「スノーデンから漏れた情報は、米国にとって致命的なものだと思います」春名氏インタビュー

「「スノーデンから漏れた情報は、米国にとって致命的なものだと思います」春名氏インタビュー:岩上安身氏」  憲法・軍備・安全保障
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以下、連投。 7月11日(木)14時30分から、「岩上安身によるジャーナリスト・春名幹男氏インタビュー」の実況ツイートを行います。

元CIA職員・スノーデン氏の事件について。

春名氏「2年前に発覚したウィキリークスの事件をまず想起しました。そこで漏れたのはシークレットまで。しかし今回はトップシークレットまで漏洩しました」

春名氏「昨年10月、大統領のサインを経たサイバーの総合戦略を定めた文書が流出しました。これまで、米国はサイバーの分野で中国にやられっぱなしでした。そこで米国は『サイバーオフェンス』を策定しました」

春名氏「英紙ガーディアンとしては、これは米中首脳会談の前にやるべきだろう、と判断したと思います。ガーディアンは非常にリベラルな新聞。G8の直前には4年前のG20で英国諜報機関GCHQが盗聴していたとも暴露しました」

春名氏「スノーデン氏がどこまでガーディアンに文書を渡したのか、まだ分かっていません。米側の分析では少なくとも1000件は漏れているのではないかと。プーチンに米国が要請してきたということは、まだ文書があるでしょう」

春名氏「世界中に、海賊党"パイレーツ"が存在しています。インターネット上のアナーキズムです。アラブの春などでも活躍しましたし、反ACTAの動きとも連動していました」

岩上「ロシアと米国は、シリアをめぐって応酬していますが」

春名氏「シリアでは、アサド政権側が盛り返しているようです。反政府はスンニ派、政府側はシーア派と、宗教戦争の様相を呈しています。米国はそこまで介入する気はない」

春名氏「化学兵器は、政府側、反政府側、どちらが使ったのかはわからない状況です。もうオバマ大統領は、本腰を入れてシリア情勢に取り組む気はないのではないかと思います。他方、ロシアはそう簡単には手を引かないでしょう」

春名氏「スノーデンから漏れた情報は、米国にとって致命的なものだと思います。今回は、情報収集のメソッドまでもがすべて出てしまいました」

岩上「今回、アングロサクソン諸国、UKUSAで情報が共有されていたことが明らかになりました。これは非常にショッキングなことです。独、仏、そして日本は同盟国であるのも関わらず情報が共有されていませんでした」

春名氏「ドイツ、フランスが怒っているのは、G20で英国が盗聴していたのを、米国とシェアしていたことです。そしてそれを、外交に利用していました。これは明らかに外交上の信義違反です。すると米EUFTAも困難に」

春名氏「TPPの情報も漏れているでしょう。UKUSAには、米の他に、NZ、カナダ、豪というTPP参加国も入っています。TPPは秘密交渉だと言われていますが、情報はほとんど漏れているとみて間違いないでしょう」

春名氏「アングロサクソン・UKUSAは、戦中の連合国マイナス中ソです。しかしUKUSAも揺らいでいます。1980年代にNZで反核政権が出来、UKUSAを除名されました。UKUSAの加盟国とエシュロンの運営国はぴたりと一致しています」

春名氏「EUはずっと、エシュロンに抗議してきました。しかし日本は何も言わない。UKUSAにすり寄るのではなく、日本もしっかりとモノを言うべきではないでしょうか」

岩上「秋の臨時国会で、秘密保全法が可決されようとしています。『特別秘密』が指定され、国家の中枢に暗部が出来てしまいます。これを私は『ロボトミー化』と呼んでいるのですが」

春名氏「オバマ政権になって、米国は非常に秘密主義を取るようになりました。米国内でセキュリティクリアランスを持っている人間は、スノーデン氏も含めなんと140万人もいます。これはひどい

岩上「TPPは秘密交渉と言われています。しかし、一部の官僚と大企業は参加することができます。情報がフェアに公開され、世の中に流されていません。これは非常に不健全な状態ではないでしょうか」

春名氏「今、ビッグデータの時代と言われていますが、オバマ政権はそれを大量に集めています。人間を数量化し、枡で測ろうという考え方です。しかし人間一人ひとりは、そんな単純なものではありません」

