本澤二郎の「日本の風景」(1235)

政党交付金を廃止せよ>
 12・16総選挙結果を受けて、年4回に分けて支給される政党交付金(320億円)の支払額が固まっている。その見込額が報道されている。自民党146億円、民主党85億円、維新の会27億円、公明党25億円、みんなの党18億円、未来の党8億円である。世界的傾向であるが、人々の大半は政治・政党に不信感を抱いている。民意を反映しないからだ。政治的無関心層は増大する一方である。この政党交付金は直ちに廃止すべきである。


血税投入の資格なし>
 小選挙区制を導入する時にうまい具合に潜り込ませたお手盛り政党助成金である。政治腐敗排除が表向きの理由だった。単なる口実に過ぎないが、政治家の金集めを抑制する狙いもあった。
 だが、何も変わっていない。政党・政治家は従来通り、金集めに精を出してきている。その一部を政治資金として国に報告しているが、これが全ていい加減なものだ。
 小沢一郎はこの政治資金の規正法で官憲とマスコミによって、ひっかけられてしまった。これを用いると、自民党から共産党まで、狙い定めた議員をたちどころに捕まえることが出来る。従って、小沢事件が表面化するまでは、単なる形式犯として処理されてきた。報告内容を改めることで済ましてきた。
 筆者が小沢事件捜査に疑問を抱いた第一の理由だった。なぜ小沢だけに?背後に陰謀の存在を気付かせた。CIAの意思を感じたため、俄然、この事件を批判的に論評してきた。間違っていなかったことが、いまや常識となっている。新聞テレビは未だに反省も謝罪もしていない。
 良心に目覚めた元自民党職員は「企業献金は皆賄賂金。タダで献金する者はいない」と断言している。その通りなのだ。陳情処理や法案処理の手助けなど、全てが賄賂金なのである。
 政党政治家に血税を投入する資格などない。党利党略・個利個略で行動していると決めつけてもいいくらいだ。全政党政治家に通用する。
共産党を見習え>
 その点で、共産党はすっきりしていい。「交付金は受け取らない」との方針をずっと貫いている。まともな対応である。しかし、それでいて国民の支持は集まらない。自らの欠陥に気付いていないのだろう。
 このことは不思議なことである。肝心なことを、何も分かっていないらしい。中国に「党員を増やす方法を教えて」という訪中団の存在を知っている。中国では、党員資格を手にするには、相応の条件に合格する必要がある。
 日本の政府与党・官僚には、ふしだらな人間ばかりが目につくが、こうした手合いは中国共産党の党員になることは出来ない。厳しい。もっとも、政府や党の高官になると、腐敗に手を染めてしまう者は多いと聞く。
 余談だが、坊主の資格も中国仏教界の資格はインド仏教の伝統を受け継いでいて厳しい。酒・女・肉はご法度と聞いた。日本の坊主は、一人も中国では出家できないことになる。
 ともあれ、日本共産党の唯一誇れるまともな政治的対応は、この血税に手を染めない点である。金にきれいだ、と自負する政党は、共産党を見習うべきである。公人として当然の態度であろう。
<1銭でも節約に回せ>
 1銭でも支出を減らす必要がある。質素倹約しか、この厳しい時代を乗り切る方法はない。無駄は許されない。その無駄を無くす、と民主党は2009年総選挙で約束した。その公約を破って、反対のことをした。今回の総選挙は、民主党に鉄槌を加えたものである。
 民主党大敗北が、自公の組織票を格別に有利な地位に押し上げたものだ。自公も勝っていない。勘違いしてはなるまい。民意を反映しない選挙制度のお陰である。現に、一部の新聞世論調査によると、安倍内閣の支持率はお祝儀相場にしては、ひどく低い。
 景気・景気と叫んで輪転機で円を印刷する、借金を増やすと叫んでいるが、これに飛びついて株を買っているのは、なんとハゲタカファンドという外国の怪しげな投機機関である。目的は日本の優良企業の買収だ。第二のシャープが次々と出てくると、事情通は指摘している。
 日本政府に金はない。一部富裕層と財閥に金は眠っている。ここから吐き出すしか手はない。しかし、自民党は彼らの駒でしかない。少しでも支出を減らして借金を減らす。当たり前の損得勘定で対応する。同時に、産業構造の転換を図るのである。
 余談になるが、ガソリン車や薄型テレビによる需要増はもう起きない。自宅で簡単に手に入るエネルギー開発に成功すれば、人々は無理しても手を出すだろう。知り合いは「航空機産業は20万点の部品を必要とする。車は5万点に過ぎない。高速の貨物船も日本なら開発可能だ。医療船を沢山製造して国連に貸し出したりするビジネスもいい」と語っている。
 需要を掘り起こす産業構造の転換だ。テレビや車は、いまやどこでも作れる。過去の産業でしかない。安倍内閣景気対策、それは日銀の輪転機を回して、円の価値を下げ、同時に国債増発で借金をさらに増やすというものである。
 1銭・1円でも支出を減らすことが、何よりも重要なのである。安倍の詐欺には要注意だ。
<暴露された政治改革>
 いまさら言うのもおかしいが、東大教授を先頭にしてまとめた政治改革論は、完璧に嘘が暴かれてしまっている。政党交付金によって、企業などからの賄賂献金が無くなったわけではない。
 献金の裏には、必ず不正が行われている。血税である交付金を、家族や彼女のために、自分の私的な飲み食いに使っている政治屋が目立つ。こんな目的のための政党交付金ではなかったはずだ。
 そもそもが、こうした方法は官尊民卑が未だに通用しているからなのである。愚民政策の最たるものである。直ちに廃止しなければなるまい。政府に金はないのだから、各党とも国庫に返納し、制度の廃止を求めるべきだ。国民は怒る必要があろう。
<10%台支持の自民党
 そもそも10%台の支持しかない自民党に146億円を、どうして血税を投入しなければならないのか。日本の国会議員は、国際的にみて法外な報酬を手にしている。法外なボーナスも懐に入れている。
 通信費など不思議な手当も多く手にしている。中曽根バブル期の給与を、役人と一緒になって、未だにむしり取っている。大震災があっても、それでも小手先の時限的減給にすぎない。
 8割の有権者自民党にそっぽを向いている。信頼も信用もしていない。反発さえしている。そんな政党になぜ、交付金を出すのか。もしも、同党がまともな政党・国民政党というのであれば、財政が破綻している今日なのだから、率先して交付金を国庫に返納すべきではないのか。
 財政が健全化した場面で、改めて検討すべきだろう。こうした決断ができないようであれば、無党派層の怒りは、来夏の参院選自民党に向くであろう。
<国民愚弄の選挙制度
 民意を反映しない選挙制度を直ちに改正する、これが自公の責任である。放置するというのであれば、国民政党を名乗る資格などない。主権者を愚弄するものである。
 民主主義に違反する旧勢力である。有権者の怒りを買うことになろう。多くの国民は、12・16総選挙結果に驚いている。棄権した無党派の反省は少なくない。維新に流れた票もその一つだろう。
 迷った挙句の自公支持の有権者も、いずれ反省することになろう。続原発推進自公政権に反発する市民は少なくない。ガソリン高で悲鳴を上げるドライバーも出てきている。
これら民意を反映させる選挙制度作りもまた、喫緊の課題なのだ。
2012年12月28日7時55分記