プーチン・インタビュー、シリア問題などについて語りました

プーチン・インタビュー、シリア問題などについて語りました。:関根和弘氏」  憲法・軍備・安全保障
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プーチン・インタビュー

ロシアのプーチン大統領が3日、本日開幕したG20を前にAP通信とロシア国営テレビ「第1チャンネル」の共同インタビューに応じ、シリア問題などについて語りました。

いくつか紹介したいと思います。

ロシア語の全文はこちらです→http://www.president.kremlin.ru/news/19143

アサド政権による化学兵器使用疑惑についてプーチン大統領は「(化学兵器が使われたとする場所で)何が起きたのか正確な情報はない。政権側が使ったとされるものが化学兵器なのか、単なる化学的な有害物質なのか、最低限、国連調査団の調査結果を待つことが必要だ」

また、プーチン氏は「もし政権側による化学兵器使用の証拠を誰かが持っているのなら、国連安保理に提出され、確認されるべきだ。そしてそうした証拠は、うわさや諜報などを使って特殊機関からもたらされた情報に基づくべきではない」

と発言。暗に米国に証拠の提示を求めました。

さらに「米国内にも、政権が出した証拠は確たるものではないと考える専門家もいる。反体制派が軍事介入を誘発させる目的で事前に計画した挑発の可能性は捨てきれない」と述べ、武力行使を目指すオバマ政権を牽制します。

AP通信記者は「(化学兵器が使われたとする)動画を見たでしょう?中毒症状で倒れる子どもたちが映し出されました。あなたはどう思うのですか?」

と聞きます。これに対し、プーチン氏は「ひどい映像だった。問題は誰が何をやったかだ。誰が悪いのか。動画はそれに答えていない」

続けてプーチン氏は「こういう意見もある。私たちも米政権もよく知る武装勢力が作った動画ではないかというものだ。つまり、特別な残酷さで知られるアルカイダとの関係ある勢力だ。動画には親、女性、看護師はいなかった。どういうことか?調査が必要だ」と話します。

「アサド政権がやったとする確固たる証拠が出たらロシアはどうします?武力行使に合意しますか?」

との質問に対し、プーチン氏は「それは排除しないが、原則的な状況を見て欲しい。主権国家に対する武力行使の承認は国際ルールに従い、国連安保理だけに与えられたものだ」

「独立主権国家に対する武力行使を正当化するいかなる、ほかの動機、方法も容認できない。侵略のような別のやり方は許されない」

プーチン氏は言いました。

さらにAP記者は「誰がやったのかは私も感心があります。(もしアサド政権がやったとしたら)ロシアはどうします?距離を置きますか?武器供給をやめますか?」

と聞きます。プーチン氏は「誰がやったか、ロシアが客観的な証拠をつかんだら、リアクションを取りますよ」

「今何をやるかを言うことは、政治的には正しくありませんね。でもこれだけは言えるのは、ロシアは原則的な立場を取るということです。それは人類に対する大量破壊兵器の使用は犯罪だということです」

「しかし、別の問題もあります。もし反体制派が使っていたことが判明したら、米国はどうします?反対派の支援者たちはどうしますか?武器供給をやめますか?彼らに対して武力行使をしますか?」

米国などには痛い切り返しです。この辺はプーチン氏、もっともだし、上手です。

AP記者はさらに「私たちは歴史的評価に耐えうる対応をしなければならない。自国民に罪を犯すアサド政権を支持する側として評価されるかもしれないことが怖くないですか?」

と聞きます。これに対し、プーチン氏は「ロシアはアサド政権を守っているわけではありません」

「ロシアが守っているのは別のものです。国際ルールの原理・原則です。現代の国際秩序を守っているのです。あなたは米国のケリー国務長官化学兵器はアサド政権が使ったと考えていると言いましたね。かつてブッシュ政権イラク化学兵器を持っていると白い粉が入った試験管のようなものを見せて国際社会を信じ込ませた。だがすべて根拠薄弱だとわかった。でもそれを軍事行動に利用し、米国内でも今日、それは失敗だったと言われている。それを忘れましたか?」

AP記者はさらに質問します。「今出されている証拠ではあなたは受け入れられないと、何だったらあなたを説得できるのですか?」

プーチン氏は「詳しい調査と明らかな物的証拠ですね。誰が使用し、どんな物質だったのかを証明するような。それから私たちは対応を考えます」

まだAP記者の質問が続きます。「ロシアはシリアに武器供給を続けるのですか?」

プーチン氏、「もちろんです。私たちは合法的な政府と関係を結び、しかもいかなる国際ルールに違反していません。シリアへの武器供給は国連による制限もありません」

ロシア国営テレビ「第1チャンネル」の記者は例の武器についても聞きます。「(地対空ミサイル)S−300について確認させて下さい。すでに供給された、されていないという話があります」

プーチン氏、「S−300は最新ではありません。米国の『パトリオット』よりはいくぶんいいでしょうが(続く)」

「ロシアにはすでにS−400があり、S−500の製造にも取りかかっています。そして、S−300について言えば、シリアとの間で供給契約はあります。すでにその一部は供給しました。しかし、すべて供給しているわけではなく、一部は停止しています(続く)」

