本澤二郎の「日本の風景」(1414)

<狂気の国家主義が暴走する秋>
 安倍内閣と黒田日銀によって急増刷される円安政策で、いよいよ秋の狂乱物価高が家計を直撃する。他方で、サラリーマンの年収は落ち込み、格差も拡大している。そんな中で、日本のナショナリスト首相は、国連の舞台で金が無いのにバラマキ公約、軍事力の役割を担う姿勢をひけらかして、韓国と中国の反発を買っている。議会はそれを非難するどころか、長期休暇の真っ最中で、安倍の狂気を放任。裁判所(神戸地裁)は106人の死亡事故裁判に対して、経営陣を無罪放免にした。3権の狂いは、いかんともしがたい。



<積極的平和主義>
 改憲軍拡論者の安倍・国家主義者が国連で暴走した。なんと「積極的平和主義」という言葉を乱発して、世界のモノ笑いになっている。
 1000兆円借金大国の日本に対して、世界は財政の再建を求めて、日本沈没を食い止めようと必死だ。それなのに安倍は「シリア支援に6000万ドル」「女性支援にも30億ドル」と景気のよいバラマキ方針を打ち上げて、各国の関心を集めようと躍起となった。同時に、日本国民も初めて聞く「積極的平和主義」という日本語を連発した。

 言葉とは裏腹に「軍事的役割を担ってゆく」「集団的自衛権を行使してゆく」と宣言したものだ。自衛隊武力行使を地球規模でやりたい、とわめいたのだ。日本国憲法を踏みつぶす狂気の信念の披歴なのだろうが、これを国際社会が喜ぶわけがない。
 それにしても、夫人を伴ってのNY訪問で安倍の狂気が、暴走するなどと言う事態を、誰が想像したであろうか。従軍慰安婦問題や侵略戦争を肯定しない安倍は、女性重視と平和主義という言葉で、国際社会を誤魔化そうとしたのだ。
<金と武力で過去を払しょく>
 底が割れているナショナリストの手口は、正にヒトラー顔負けであろう。しかし、安倍発言をまともに受け止める者はいないだろう。現地にいないため、安倍演説の反応を国民は正確に知らないが、恐らく冷ややかではなかったろうか。それとも拍手喝さいを浴びたのだろうか。

 現に形だけの20分程度の記者会見は、2人の同行ヒラメ記者と外国人2人からの4問しか認めなかった。事務方は、安倍の一方的宣伝の場にしたことで、安堵しているであろう。
 日本の新聞テレビは伝えようとしないが、金と武力行使も、との安倍メッセージで、過去を正当化しようとの魂胆は見抜かれていたであろう。
<米ジャーナリストは「国家主義の軋轢」と指摘>
 珍しくNHKは、アメリカの元ABC国際部長をつかまえて、安倍の積極的平和主義と日中関係について感想を聞きだしていたのが、唯一日本報道で注目を集めた。
 彼は「日本に国家主義の政権が誕生、それが日中の軋轢となっている」とのまともな分析をした。これが正しい。アメリカのジャーナリストは、安倍の二枚舌に誤魔化されてはいなかった。彼はまた「日中の経済関係の結びつきが、問題の解決につながる」との見通しも示していた。
 中韓との軋轢を意図的に作り出している安倍内閣を、ワシントンの政府・議会・言論界は正確に分析しているのである。「安倍は国粋主義という狂気で舞いあがっている」と見ているのである。
<司法も追随>
 NYでの安倍の暴走に比例して、日本の司法界も9月27日、これまた暴走判断をして国民に衝撃を与えていた。そのはずで106人の死者を出した福知山線脱線衝突事件に対する業務上過失致死傷の罪を、神戸地裁JR西日本の井出被告ら歴代3社長に経営責任はない、と無罪判決を出した。

 こんなふざけた判決を誰が容認出来ようか。「106人の死に経営責任がない」という狂気の判決をする日本。法の下の平等は形骸化している。
 これが諸外国であれば、市民が暴動を起こす事態であろう。どうして日本人は、大事な場面で立ち上がらないのか。ここが不思議でならない。ズバリ、法曹界の腐敗はひどすぎないか。
 権力・経営陣に甘い司法を、改めて見せつける一番となった。司法の独立も絵に描いた餅であろう。
JR西日本の井出被告ら経営陣を無罪放免>
 何をしても、経営者に責任を問えない日本の法律・司法を世界に知らしめたことになるが、こんな日本でいいのだろうか。

 信じがたい日本の司法である。ヒラメ裁判官の典型的判決なのだ。「国家主義の軍門に下ってしまっている」とあえて指弾したい。日本の法治も病んでしまっている。専門家は「法人罰を制度化せよ」などと、あらぬ法律論で民衆を騙している。それを批判しない新聞テレビである。
<議会は東電放射能事件に参考人で誤魔化す>
 政府も司法も狂っているということは、議会も右にならっていることになろうか。同日休会中審議で開催された衆院経済産業委員会に、ブエノスアイレスでの安倍の大嘘発言を確認するため、東電の広瀬とかいう社長が姿を見せた。彼の嘘つきも定評がある。従って、参考人ではなく、証人喚問にすればいいのだが、3・11以後の国会は決まって嘘つきも認められる参考人招致なのだ。
 そのため、広瀬は安倍の発言に歩調を合わせて、この日も嘘を連発した。放射能汚染水を海に垂れ流してきた事実さえも、突き止められない与野党議員ばかりなのだ。そもそも、彼らの全てに毒が回ってしまっている。

 要するに、司法立法行政が、そろって嘘をついていることになろうか。中国でこんな悪辣な事態が表面化すれば、ネット情報が沈黙していない。政府も党も動くだろう。そうして公正が保たれる。筆者は中国の方が、はるかに民意が政治に生かされている社会だと思うのだが。

 異論があるのであれば、この危機的な状況下、まずは長期の国会の休暇を止めさせてはどうか。そして、安倍の積極的平和主義というまやかしを徹底追及してもらいたい。合わせて、ヒラメ裁判官を罷免させる活動を、議会内でさせてもらいたい。
 戦後否定した国家主義を排除する活動に、議会も司法も行政も必死で汗をかいてもらいたい。今はその大事な時である。
2013年9月28日8時50分記