本澤二郎の「日本の風景」(1427)

<空前の復興利権の行方>
 NHKなど日本の新聞テレビは、隣国の内政の課題などに焦点を当てて「大変、大変」とわめくのが大好きである。日本は放射能汚染と財政破綻寸前で「もっと大変」だというのに、そのことをしっかりと報道しない。改憲軍拡に警鐘を鳴らそうとしない。空前の東北復興予算の使い道について、不当な不透明な点を追及して、それを納税者に伝えようとはしていない。莫大な復興利権(がれき・除染・汚染食品・汚染水処理・廃炉など)に蓋を懸けている。昨日、事情通が途方もない仮設住宅利権のおぞましい実態を明かしてくれた。国民に奉仕しない新聞テレビに代わって紹介する価値があろう。



仮設住宅1戸当たり400万、600万円の利権>
 事情通の説明を100%信じる能力はないのだが、ジャーナリストの勘で「そうかもしれない」と思う。それは東北の仮設住宅利権のことである。
 大量の仮設住宅のコストは決して高くない。作れば作るほどコストは下がる。しかし、復興予算にそうした配慮はない。そこに莫大な利益が生まれる。空前の利権の山となる。
 是非興味のあるジャーナリストは詳細に取材してもらいたいのだが、事情通は「1戸あたり400万から最大で650万円の利益が出ている」と断言する。これを誰が、いつ引き抜いて、懐に入れているのか。
 仮設の住宅一つとっても、莫大な利権が生まれる復興予算というのだ。
<米国製はコスト50万円前後>
 仮設住宅の1戸当たりの経費・予算は、岩手県で750万円、福島600万円。コストは大量生産のため、下がり続けて米国製だと50万円前後のものもある。50万円+αでいいところに、政府は750万円、600万円の値段にしている。事情通は「せいぜいコストは高くて200万か300万円。予算の半分以下。アメリカ製は50万前後だ」とも指摘している。
 莫大な借金予算に国民は泣く泣く復興経費を支払っている。しかし、予算を編成する財務省や復興庁の役人は、そんな事情など無関係というのであろうか。まともな活字媒体が存在するのであれば、徹底取材して明らかにしてもらいたい。議会で追及してもらいたいものだ。
 一体、誰がこの利権の山を吸い取っているのであろうか。会計検査院も買収されているのであろうか。壮大なる腐敗ではないか。
<まともな政治は空き家利用・放射能回避>
 日本には沢山の空き家がある。被災者に提供すれば一石二鳥である。
 空き家は家の価値を下げる。人間が住んで初めて家らしくなる。その空き家に、被災者に住んでもらうことが、この国にとって最善の道だった。福島を離れることによって、被曝から逃げることも出来た。だが、そうしなかった。仮設住宅利権へとのめり込んだ政府である。
 岩手県などでは、日本プレハブ建築協会を通して注文したという。結局、そうすることで「日本だけで調達困難」との口実のもとで、わざわざ米国から輸入した。米国にも750万円も支払ったものか。一説には「アメリカの圧力があった」という。トモダチ作戦の裏事情なのだ。

 汚染水処理などに絡めて米仏も、復興利権に食らいついている。トラブル続きの、高額な東芝製汚染水除去装置も話題を集めている。核爆発を起こした3号機は東芝だ。焼け太り東芝に批判が集まっている。
民主党政権は19兆円>
 復興予算は民主党政府のもとで19兆円だ。巨大すぎて、復興以外の分野に横流すという事件が発覚して、国民を驚かせた。東北の不幸を悪用した同党政府に有権者は失望するほかなかった。
 それでいて港湾改修はほとんど進捗していない。それは自民党自公政権になっても変わらない。安定した漁業はまだ先のことである。放射能汚染した広大な地域の除染も、かなりいい加減であることがわかってきている。
 明るい東北は夢のまた夢ではないか。真実を伝えない新聞テレビによって、多くの国民は3・11を過去の問題としてみつめている。
自公政権は25兆円>
 自公政権になると、復興予算は25兆円に跳ね上がった。それでいて大企業向けの復興増税を前倒しする安倍内閣だ。この国家主義政府は、やることなすこと全て財閥の意向を反映させている。
 他方で、新聞テレビ報道を操作して、民意をあらぬ方向に引きずっている。それに振り回される無知な市民ばかりである。
 25兆円というと、日本国民が収める年間税金の半分以上である。こんな国を世界で探しても見当たらないほどである。「不沈空母」と合唱する専門家もいるようだが、年収40兆円国の借金1000兆円は、財閥の金300兆円を全て国が分捕っても不足する。
 財政は破綻している日本である。その一方で、財閥・政治屋・役人がこぞって復興利権を食い漁っている。どう考えても狂っている。
東京五輪で復興ピンチ>
 政府は、新聞テレビを動員して2020年の五輪宣伝に躍起となっている。これによるマイナス効果を全く考えない。東北復興が遅れるだけでは済まない。日本沈没を心配する学者も現れてきている。
 血税を利権にしてしまう役人と政治屋、背後を操る財閥という日本の悪しき腐敗構造を断ち切るしかない。その主役は国民である。主権者だ。
 まともな政党・政治家が生まれる日本でなければ、この国の前途は暗くなるばかりだ。行財政改革を回避して、ひたすらバラマキ利権予算を続行する安倍内閣が、ずっと継続することはない。
<利権政治で国亡ぶ>
 善良な知識人は「日本は落ちるところまで落ちないと駄目だろう」という悲鳴をずっと聞かされてきた。空前の借金で持ちこたえてきたのだが、それも限界だ。そうして消費大増税へと突き進んでいるが、これが新たな不況へと追い込む。
 そうした中で、為政者は利権政治と改憲軍拡へと舵を切ってしまった。戦争法制を臨時国会に上程するという安倍内閣だ。「堕ちるところまで落ちる日本」へと、日本沈没は現実味を増してきた。
2013年10月12日9時20分記