岩上「G8、G20を盗聴していたということは、テロとは無関係だということだと思います」

春名氏「当時の英国のブラウン首相は、低人気だったので成果をあげようと、GCHQを使ったと言われています」

春名氏「米国の最初の盗聴機関、ブラックチェンバーというものがありました。日本もワシントン条約で情報を取られた。それを閉鎖したのは、当時の国務長官ヘンリー・スティムソン。その理由は『紳士たれ』というものでした」

春名氏「我々は、そう簡単に欧米的な思考に染まっていいのでしょうか。私の友人のインド人は『米国は最も奇妙な国だ。イラク戦争も誤りだった』と。TPPも最初から米国のペース。日本の存在価値を考え直す時期だと思います」

岩上「スノーデン氏が持ちだした資料の中に、米国がサイバー戦争をすでに想定しているという記述があると言われています。『交戦規定』まであるそうですが」

春名氏「NSAに、サイバーコマンドが同居しているのです。ボルチモア郊外に壮大なNSA本部があります。これまでNSA局長は中将でしたが、サイバーコマンドが置かれて以降、大将が局長になるようになりました。今はアレキサンダーが長官です」

春名氏「サイバー攻撃というのは、どこからの攻撃なのかということが分かりません。しかし技術力を高めることで、IPアドレスを特定できる。スノーデン氏はその研修を受けていました。相当な技術力を持っていると思います」

春名氏「2年前の2+2で、日米サイバー協力が定まりました。防衛省もサイバーに特化した部署を作ろうとしているようです。今後、米中ではサイバー軍縮が話し合われるようになるのではないでしょうか」

岩上「米国がサイバーで『交戦規定』を考えているということは、戦時と平時を分けているように思えるのですが」

春名氏「米国は、偶発的核戦争を防ごうとしています。プレビクタビリティ、予測可能性を重視しています」

春名氏「米・中・露がサイバー分野では圧倒的な力を持っているので、この3カ国でサイバーに関してパワーバランスを取りつつ、軍事化を避けなければいけないと思います」

岩上「戦争というのは、大量破壊というイメージがあります。他方、スパイというのは、個々を混乱させるというものです。サイバー攻撃というものは、敵国の基地に侵入するのでしょうかどのようなイメージなのでしょうか」

春名氏「イランのウラン濃縮施設を混乱させるため、ドイツのシーメンス製のコンピューターにウイルスを感染させました。その際は、ネット経由ではなく、USBでやったそうです。まだまだローテクな部分もあるようです」

春名氏「スノーデン氏によると、米国は1万回ほど外国にハッキングしているようです。しかし、それがどういう結果をもたらしているか、まだ何も明らかになっていません。これが明らかになると、大変な騒ぎになります」

岩上「ここにきて、EUが米国批判をトーンダウンさせているように思えます」

春名氏「ロシアは、スノーデン氏をまだトランジットにとどめているので、入国させていない、という建前を取っています」

春名氏「今回、米国の深刻度は明らかに大きいものです。ウィキリークスが漏らしたものは修復可能でした。スノーデン氏が次に何を出すのか、何を持っているのか。それにより米国を揺るがしかねません」

岩上「日本はどうしたらよいのでしょう。安倍首相は米国べったりです。グループAと呼ばれるジャパンハンドラーの言うがままです。他方、右傾化を示すことで、国際社会で非常に冷遇されています」

春名氏「オバマ大統領は、中国と話し合ってほしいと思っています。日中首脳会談の実現を望んでいます。その後、谷内正太郎氏が訪中した際、中国側は尖閣の領有権争いの認定と棚上げを要求しました。しかしそれは日本の弱い点です」

春名氏「米国も、尖閣の領有権争いを認めています。争いがないと言っているのは日本だけです。棚上げに関しても、最近、野中広務さんが証言しました。大平内閣の園田外相は棚上げの存在をテレビで話しました」

春名氏「日中首脳会談ができない。日韓首脳会談もできない。これは完全な孤立です。安倍首相は日本国内で人気を維持していますが、そのことに甘えているのではないでしょうか」

岩上「尖閣に関しては、常に米国の影がちらついています」

春名氏「日本外交は失敗しています。沖縄返還以降、尖閣も日本に返ってきたということになりました。最近、文藝春秋に記事を書きましたが、沖縄返還協定直前にニクソン大統領、キッシンジャー尖閣を日本に返そう、と。しかし、繊維交渉をしていた台湾はそれではおさまりませんでした。そこで米側は台湾側に配慮し、尖閣の領有権争いの存在を認定したのです」

春名氏「日本側は沖縄返還後に日中国交正常化をしましたが、その際、もっとしっかりやるべきでした。石油掘削の施設を作るですとか、その当時にやるべきでした。しかし、田中角栄首相は棚上げを確約しました」

