東電・広瀬社長会見 すっとぼけた回答に終始

「東電・広瀬社長会見 すっとぼけた回答に終始 (田中龍作ジャーナル) 」  原子力・核問題
東電・広瀬社長会見 すっとぼけた回答に終始 (田中龍作ジャーナル)  投稿者 赤かぶ 日時 2012 年 7 月 19 日 から転載します。

記者の質問に冷ややかな視線を投げる東電の広瀬社長(左)。隣は東電記者会見で「木で鼻をくくったような答え」に終始する松本純一・原子力立地本部長代理。通称ブースカ。=19日、日本外国特派員協会。写真:田中撮影=

東電・広瀬社長会見 すっとぼけた回答に終始 2012年7月19日 21:37

 原子力災害史上最大級の事故を引き起こしていながら恬として恥じない電力会社社長らしいコメントのオンパレードだった。東京電力の広瀬直己社長が19日、日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見した。

 広瀬社長は冒頭の挨拶で「いつの日か東電は変わった。ポジティブに情報を提供していると言われるように最善を尽くす」と言ってのけた。心にもないことを言う、とはこの事である。コツコツと情報を集めて東電に痛い質問をするフリー記者を出入り禁止にした所業は、まるでなかったことのようだった。(木野龍逸記者の出禁については後段で述べる)


 質疑応答が始まると広瀬社長は本領を発揮、すっとぼけ続けた。こうでなくては東電の社長は務まらない。

英ガーディアン記者:「国会事故調では福島原発事故は災害ではなく、電力会社―政府―規制当局の深い結びつきの為に起きた共謀だと言われているが?」

広瀬社長:「国会だけでなく、政府の事故調もある、先月東電も社内事故調査報告を出しており、いろいろ意見があるのは承知している。まだわかってないことがいろいろあり、進行中のプロセスだ」

規制当局である原子力・安全保安院天下りを受け入れてきた事実などどこ吹く風だった。ロイター通信の記者が「質問に答えていない」と追及した。

広瀬社長:「どういう事実に基づいてそう言うのか分からない。しっかり読み込んで我々の考えている事実と違えば、しっかり調査していかなければいけない」

 一問一答の難点がここにある。ロイターの記者も天下りの事実を突きつけるべきだった。

ドイツTV :「東電が隠ぺい体質だと言われている。具体的に変わろうとするために何をするのか?たとえば欧米の会社のように株主総会の公開などは考えているか?

 広瀬社長:「株主総会の公開はまだ何も考えていません」

 つい先だって、黒塗りで提出された「緊急時対応マニュアル」は何なのか?国有化された企業の経営者が「株主総会を公開しない」などとホザく権限がどこにあるのか?筆者は東電をかくも厚顔無恥にさせた政治とマスコミに対する怒りを禁じ得なかった。

 フリーの佐藤裕一氏(『回答する記者団』所属):「木野龍逸さんが東電の株主総会スマートフォンで(音声のみ)中継していたことがわかり、記者会見を出禁になった。この事実を社長として知っているか?木野さんは事故以来、東電会見に数多く参加してきたが、会見では今まで一度もルール破りをしたことはない。これについては聞いているか?また、出禁解除についてはどう考えるか?」

広瀬:「事実としては知っている。会見での(ルール破りがなかった)ことは知らない」。広瀬社長は出禁解除については回答しなかった。

木野氏の出禁は納得いかない。テレビ局は音声と画像を放送したのである。勝俣会長(当時)が接待旅行に連れて行くフレンドリーな記者クラブメディアであればOKで、厳しい質問をするフリーの記者はダメ。国有化された企業が自分の好き嫌いで記者の出禁を決めることが許されるのだろうか?

 それにしても日本の記者クラブメディアの質問は緩かった。民放テレビ局の記者は「値上げが2ヵ月遅れることによる経済的影響は?」とヨイショ質問した。

 最後に司会者のジョージ・バウムガルトナーFCCJ会長が奇妙な発言をした。「東電社長を呼ぶのに16ヵ月もかかった。…(中略)…これからも仲良くして頂きたい。再びここに来てほしい」。

 新聞記者出身のある賛助会員がこれに激怒した。「我々は東電と仲良くしようなどと思っていない。あいつら(広瀬社長と松本本部長代理)に厳しい質問が浴びせられるのを楽しみにしていた。なのに司会者は緩い質問をする知人の記者ばかりを指名していた。東電を守っているかのような印象を受けた」。

 筆者は記者会見が閉会した後、議事進行の不自然さについてバウムガルトナー氏を問い質した。氏は「東電社長を呼ぶのに16ヵ月もかかったんだ」と繰り返した。筆者が「だから厳しい質問をしそうな記者を外したのか?」と問うと、それには答えなかった。

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雁屋 哲の今日もまた
2012-07-06
東電の新社長 から転載します。

