本澤二郎の「日本の風景」(1491)

<石原・維新SOS>
 「石原があわてふためいている」と事情通が連絡してきた。例の徳洲会事件にからんでだ。「とうとう年貢の納め時だ」と指摘する一方で、他方の検察情報は「官邸が別の人物に捜査対象を向けた」と錯綜している。猪瀬辞任が固まる中で、特捜部の本丸狙いは徐々に具体化していることも間違いない。東京地検特捜部をけん制する官邸と法務検察のせめぎ合いも、新たな話題を提供している。



<結いの党と政界再編へ>
 みんなの党の動きともからんでいる。元幹事長の江田が、渡辺を袖にした政界再編が始動を始めた。安倍に懐柔された渡辺と離縁した江田の作戦には、とうに石原・維新の崩壊を前提に練られたものだろう。維新の幹事長・松野の動きも素早い。
 右翼派閥の福田派を離脱してリベラルの三木と接近、党3役となって、その実力を発揮した父親の松野頼三を思い出してしまう。そういえば、秘書の平井がたまにセガレの事務所に出入りしている、との噂を聞く。平井参謀の智恵かもしれない。
 極右・石原をとうに見限っているのだろう。そこへ降ってわいた徳洲会事件である。誰しもが、石原と徳田の深い仲を知っている。「石原が都知事に出る時、4億を渡したと徳田から聞かされている」という直接情報を、筆者の耳にももたらされている。
 一時、石原との新党結成を考えた亀井も、彼の正体に気付くと、さっと手を引いてしまった。
新右翼に翻弄された異様な猪瀬都政
 それにしても、猪瀬の行動は異様である。事情通は「およそ猪瀬に警戒心がない。5000万円を出すと約束した虎雄、そのカネを用意した次女、5000万円を直接猪瀬に渡した息子の毅議員、さらに5000万円の返却先が虎雄のカミサン。こんな不用意なカネのやりとりも珍しい。情報の拡散もいいところだ」とあきれかえる。
 そして、これに輪をかける新右翼の跋扈だ。常に、この怪しげな人物と行動を共にしている猪瀬だ。「新右翼を結びつけた人物は石原ではないか」という疑惑も出てきている。「問題は、このチンピラ右翼は純粋右翼ではない。広域暴力団山口組にまとわりついてきた問題人物。公安調査庁がマークしてきている人物だ。そのものに全てを委ねている猪瀬の異様な行動も、知事失格である」「公安調査庁の責任も大きい。こんな役所が、特定秘密に手を出すと、国民の人権は危うい」などとも指摘した。
 猪瀬は本も書く。この真相部分を告白すると、なかなか見ごたえのあるベストセラーが誕生するかもしれない。「都庁伏魔殿」は石原時代に構築、それが猪瀬によって、さらに深刻さを増してきている。
 「最近支払われた都知事のボーナスは総理大臣と肩を並べている。都議や役人の給与も突出している。都民も目を覚ます時だ」との声も噴き上がってきている。
<知事辞任で打ち止め求める官邸?>
 自民党は、五輪利権に絡めて猪瀬辞任を突きつけている。「辞任すれば、東電病院売却にからむ贈収賄事件をチャラにしてやる」とのメッセージと見られている。
 徳洲会事件に関連する使途不明金は100億円とされてきている。事情通は「パンドラの蓋が開いてしまった」といい、猪瀬事件は「雑魚にすぎない」と決めつけている。
 「官邸は蓋をしようと必死だ。検事総長に圧力をかけている。しかし、現場はやる気満々。もはやブレーキは利かない。こんな宝の山は初めて。しかも、証拠がぞろぞろ出てきている」「国民の信頼を失ってしまった検察庁にとって、汚名返上ができる格好の事件。手を緩めることは出来ない。もし、政治に屈したら、その怒りが再び検察に降りかかることになる」
 官邸と法務・検察の動向に国民は注視している。
<谷垣法務大臣の正念場>
 本来、官邸の主は安倍ではなく、法務大臣の谷垣である。彼は司法試験を合格した弁護士である。法律に詳しい。安倍も下手に動けない。「官房長官周辺の工作に目を光らせている」との情報も漏れてきている。

 「安倍は、谷垣を窓際大臣にしたつもりだったが、徳洲会事件で一躍、頂点に立たせてしまった。谷垣本人もびっくりしているはず。彼は相次いで死刑囚の執行を決断して、その意志の強さを官邸に向けて発信している」とのうがった分析も、なるほどと思わせる。
 彼の参謀をよく知っているが、なかなかしっかり者だ。
 安倍も菅も、おかしな行動は出来ないらしい。それは検事総長にも言える。犯罪の証拠さえあれば容赦なく捕まえる谷垣、というのだ。一見、ソフトな印象を与えている谷垣も、京都の反骨魂は失っていない。同じ京都でも、公明の太田とは違う。
 谷垣もまた、政界ドブさらいという乾坤一擲の勝負を目の前にして、正念場を迎えていることになろうか。
2013年12月19日4時40分記
<都民愚弄の辞任会見>
 猪瀬の都知事辞任会見(12月19日午前)をテレビ観戦した。正義の仮面を外すかと思っていたが、それは期待外れだった。石原が「優秀な人物」と後継者にかついだほどの、確かに他愛のない三文イカサマ作家でしかなかった。真摯に真実を語ろうという姿勢は皆無だった。
 本当に430万の得票を得たのか不明だが、東京都民を愚弄扱いしているようで情けなかった。次は検察が贈収賄事件として5000万円を立件する番である。
<安倍ー石原の手打ちに重大懸念>
 事情通は本日付朝刊を見て電話してきた。「昨日、石原と平沼が安倍と会った。事件のもみ消しを依頼した可能性がある。具体化すれば許しがたいことだ」といってうめいた。
 「石原が猪瀬の首に鈴をつけた形だ。安倍が検事総長を抑えにかかるかも」というのだ。あり得ないことではない。「事実になれば、暴動が起きるかもしれない」といって電話をきった。
 検事総長の動向もまた国民監視の的というのだ。
12月19日13時10分記