本澤二郎の「日本の風景」(1524)

<「神道過激派」の日本でいいのか>
 祖父が戦時内閣の外相を務めた東郷和彦は、雑誌のインタビューで安倍晋三首相の靖国神社参拝を称して「第二の敗戦の始まり」と決めつけた。筆者もこの見解に賛成である。日本の資金でシベリア開発を目論んでいるロシア(旧ソ連)は、安倍にラブコールし続けているが、それでも対日戦を断行、連合軍勝利を勝ち取った史実から「靖国参拝」に強く反発した。日本軍国主義を退治した連合国は、一斉に「神道過激派」の靖国参拝に反発している。米英仏蘇中である。


靖国参拝は第二の敗戦の始まり>
 靖国参拝を予想していた国は、中国と韓国である。その点で、一番の衝撃国はアメリカである。ワシントンに盾突く「神道過激派」に衝撃を受けている。ワシントンは見事に、安倍に裏切られてしまったのだからだ。
 そのしっぺ返しに「首相官邸霞が関は震え上がっている」とも聞く。それも当然であろう。既に経済面・金融政策で表面化、アベノミクスの崩壊を取り繕えないほど露呈させている。日本株2万円説は空に舞ってしまった。
 大借金によるバラマキ補正予算で8%消費大増税を乗り切ることは厳しい。外国人投資家も悲観的になっている。
 ついでに言うと、戦前の帝国主義復活を象徴する靖国参拝にインド政府もNOである。イギリスの駐日大使も反対を表明した。
アベノミクス崩壊>
 今の国連は、日本軍国主義を退治した連合国が中心になって出来あがった国際組織だ。それに挑戦した安倍・神道過激派を、かつての連合国が袋叩きにしているのだ。ワシントンの意向と信じて、中国封じ込めを策してきた安倍内閣は、反対に日本封じ込めに追い込まれてしまっている。韓国・中国のメディアの日本批判は頂点に達している。当然すぎる帰結とはいえ、神道過激派を受け入れる世界は、この地球に存在しない。

 安倍城はがらがらと音を立てて崩れている。貿易立国日本は、平和友好の外交原則でしか生きられない。日本は日本で、アメリカのような軍事超大国ではない。
 戦後の自民党政権の多くは、平和友好を旗印にしてきた。安倍内閣のような極右政権と極右政策は、戦後初めてのことである。背後に三井と三菱財閥の思い上がりがある。アベノミクスが存続できるはずがない。ワシントンの金融政策に対抗などできない。アメリカ1%が日本1%に横やりを入れるだろう。
NHKの狂乱人事でも露呈>
 神道過激派の体質は、安倍人事によって早くも露呈した。
 NHKは公共放送である。民意に裏付けられた放送を、放送法によって縛りをかけられている。それなのに会長と経営委員が、安倍並みの正体を自ら表面化させて、内外から怒りを買っている。
 モミイとかいう三井出身の会長は「従軍慰安婦はどこにもあった」と恐ろしい認識を記者会見の場で明らかにした。百田とかいう作家出身の経営委員は「南京大虐殺はなかった」と、都知事選に出馬した自衛隊OB候補の応援演説で馬脚を現した。よく知らないが、石原慎太郎の子分かもしれない。
 なんともお粗末な安倍人事であろうか。
<ロイターが安倍軍拡論を指摘>
 2月5日付のロイター電は「軍拡目指す安倍政権」の見出しを掲げる記事を載せて、世界に配信した。記事は「原因は日米同盟の不安から」と官僚コメントを載せていたが、これは事実に反する。
 改憲軍拡は神道過激派の既定の路線である。彼らは常にアメリカの要求だという嘘を流す。岸内閣の安保改定もアメリカに頼まれた、という嘘をついて強行した。今回もそうである。
 安倍・自公連立政権は、目下、中国の軍拡を口実に改憲軍拡を推進しているが、それをロイターに見破られてしまったのだ。

 EUヨーロッパでは極右・ナチスを許さない。イスラム社会ではアルカイダのような過激派を嫌っている。アジアでは日本のナショナリスト国粋主義者を恐れて反発する。
 EU諸国でナチス復活は想定できない。中東でアルカイダの政権発足も考えられない。しかし、アジアでは靖国参拝政権が、既に発足して1年を経過した。このことを歴史の皮肉として受け入れられようか。

 それにしても、神道過激派が仏教政党を配下に従えて、平成の治安維持法を強行、成立させたことに驚きを禁じ得ない。集団的自衛権という戦争の出来る日本改造を「憲法解釈だけで出来る」と2月5日の参院予算委員会で発言した安倍である。
 軍事優先は過激派独裁の特徴である。そのための世論操作の手段としてのNHK人事なのである。

 北京やソウルだけでなく、ワシントンのリベラルも警戒を強めている。今は細川に期待するしかない。どうなる都知事選?
2014年2月6日8時40分記