岩上「試掘もせず、今になって棚上げがないと言い出すなど、日本側は外交の信義に反していると捉えられても仕方ないでしょう」

春名氏「日本国内のナショナリズムの高揚に乗じて総理になった方が外交をしていることが原因でしょう」

春名氏「大手商社の方とも話しましたが、これはもう理解不明です。尖閣に石油があるといっても、日本はこれまで一度も掘ってないわけです」

岩上「ただ、ケンカの準備をしているだけですね」

春名氏「外交上の議論は、5,6時間やります。習近平キッシンジャーの会談の議事録などはすごい。今回もオバマ習近平は8時間も議論しました。外交から歴史、芸術、スポーツまで議論します。しかし日本にそのような資質のある政治家はいないのです」

春名氏「安倍首相はアーミテージラインを非常に頼りにしているようですが、すでにワシントンでは力を持っていません。そもそも共和党ですし、政権に影響力はもうないんです。米国にいるのは彼らだけではありません」

春名氏「沖縄に関して。1940年のカイロ会談で、ルーズベルト蒋介石に『沖縄はいらないか』と言いました。蒋介石は『米中の共同管理なら…』と事実上断りました。今、中国が沖縄に言及しているのは独立の動きがあるからです」

春名氏「中国側は、沖縄で盛り上がる独立論を利用して、日本側に揺さぶりをかけているのです。そういった外交上の意図を読み取る能力が、今の日本にはありません」

岩上「先日、主権回復の日式典を政府が主催しました。この時期、沖縄を独立させようという会が開かれました。しかしその会は琉球の血統を引いていなければならないと。この背景には在特会が沖縄の首長にヘイトスピーチをしたから」

春名氏「沖縄は最前線です。日本政府はまず、沖縄を守らなければなりません」

岩上「その沖縄の人々にオスプレイを押し付け、その挙句、『死ね、売国奴』などヘイトスピーチを浴びせるなど、ありえません」

岩上「今、参院選まっただ中です。TPPがあり、憲法改正があります。先日、安倍首相は立憲主義からの離脱すら宣言しました。自民党の圧勝が予測されていますが、選挙後の日本社会を、どのように見ていらっしゃいますか」

春名氏「日米首脳会談の開催にかなり時間がかかりました。G8もオバマ大統領と立ち話を少しできた程度でした。官邸と外務省は必死に取り繕っていますが、日米同盟すらも危うい状況にあると思います」

春名氏「民主党政権発足時、米国と対等な関係を、と言いましたが、それを自民党は笑って見ていました。しかし、今の安倍政権の日米関係が、健全なものなのかどうか。ブレーンがしっかり勉強しているのでしょうか」

春名氏「米国の対日投資と対中投資は格段に違います。米国と中国の経済上の相互依存関係は非常に高まっています。つまり、米国がそもそも日本を守る理由があるのかどうか、考えなければいけません」

春名氏「これから中国と対立していくことなど非常に難しいと思います。中国を封じ込めてどうするのでしょうか。日本の企業にも大きな影響が出ると思います。日本の弱みは、米国の大統領をより好みできないことです」

春名氏「これから必要なのは、東アジアで文化的なリードをしていくことです。この点は中国は弱いと思うのです。孔子の教えや仏教を忠実に守っているのは日本です。弱肉強食に対抗できる文化を日本は持っています」

春名氏「外務省も『人間の安全保障』ということをやっています。これに思想的なバックグランドをつけることが必要です。鈴木大拙が『自由』と『フリーダム』は違うと言いました。『フリー』とは『無い』というネガティブな言葉」

岩上「自民党改憲案は、大日本帝国に戻すことを意味するようです」

春名氏「天皇陛下ご自身が、一番反対されると思います。昭和天皇靖国神社への参拝をやめたのは、A級戦犯が合祀されていることが明らかになったからです」

春名氏「安倍首相は、自民党憲法改正調査会には加わっていないようです。上滑りでものを言っていて、自民党の事務局のほうでも困惑していると聞いています」

春名氏「東アジア共同体構想という考え方は、間違ってはいなかったと思います。しかしまずは、歴史的・文化的な問題を考えるフォーラムから始めるべきではなかったでしょうか。日本の文化的力をしっかりアピールすべきでした」

以上で実況を終了します。長時間にわたりご視聴いただきましてありがとうございました。アーカイブはこちらから→ http://bit.ly/cUKsLS