本澤二郎の「日本の風景」(1383)

国連事務総長安倍内閣を叱り飛ばした>
 8月26日のソウルで、日本に対して異例な発言が飛び出した。国際社会を代表する国連事務総長が、日本政府を叱り飛ばしたからである。国際社会の恥さらしの日本政府という度し難い安倍内閣に、しびれを切らして発したものだ。安倍内閣歴史認識が、世界を混乱させている現状を「遺憾だ」と非難した。異例中の異例発言である。ハン基文事務総長は記者会見で、鬱積していた怒りを爆発させた格好である。「中国・日本・韓国は、アジアのみならず世界的に重要な位置を占めている。それでいて最近、歴史認識などで緊張関係にある」「歴史をどう認識すれば善隣友好関係を維持できるか、日本の政府や政治指導者は深い省察が必要だ」などと叱責した。



<戦後68年経っても反省・謝罪出来ない日本政府>
 国連事務総長として異例発言である。国連は世界を代表している。そこの責任者が日本政府を叱り飛ばしたのだ。こんなみっともないことが他にあるだろうか。
 ワルの子供に先生が、ついに爆弾を落としたようなものである。通信簿に落第生の判定をしたようなもので、家族にとってこんな恥ずかしいこともない。国際社会で落第したことを意味する。
 安倍はそれを予想していたかのように、中東の小国へ雲隠れしていた。放射能の福島は地球に大迷惑をかけている。それを放り投げての敵前逃亡もいいところである。戦後68年、それでも本気で侵略戦争の反省も謝罪もしない。反倫理国家から抜け出せない安倍・国家主義政権なのである。
<NHKは批判的に報道>
 ハン基文事務総長発言は、常識的な発言である。誰も異論など無いだろう。
 だが、NHKはことさら、事務総長が中立的な立場を放棄して、一方の側から発言した、と批判的に報道した。たまたまジムで運動しながら、NHKの無責任安倍寄り放送を目撃してしまった。NHKも安倍の僕(しもべ)に成り下がってしまっていた。
 国連事務総長の発言は、偏見とは無縁の国際常識である。日本人の多くが共有している認識である。NHKこそ一方、すなわち安倍・国家主義に肩入れしてしまっていた。
<戦前が踊る右翼雑誌>
 普段は縁の薄い、右翼の雑誌を退屈まぎれに目を通してみた。過去を反省・謝罪が出来ない小数右翼の8・15特集が出ていた。今も時代錯誤の価値観が幅を利かせていた。
 筆者が勇気ある政治家と評価した人物が、なんと「天皇の大御心(おおみごころ)」などと、およそ現代人が聞くと仰天するような尊王論を披歴していた。これには参ってしまった。6歳で敗戦を迎えた軍国少年は、いまも6歳のままなのだ。それでいて国会議員という。

 イタリア人にも右翼はいた。元日本大使館勤務の外交官の現在は、日本の大学で教壇に立っている。このイタリア人右翼は、敗戦時に進駐してきたアメリカ兵のチョコレートを拒否した少年だった。

 筆者はクリスマスに進駐軍基地でチョコレートを、喜んでもらった少年だった。水飲み百姓だった父が赤紙1枚で兵隊に取られ、残された母は、食うや食わずの中で、子供3人を養うという厳しい生活を強いられてきた。敗戦で猫の額のような土地を、占領軍政策のお陰で手に入れることが出来た。無数の小作農と民主主義を望んでいた善良な知識人は、敗戦を喜んだ。その先に米兵のチョコレートがあった。

 また、歴史を知らない極右女性教授は「神やぶれたまわず」という不気味な歴史認識を披歴していた。神風は生きていると本気で信じ込んでいる。薄気味悪くなって、目を通すのを止めてしまった。
 チョコレートを拒絶したイタリア人教師発言の見出しには「大東亜戦争は今も続いている」とつけて反連合軍を煽っていた。右翼・国家主義は日本の安倍だけではない。その共通項は、戦争に対する反省も謝罪もしない点にある。また繰り返すぞ、なのか。

この右翼雑誌は敗戦で、日本の伝統・文化何もかも喪失した。明日へのビジョンがない、と勝手に決めつける。右翼はリベラル憲法を読んでいない。曲解している。日本国憲法は、21世紀日本の針路を明確に打ち出している。平和主義・国際協調主義だ。米国の核の傘を飛び出し、隣国に謝罪するのである。そうして、平和の旗を高々と掲げて、世界をリードしてゆく。そこに日本の生きる道がある。これこそが崇高な日本ビジョンである。
<麻生ナチス発言詳細>
 その逆を行こうとしている安倍の日本政府だ。この右翼雑誌にも、麻生ナチス発言の詳細が載っていた。転載しておこうか。
 「僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか」(注、麻生は皇室向けの学習院で学んでいる。日本独立から皇室も立ち上がったということか)
 「昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつからか騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら中国も騒がざるを得ない。韓国も騒ぎますよ。だから静かにやろうと」(注、責任を他に押し付けるのもナチス流かもしれない)
 「憲法は、ある日、気付いたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。誰も気付かないで変わった。あの手口を学んだらどうかね」
 こっそりと、隠れて、隠ぺいして、がナチス流というのである。これは卑怯者の手口である。右翼の大好きな王道ではない。安倍―麻生内閣の正体を、麻生自ら暴露しているではないか。

 恥ずかしくないだろうか。日本人としては本当に恥ずかしい。こんな輩が日本の代表というのである。狂った日本人を裏付けている。安倍も麻生も、祖父は戦後のリーダーになった。日本は何も変わっていない。ごく一部の家族が政権をたらい回ししている。こんな民主国家は、世界に存在しないだろう。強いて挙げれば北朝鮮ぐらいだろうか。

 国家主義の日本に対して、国連の事務総長が叱り飛ばしたことに、何人の日本人が目を覚ますだろうか。
2013年8月27日7時30分記