リビア: 'アメリカに死を'

マスコミに載らない海外記事   メタボ・カモ


Paul Craig Roberts

2012年9月17日

"Information Clearing House"

今回のアメリカ売女マスコミの"自由出版物"より欺瞞的な報道を想像頂きたい。11年間、その正当な覇権を求めて、ワシントンは軍隊、爆撃機、ジェット戦闘機、攻撃型ヘリコプター、無人飛行機や、暗殺チームを、7つのイスラム教国家に送ってきた。二つのイスラム教国家、イラクリビア、そしておそらくは読者の見方次第では更なる国々が、ワシントンによって打倒され、混乱状態に放置された。

7つの教国に対するワシントンの攻撃は、結婚式、葬儀、子供のサッカー大会、農家、病院、救援隊員、学校、道路を歩いている人々や、村の長老達を吹き飛ばしたが、イスラム教徒の人々は気にしないのだ! 彼らは、自分達を愛してくれて、自分達の人権に専心してくれている善意のアメリカ人達が、民主主義と女性の権利を自分たちにもたらしてくれることを理解しているのだ。百万人以上の、亡くなり、不具になり、家を追われたイスラム教徒達は、ワシントンによる解放のために支払うべき、ささやかな代価なのだ。

イスラム教徒は、解放というのはコストがかかるものであることを理解しており、カリフォルニアのうつけものが反イスラム教映画を制作するまでは、ワシントンによる解放の為の暴力に甘んじていたのだ。ワシントンによる略奪ではなく、この映画がイスラム世界を"アメリカ憎悪"に目覚めさせたのだ。

9月11日という象徴的な日に、駐リビアアメリカ大使と、他の何人かのワシントンの代表者がリビアで暗殺された。売女マスコミによれば、ワシントンが自分たちの国を破壊し、大混乱状態に放置したがゆえに、暗殺者がアメリカ人を殺害したわけではない。殺されたアメリカ人代表達には何の責任もない反イスラム映画ゆえに、暗殺者はアメリカ人を殺害したのだ。

これこそワシントンの活動、思考方法だ。テロの逆流をもたらしたのは、ワシントンによる、イスラム教徒虐殺や、彼らの社会や政治生活に対する支配ではないのだ。カリフォルニアの独立した映画制作者が原因なのだ!

共和党民主党も、ワシントンにいる欺かれた政治家連中、そしてもちろん、買収され、報酬をもらっている"専門家連中"がこうしたアメリカに対する強烈な拒否反応を我々全員にもたらしたのだ。ワシントンは、大量破壊兵器アルカイダとのつながり、残虐な独裁者といった、でっちあげられた嘘に基づいてイスラム教国家を攻撃したのみならず、イスラム教主義者達を牽制し、アメリカ代表や組織を攻撃するのを防いでいた非宗教的政府を破壊してしまった。

長らくアメリカの傀儡国家であるエジプトで、アメリカ大使館が襲撃され、アメリカ国旗が引きちぎられた。これが全てであれば良いのだが。ワシントンは、アンワル・サダト暗殺以来そうして来たように、エジプト政府を再度買収することができよう。しかし現在流れているニュースでは、反米抗議行動は中東全体に広がっただけでなく、世界中で噴出している。モロッコスーダンチュニジアイラク、イエメン、イラン、ガザ、バングラデシュレバノン、ロンドン、更にはイスラエル国内にまで。

オバマ政権は、政権自らが現在、非宗教的なシリアのアサド政権を打倒する取り組みの中で支援しており、リビア政府を打倒するのにも、政権が利用し、リビアに力の真空状態を生じさせてしまった、イスラム教主義者集団、アルカイダのせいにしている。非宗教的なアラブ支配者が、ワシントンに対して与えていたイスラム教主義者の攻撃からの保護を破壊してしまったので、オバマは、威嚇行動として、無人飛行機、航空母艦海兵隊や、トマホーク・ミサイル艦をリビアに送り、更なる学校や子供のサッカー大会が、聖戦戦士達の野営地と誤解されて、吹き飛ばされる可能性を高めている。

騒乱を政治的に利用しようとして、大統領候補ミット・ロムニーは、アメリカは、ホワイト・ハウスに、大統領としての自分が必要であり、自分なら"…アメリカ人が重んじる指導力を発揮し、我々が世界中で称賛され続けるようにする。"と宣言した。

ロムニーは、一体どの称賛のことを言っているのだろう? 称賛する人々とは一体誰だろう? エジプトでは、イスラム教徒達が "アメリカに死を"というシュプレヒコールに合わせて行進しており、三日間の抗議行動後も警官隊は阻止できていない。CBSは"警官隊は、デモ行動参加者の力を消耗させたいと願って催涙ガスを撃ち続けているが、彼ら[デモ行動参加者]は粘り強いことが明らかになった。"と報じている。

王様達は良い、独裁者達は悪い! 国家の石油収入の大半を使い尽くしているワシントンを支援を受けたサウジ王家とは違って、カダフィは石油収入をリビア国民に配分していた。シンシア・マッキニーの素晴らしい著書、『違法な対リビア戦争』の中で、スティーブン・レンドマンは書いている。カダフィは "リビア国民が国の石油資産を分けあうことを願っていたが、これはアメリカや他の西欧社会にとっては異質な観念だ。彼の1999年決定No. 111のもと、全てのリビア国民が、無料の医療、教育、電気、水道、訓練、リハビリテーション、住宅補助金、障害者年金、老齢年金、無利子の国家融資、留学、新車購入への豊富な助成金、結婚時の支援、事実上ただのガソリン、等々を得ていた。"

一体なぜそのような比較的裕福で、平等主義の国が、ワシントンやそのNATO戦犯傀儡諸国によって"解放される" 必要があるだろう?

