反体制側で、リクルートを行う人間に会っている。米国の情報機関系と接触しているんです。チェチェン系と言われますが、ソ連に抵抗する側にいたんです」

孫崎「スノーデン氏の問題に対して、日本で声を上げている閣僚はいない」

岩上「ご主人様の国ですから(失笑)私は、ソ連崩壊のとき、内戦下のグルジアに行っています。そのとき驚いたのは、もうCIAが来ていた」

岩上「…国務省の人間と言っていたが、明らかにCIAでした。早いなぁ、と思った。大統領側と首相との間に入って、橋渡しみたいなことをやっていた。ロシアよりも早く入っているんです」

孫崎「そうしたグルジアの反ロシアの集会に、彼(=ボストン爆破事件の容疑者)が出てるんです。なんか胡散臭いんですよね。この事件をちゃんと調べなければならない」

岩上「『PRISM』の話に戻りますが、スノーデン氏のとった行動が許されるか、何者か、という部分に報道がいくのですが、大事なのはスノーデン氏がリークした内容が、事実かどうかということです」

孫崎「その通りです」

岩上「監視している主体はどこなんでしょうか」

孫崎「そこなんですよ。誰もが脅かされる時代に入ったということなんです。こうした中で言えることは、米国社会が1%の人たちのための国になっているということです」

孫崎「すべての問題がリンクしている。『TPP』もそうです。ビジネスと国家が対等になり、ビジネスが国家よりも強くなるということです。米国の法体系を見れば、いい弁護士は殺人をしても無罪にすることができるんです」

孫崎「陪審員をどれだけ説得できるか、ということです。1%のための社会になっている。TPPは単に、米国対日本ではなく、企業対日本政府です」

岩上「今回は、スノーデンという人が亡命したことがおもしろい。通常、亡命というのは『不自由な国』から『自由な国』へ行く。それが、米国から亡命すると」

孫崎「ウィキリークスでも同じことが起こりました」

孫崎「香港政府は当初、引き渡すことになっていたみたいですが、市民が反対した」

岩上「習近平オバマ大統領が会談しましたが、歓待ぶりが尋常ではなかった。これが第2の冷戦の始まりだと言っている人の気が知れない」

岩上「それとは対照的に、2月に訪米した安倍総理は、これまでの会談を比べても非常に冷淡な扱いを受けました」

孫崎「米国にとって重要なのは、儲かる国か儲からない国か、ということ」

孫崎「言い方は悪いですが、オバマ大統領は、これまでの大統領の中で一番お金を集めて大統領になった。そのお金はどこから来たか?草の根と言われていますが、結局は『ウォール・ストリート』なんです」

孫崎「人権とか体制と言ったって、そんな枕詞は何の意味もない。(米国にとって重要なのは)中国が儲かる国かどうか。しかし、依然として日本は価値観を重視する外交をしている」

孫崎「米国は日本に対して『あなたは奴隷でしょう。ホスト同士で話をしているときは、奴隷は関係ない。対等な立場じゃないでしょう』という思いなんです」

孫崎「オバマ大統領が重要視しているのは、日本の『歴史問題』です。これはなぜかというと、日米関係が悪くなるからではない。米中関係が悪くなるからなんです。安倍総理は米国から見ると負の遺産なんです」

孫崎「数週間前、NYTの支局長と話をした。彼が言うのは、『あなたたちはなぜ軍産複合体的なものが米国だと思っているのか』と」

岩上「アーミテージのような人たちですね」

岩上「もしかしたら、米中の絆を深めるために共通敵をつくったほうがいいという話になるかもしれない」

孫崎「キッシンジャーがそうです」

岩上「今年の3・4月、米韓の合同演習によって、北朝鮮が過激な反応をした」

岩上「このときから、石破さんが『敵基地攻撃論』を言い始めた。米国の後ろ盾がなければ、こんなことは言えないと思うんです。しかし、その一方で冷たくされる」

孫崎「アーミテージの言うことを聞くなということですよ」

孫崎「…オバマの側じゃないんだから。安倍総理が対立したいと言っているんであれば冷遇されてもいいが、すべてを捧げると言っているのに、冷たくされた。ここで日本のマスコミはなぜか?と考えなければならない」

孫崎「…全く本質を見ていない」

岩上「これまでもずっとそうですが、マスコミは発言内容の一部だけを取り上げて、重要なところを伝えない。まるで米国が日本についているかのように報じる。馬鹿なんじゃないかと思います」

岩上「外務省は誰に忠誠を誓っているんですか?」

孫崎「分からなくなっているんでしょうね。考えないようにしている。『見ざる・聞かざる・言わざる』、しかし何かをする、と(笑)」

孫崎「ナショナリスト的な人たちが、結局は場合によって国を悪くする、という一番いい例は北朝鮮とイランだと思います。かつて、北朝鮮は韓国と大差なかったわけです」

孫崎「なぜ差が出てきたのか?それは、ナショナリストだったからですよ。同じようなことがイランで起こっている。シャーの時代、日本を抜いて5番目の国になると言っていた。しかし、『私たちは絶対に正しい』という」

