本澤二郎の「日本の風景」(1326)

<CIAの任務>
 ウィキリークスのアサンジに次いで、今回はエドワード・スノーデンと、新たな勇気あるスターが誕生した。9・11を口実にアメリカ政府は、自国民の全てから、さらに外国までも丸裸にする諜報活動をしていることが発覚した。これほどの恥知らずで、悪辣な犯罪行為に、自由を信じてきている米国民は衝撃を受けているだろう。他国民は「アメリカのやることだ。さもありなん」と冷静に受け止めている。日本政府の盗聴行為を怒っていたM元外交官がいたが、どうやら悪しき国家の常とう手段と見ていい。それにしても人権侵害は、アメリカが一番ひどい。CIAはさらに、実力行動を伴うので、もっと危険である。




<他国への関与>
 スノーデン問題を契機にロシアのテレビが、悔悛した元CIA要員をインタビューしていた。年配の彼は、CIAの任務は「情報収集よりも」と語っていたのが、いかにも印象的だった。
 「同盟国云々とは関係なしに“他国への関与”だ」と断じていた。不都合な組織や人物、政権に関与することが任務というのだ。誰しもが納得するだろう。当のアメリカでは、この手の映画も沢山制作されている。
 一向に悔い改める様子はない。そこがCIAなのだ。中南米諸国でのクーデター計画は、枚挙にいとまが無いくらいだ。ワシントンの知らない工作もしでかしているという。
 普天間基地移転計画にからんでの鳩山内閣退陣にも、CIAが暗躍していたと断じることが出来よう。政界を離れた鳩山が、留学先のアメリカではなく、中国などアジアにあこがれるのも自然であろう。
 小沢一郎受難事件も同じである。二人ともCIAに狙われたことで、良い意味での人気が出てきた。CIAに操作されている日本政府・検察・言論界がひどく情けなく、みじめに見えてくる。
<恐怖を植え付ける>
 アメリカにとって、というよりも、その時のワシントン政権から好ましくないと思われる組織や個人に対して、恐怖を植え付けることもCIAの任務なのだそうだ。
 日本の右翼や暴力団と同様なのだ。時には殺害も平然と行う。古巣に敵対したスノーデンも、それを警戒して新聞やテレビに登場したのだ。もはや国際的な英雄になった彼を、拉致して半殺しには出来ない。
 鳩山も小沢も目に見えない相手に脅迫されていたようなものだから、本人ではわからない苦悩を強いられてきたであろう。よくぞ生きてきた、と称賛したいものだ。10年もすれば、ウィキリークスが真相を暴露してくれるだろう。早起きは3文の得というが、長生きにもいえる。
多国籍企業・1%と連携>
 CIA工作の協力者は多国籍企業なのだ。ということは、米多国籍企業のライバルや敵になると、CIAが関与してくるということらしい。いうところの1%・財閥である。
 強欲資本なのだ。国民の税金で飯を食っているCIAを、1%は強欲ビジネスに悪用しているのであろう。こんな不埒なCIAに付きまとわれた関係者はたまったものではあるまい。
 いうまでもなく、現地のアメリカ大使館はCIAの巣窟でもある。アメリカ帝国の支えが、正にCIAなのである。日本でうと、彼らの手先・協力者は、アメリカ留学の政治家・官僚・財界人・学者・言論人へと幅広い。
 人々は、目の前にいつもCIAもしくは、その協力者がいるという自覚を求められる。大変な時代なのだ。
<自由・民主失格のアメリカ>
 今回のスノーデン暴露で発覚したワシントンの不条理は、9・11を契機に暴走したものである。ネオコンの手口だ。
 アメリカン・リベラルが拒絶する手段である。この機会にオバマは、CIAその他、ワシントンの悪しき諜報工作機関を法的に規制する責任がある。ロンドンも、国際会議での各国代表のやりとりを全て盗み聞きしていたことも判明した。
 アメリカを真似たものか、それともアメリカがロンドンを真似たのか。いずれにしろ、スノーデンの勇気ある告発で、アメリカの自由・民主主義の旗がすたれてしまっていることが明らかにされた。
 大変な成果である。同時に、多かれ少なかれ各国とも、国家が犯罪に呑みこまれている実態を暴いている。国家が国民に対して人権侵害を行っていることでもある。
 G8やG20における深刻な課題として検討しなければならない。学会や言論界にも突きつけられたテーマでもある。
 「モスクワでは、いつも盗聴されていた」という会話を自民党国会議員から聞かされていたものだが、それも当たり前のことだった。日本もむろん、真似しているだろう。自由の価値観を堅持するのであれば、諜報や盗聴から手を引く法律を作る必要があろう。
2013年6月26日11時05分記