統治している国民に対し、欧米政府がしているよりも、もっと良い形で国民に提供していた政府を打倒することで、一体何が得られたのだろう?

アメリカは新たなローマで、ヨーロッパ、イギリス、カナダ、日本やオーストラリアは、石油王国とならんで自治属国なのだ。

著書『ルビコン』の中で、トム・ホランドは、強力で無慈悲な軍事国家の属領であるというのはどういうことか述べている。

"B.C. 146の大変動前に、‘自由’の正確な定義に関して若干の混乱があった。ローマ人がそれを保障すると主張する時、一体何を意味しているのだろう?... ローマとギリシャの‘自由’の解釈は異なっていた。ローマ人にとっては … 自由とは、都市国家が、ローマ人の(植民地)弁務官が定めた規則に従う機会を意味していた"

これがワシントンが世界中に押しつけている"自由"だ。ワシントンは超人なのだ。それ以外の全ての世界は、ワシントンの遊び場だ。ローマが支配した様に、ワシントンは傀儡を据えつけ、傀儡連中の従順さに依拠するのだ。

結局は帝国は自らを滅ぼす。ワシントンの不遜さと横柄さが世界を反米へと変える。クリントン、ブッシュ、チェイニー、オバマネオコン連中のおかげで、アメリカは、愛されたり、あるいは尊敬されたりするどころか、益々激しく憎悪されつつある。帝国権力の大使館に対する攻撃の広がりは、始まりに過ぎない。

ジェラルド・セレンテが予測した通り、"21世紀の第一次大戦"が始まった。

Paul Craig Robertsは、元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えていた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。www.paulcraigroberts.org/

本記事はTrends Journalに初出。

記事原文のurl:www.informationclearinghouse.info/article32469.htm

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アラブ世界の人々が、突如チャチな反イスラム映画に怒りを爆発させたというのは、容易には信じがたい。

日本ですら、ネット記事は、新聞、テレビとは比較にならない普及度。多くの中高年世帯、インターネット記事やyoutubeは無縁だろう。中近東の皆様、ADSL光ファイバーで、自在にyoutubeをみられるのだろうか? 技術は日進月歩する。イスラム諸国の家庭、皆パソコンを所有しておられ、光ファイバー普及、日本も到底及ばない率なのだろう。

下司の勘繰りで、一体一番利益を受けるのは誰かと思いながら、ニュースを見ている。

今回の事件、誰が一番恩恵を受けたか、素人には見当がつかない。

リビア事件ではよく分からないが、領土紛争では、一見、白馬の騎士、正義の仲裁役を演じている宗主国、一番恩恵を受けているだろう。

余りにピッタリのタイミングに宗主国国防長官がお出でになった。

ゴタゴタに乗じて、

オスプレイの安全が確認され、
Xバンドレーダー設置で合意した。公式的には対北朝鮮警戒が目的という。
東欧諸国レーダー、公式的には対イラン警戒目的。ロシア向けとは言わない。北朝鮮向けは、中国向けではないそうだ。

とんでもない資質・議論から目をそらせていただける、民主、自民、公明、異神の怪の政治家の皆様も、今回の騒動で良い目を見ているように思える。

米西戦争の時の不可思議な戦艦沈没記事のエピソードを連想させられる、イエロー・ジャーナリズムという言葉の語源となった、ハースト、ピューリッツアーの扇情的記事に負けるとも劣らない見出しが、キオスクの新聞にならんでいる。テレビも大手新聞も。

ともあれ、リビアや、イスラム諸国での抗議行動、本物「ジャーナリスト」による力作大治朋子著『勝てないアメリカ』を連想させる。

勝てないアメリカ―「対テロ戦争」の日常

(新赤版1384)岩波書店新書紹介ページ内容をコピーさせていただこう。

圧倒的強者が翻弄されるのはなぜか

 ハイテク装備に高度な情報通信技術、大型装甲車、無人偵察機や殺人機……、あらゆる面で圧倒的優位に立っているはずなのに、簡易な手製爆弾に翻弄され、世界中で反米感情は高まり、犠牲者も増え続ける。いったいなぜなのか。

 新聞協会賞を連続受賞し、ボーン・上田賞にも輝いた気鋭の記者が、特派員として見たアメリカ国内の戦争の深い傷跡、さらにアフガニスタンへの従軍取材で目にした戦場の現実をリポート。米軍将校や民間軍事会社社員、帰還兵やその家族たちの肉声から、「オバマの戦争」の実像に肉薄する。

民主党自民党公明党、異神連中が推進する「集団的自衛権」なるもののおかげで、これから宗主国の都合による侵略戦争に、直接参加させられることを考えれば必読書に思える。

自分の夫や子、孫を、未来永劫、宗主国の違法な侵略のお手伝いのため、遥かかなたの異国で犬死にさせてくださる政治家に、進んで投票される皆様の心が、小生にはわからない。

内田樹氏の画期的な説『従者の復讐』にあるように、弱者ができる唯一の策として、「従者として主人におもねることを通じて、その没落を念じている」のであれば、納得せざるを得ない。

これがワシントンがこの国に押しつけている"自由"の成果?

2012年9月20日 (木) アメリカ, チュニジア・エジプト・リビア・シリア, テロと報道されているものごと | 固定リンク