7月5日の夜9時のNHKのニュースに、東電の新社長広瀬直己氏が登場した。

番組の冒頭、広瀬氏は「福島にも何度か足を運び」と言った。

この「足を運び」という言葉は私の記憶による物で不確かだ。要するに広瀬氏はこれまでに何度か福島に行ったと言ったのだろう。



私が5月に福島取材をしている最中、5月9日の「福島民報」の第1面に広瀬氏が東電の新社長に内定したと言う記事が載っていた。

第2面に「広瀬次期社長との一問一答」という欄で広瀬氏は、記者団の質問に答えているのだが、その中で、「福島県への訪問は」という記者の質問に対して「出来るだけ早く伺いたい」と答えている。

同じページの別の欄に「福島第一原発事故後、賠償担当の役員として被害者や自治体と接してきた広瀬氏。」と書いてある。

であれば、上記「一問一答」の中での「出来るだけ早く伺いたい」というのは「役員としてではなく、新社長として、出来るだけ早く伺いたい」という意味なのだろう。

しかし、解せないのは同じ「一問一答」の中で、記者の「原発事故で被害を受けた住民にも会うか」という質問に、「そういう機会が持てるものなら持ちたい」と答えていることだ。

NHKのニュースの中で、被害にあった住民が、「東電は上からの視線で我々を見ている」と訴えていた。これまでの東電の被害者に対する対応に問題があるのは明らかだ。

この広瀬氏の「そういう機会が持てるものなら」という言葉は正にその東電の上から視線の表れではないか。

私は、その時福島にいてさんざん福島の人々のこうむった被害を見ている最中だったので、その広瀬氏の言葉に余計に敏感に反応した。

かっと、血が頭にのぼった。

「そういう機会が持てるものなら」とは何事だ。

一体何を他人事のように言っているのだ。「そういう機会が持てるものなら」ではないだろう。

原発の被害を受けた住民に出来るだけ多く、相手の事情が許せば全員に会いたい」と言うべきなのではないか。

NHKで、広瀬氏は「これまでに何度も福島に行った」と言っている。何度も福島に行って置いて、そんな他人事のようなことを言うのか。

これまで何度福島に行っても、実際に被害にあった人と会ったことはないのか。

会ったことがあって、その上でこんな事を言えるとは、驚くべき神経だ。

広瀬氏の、人間として血が通っていないその言いぐさを読んで、しかも、このような人間が次期社長と知って、このままの東電には何の望みも抱けないとその時私は思った。



その東電のすることについてだが、東電以外、普通の一企業が、東電のような途方もない被害を住民に与えたときに、今の東電のように、加害者としての反省の意識も見せず、自分たちで勝手に決めた賠償額を押しつけるだけで済ますようなことが出来るだろうか。



今回の取材で、いわきの川沿いで料理店を営むご夫婦にお会いした。

この件は、興味深いことなので、「美味しんぼ」にたっぷり書くことになっているから、ここでは、ほんの輪郭だけ書く。

その店は川に釣りに来る釣り客と、川魚料理を食べに来る人で賑わっていた。

何十年も繁盛していた店なのだ。

ところが、その川の魚から、基準値以上のセシウムが検出されたと言うことで、全てが頓挫した。

釣り人は来ない、川魚料理を食べに来る人はいない。

第一、セシウムが検出されたので料理して出す魚がない。

私たちがお伺いしたとき、店にはお客は誰一人いなかった。

昔なじみだという釣り人が一人、ぶらりと立ち寄って、「やはり、だめだな」と言って帰っただけだ。

ご夫婦が困り果てていたら、「東電に補償請求を出すといい」という助言を町から貰って、補償請求を出したら、「8万円」出ることになった、と私に言った。

私が、余りの額の低さに驚いて、「ええっ、月にたった8万円ですか」と尋ねたら、ご主人は笑って「いいえ、一度限りです」と仰言る。

私は、驚くのを通り越して、腰が抜ける思いがした。

一つの家族の生活を破壊しておいて、その保障がただ1回限りの8万円。

こんな馬鹿なことがあって良いものか。

生活の術を断っておいて、それで、8万円で全ての事を済まそうというのか。

東電の社員に尋ねたい。

今すぐ東電を追出されて、その償いがたった一度の8万円だったら、それから先どうやって生きて行けるのか。



NHKでの広瀬社長はひたすら低姿勢で、謝り続け、これから何とかすると様々な手形を振り出すだけ、何も実を感じさせなかった。

NHKのキャスターも流石にたまりかねたのか(私の目にはそう映った)、最後に「上から視線ではなく、きちんと被害者に対応して下さい」と念を押した。

それに対しても、広瀬社長は、早く其の場を逃げたい一心を露わにして、「はい、はい、そうします」と言うだけだった。

この広瀬氏の姿を見て、私は5月9日に「福島民報」を読んで抱いた私の思いは正しかったと確認した。



広瀬氏の姿は、そのまま東電の姿勢を表している。

東電はこれからも駄目だろう。

東電は大量の資金を政府から導入して貰って国有企業も同然である。

国有企業に、そのような、国民を軽視して上から視線で被害者を見る人間を、我々国民は雇う理由がない。

広瀬氏には8万円上げるから、今すぐ東電を出ていって、どこにでもいいから行ってしまって下さい。
雁屋 哲