孫崎「…思いを貫いている人のせいで、結局は成長できなかった」

岩上「どこかに外交的に、山県有朋がロシアを見出していったように、同盟を結ぶ国がないのでしょうか」

孫崎「日本は外国を知らないんですよ」

孫崎「民主党の野田さんは、ほとんど外国に行ったことがない。外国に行ったことのある人は、自分の国を客観的に見られる。外国を分かる層が極端に下がってきた。また日本の大きな問題は、素晴らしいことを求めなくなった」

孫崎「自分たちのものよりも、もしかしたら素晴らしいものがあるかもしれないと。かなり深刻ではないでしょうか」

岩上「かつての敵国であっても、同盟を結ぶというのはすごいこと。例えば、中国や北朝鮮

岩上「ただ、実際にはそんなことをさせないでしょう。安倍総理Facebookで、外交官の田中均を批判したのは先日のことです」

孫崎「北朝鮮が将来悪いことをしないというのが一番大事。これが日本外交の一番の中心」

孫崎「中国が北朝鮮をものすごい締め上げ始めた。これは韓国に原因があると思います。韓国は今、中国との関係を良くするということが目的になってきた。韓国と日本の右翼の違いは、中国に対する反発のあるなしです」

孫崎「日本だけが拉致問題のためだけに北朝鮮との関係を持つことになった。日本の国益で何が重要なのか、優先順位がつけられなくなってきた。この欠如が一番出ているのが北朝鮮

岩上「韓国の朴大統領が訪米したとき厚遇された。議会で演説までされた。この違いは何なのか?」

孫崎「中国、韓国、日本がそれぞれ米国に働きかけるときにどういう手段があるか?米国にいる中国系、韓国系です」

孫崎「カナダに行ったとき、中国人や韓国人に比べ、日本人のコミュニティがなかった。第2次世界大戦のときに敵国だったからです。その影響もあって、いわゆる日本人ロビーグループがないんです」

孫崎「中国・韓国は戦勝国側にいた。中国系で言えば、閣僚まで出るようになた。だから、日本の対米工作は、他の国より難しい」

孫崎「軍産複合体が中心なんてことはない。連邦政府に余裕はなく、軍事費は削減するより仕様がない。軍産複合体の力は相対的に劣っていくんです。10年間の戦争のツケが大きすぎる」

孫崎「アフガンで使った戦費は5兆ドルくらいでしょうか。国は崩壊のほうに行くんですよ」

岩上「馬鹿げていますよね」

孫崎「それに日本はくっついていこうとしている」

岩上「これだけ米国に露骨にビンタをくらって、なぜ気づかないのか」

孫崎「人間の生き方(の問題)になってくる。『こうしないと自分のポストがなくなる』と考える。原発を見てください。推進する理由なんてないんですから」

孫崎「『なんのために政治家になったのか』というところがなくなってしまった」

岩上「このあとに用意されているのは『秘密保全法』なんですよ。基本的には防衛機密を特別機密に指定する」

岩上「特別な人間だけが機密に触れることができる。中身が分からないため、秘密の範囲が拡大されていても誰もチェックできない。より極端に、日本の中枢が米国の言いなりになる。情報開示ができない」

孫崎「なぜ『秘密保全法』が必要なのか。これは、2005年の日米同盟の中に出てきているんですよ。日本独自で考えたら、自衛隊の機密情報が漏れて、大事に至ることはほとんどない」

岩上「米国の軍事機密を共有したときに、それを漏らしてはならないということはまだ分かります。しかし、米国に対して情報収集をした場合、懲役10年となるなどということが書いてある。驚きました」

岩上「春名幹夫さんが、文藝春秋尖閣問題に関してスクープを…」

孫崎「私はあまり支持しません。キッシンジャーが何を言おうと、今の米国の立場は変わらない」

岩上「スクープというのは、沖縄の返還交渉のときに尖閣が入っていた。このとき台湾が横槍を入れ、米国に『尖閣を入れないでくれ』と。こういう話です」

孫崎「あれだけが焦点だというかたちで言うと、誤解を招く恐れがある。原貴美恵著 『サンフランシスコ平和条約の盲点』は全体を見渡している。米国はその要因だけで考えているわけではない。核の問題も絡みます」

岩上「文藝春秋に載ったというのが大事です」

孫崎「なるほど」

岩上「こういう動きが一部出てきたというふうに、私は見ています」

岩上「わざわざ自衛隊は奪還訓練をやっている」

孫崎「自衛隊海兵隊化は、尖閣が目的ではなく、中東です」

岩上「そうすると、尖閣は…?」

孫崎「中国も、尖閣では問題を起こさないように、と思っていると思いますよ」

岩上「平和的な解決は難しいんでしょうか?」

孫崎「棚上げ!簡単な話なんですよ。外務省の態度は、コロッと変えられますよ。だって昔のことを変更してるんですから」

岩上「どうもありがとうございました」

孫崎「ありがとうございました」

【以上で、実況ツイートを終わります】(了)