「しかし、もし何か国際ルールに違反するようなことが実行されれば、そのような微妙な兵器の供給も含めてロシアは対処を考えます」

ロシア国営テレビ「第1チャンネル」の記者は「多くの国家首脳がシリア内戦に干渉しないと宣言しました。同じようなことをあたなも言いますか?」

プーチン氏は「現在、海外にいるロシア軍は旧ソ連諸国の2カ所の基地以外には駐留していないことを言っておきます。国連平和維持時部隊への参加はありますが」

「それは素晴らしいことですよ。ロシアは当然、どんな内戦にも介入しないし、するつもりはありません。武力介入しないと決めた国々について言えば、正直、驚いています。私は西側社会はみんな全会一致的な形で、まるでソ連時代の共産党のように賛成すると思いましたから」

「しかし、そうはならなかった。主権を大事にし、状況を分析し、勇気を奮い起こして国益に照らして意思決定し、自分の立場を貫徹する人がいるということですね。とてもいいことですね。まさに、世界は本当に多極性によって強化されているということですね」

ロシア国営テレビ「第1チャンネル」の記者はさらに「シリア問題はG20でも取り上げますか?」

プーチン氏、「G20はかなり前から準備され、テーマについては関係国と話し合ってきました。その約束を破る権利がロシアにあるとは思っていません。G20は世界の経済問題を話し合う場です。しかし(続く)」

「もちろん、シリアを取り巻く状況は厳しく、意見の対立があり、この問題について私たちはさしあたり合意できていません。20カ国の首脳が集まるんです。当然、その場を利用できるし、議論に時間を割けますよ。押しつけるつもりはありませんが、提案するつもりです」

この後経済の質問が少しあってまたAP記者がシリア関連で質問します。「オバマ政権が武力行使について議会の承認を取り付けたらロシアはどうします?シリア側につきますか、それとも関係を絶ちますか?」

プーチン氏は「あなたはメディアの人ですか、それともCIAの人?」

「別の機関にすべき質問をあなたは私に聞いてますよ。それはまさしく状況が第1、第2、第3と変化したときのロシアの計画なのです。武力行使がある場合、ない場合、それぞれに私たちが何をするか、私たちなりの案はあります。でもそれについて話すのは時期尚早でしょう」

AP記者はこれに対し、「わかりました。とはいえ、オバマ氏訪問について聞きます。実際このインタビューも米ロ会談の結果がテーマになるはずでした。オバマ氏が会談をキャンセルして失望していますか?」

プーチン氏は「ええ、もちろんです」

オバマ氏にはたまっている両国の問題について話し合う可能性がありましたから、ぜひモスクワに来て欲しかったです。しかし、キャンセルが破局を意味しているとは考えていません。実際、政府間ではコンタクトはありますからね」

「米政権はロシアの態度にいらいらしているでしょう。でもそれはいかんともしがたいです。いらいらせずに、我慢をため込み、解決を探すことにともに取り組むことができたらいいんでしょうけどね。オバマ氏はとても興味深い人で実務的、敏腕だ」

プーチン・インタを中断して、テレビ中継でオバマ氏を迎えるプーチン氏の映像が流れたのでお伝えします。

両者とも言葉も交わし、笑顔もありました。

プーチン氏の方が笑顔は多いように思いました。

ここは大人の振るまいといったところでしょうか。

「もしG20の中ででもオバマ氏と会えるのであれば、それは有益だろう。いずれにしても私たちはとても多くの問題に取り組んできたのですから。北朝鮮やイランに関する問題です」

AP記者、「オバマ大統領と話すときのあなたのジェスチャーは退屈そうだ、という意見があります」

プーチン氏、「各人それぞれのジェスチャーがあるということでしょう。政治、経済、軍事、マスコミに取り組む人たちはそれぞれ自分の最もいい部分を見せようと頑張りますから」

AP記者、「米ロ関係はなお『冷戦』状態だと思いますか?」

プーチン氏、「部分的にはそうですね。例えば対ソ連という目的で米国の諜報、軍事分野で働いていた人たち、逆にソ連で対米国という目的で同様の分野で働いていた人たちの多くはまだそうした対立軸にいるでしょう」

「しかし、高いレベルの政治の場では、そうではありません。今両国が抱えている問題は理解の違いから生じているのではなく、共通の目的を達成するための方法が色々あるという問題なのだと思います。妥協点を見つけ、相手の意見を尊重する能力があるか、ないかということです」

性マイノリティーへの偏見を助長するとして外国から反発を食らっているロシアの新法「同性愛宣伝禁止法」

関連で第1チャンネル記者が聞きます。「オバマ氏はロシアで性マイノリティーの人たちと会うとのことです。これは今の米ロ関係を表しているのではありませんか?」

プーチン氏、「アメリカ外交の実践ですね。市民社会の支援を見せる、という。悪いことは何らありませんよ。逆に歓迎です。ロシアで起きていることを理解し、あらゆる断面を見るためにね。外交部門、大使館、情報機関が客観的にすべて伝えてくれるのであれば、ですが」

第1チャンネル記者、「かつて『リセット』と言われた米ロ関係、今は『凍結』『冷え込み』ですか?」

プーチン氏、「違います。単に自国の利益、国際間、2国間の問題を解決する原則を守るということです。それは簡単ではありません。緊張感がある共同作業です」

「そうです、それはバラの花で覆われたようなものではありません。難しい作業であり、時として骨の折れるもので、それ以上でも以下でもありません。オバマ氏は何もロシアに優しくするために米国民に選ばれたわけではないでしょう。私もそうです」

「私たちはともに取り組み、議論し、私たちも人間ですから時にはいらいらします。しかし、もう一度繰り返しますが、グローバルな利害関係は、たぶん、共同の解決にとっていい土台となるはずです」