本澤二郎の「日本の風景」(1238)

<2012年回顧>
 暮れになると、日本人は恒例・慣用句として「良いお年を」と声を掛け合う。よく考えなくても不思議な光景だ。20年前に中曽根バブル経済が崩壊してこの方、よい年と思える時など無い。遂に、昨年の3・11大震災と史上最悪の福島東電原発事件で、文字通り止めを刺されてしまった日本である。その教訓を学べる2012年だったが、またしても正反対に突き進んでしまった。内外政ともに悪化してしまった。恥ずかしい・情けない2012年だった。


<教訓を学ばない天皇国家主義
 日本人はドイツを見習う必要がある。ゲルマン民族は失敗をそのままに放置しない。たとえ自国の問題でなくても、地球・人類の教訓を理解し、即座に生かす。2度と失敗しないためだ。3・11の原発事件は日本で起きた事件であるが、ドイツ政府は即座に反応して、原発ゼロの政策を決定して、それを強行に推進している。
 ナチスの教訓だけではない。歴史を鑑として、2度と繰り返さない。考えなくても当たり前のことだが、ドイツ人に出来ても日本人は出来ない。天皇国家主義が台頭する日本だからだ。この点を指摘する日本人は一人もいない。不思議である。

 嘘内閣で国民の支持を失い、政権を奪われた民主党は、それでも「原発を2030年代にゼロにする」と公約した。こんな甘い公約を安倍・自公政権は、これさえも無理だから「見直す」と福島で明らかにした。財閥の傀儡政権でもある。おわかりか。民主党よりも悪質政権なのだ。
 一時が万事この調子である。先の内閣・党の人事で、皇国史観論を吹聴してきた松下政経塾出身の女性議員が3役に就任した。尖閣問題の火付け役の石原慎太郎セガレは環境大臣だ。国民を馬鹿にした安倍人事であろう。
尖閣に火をつけた石原と野田>
 戦前の侵略戦争の教訓は、日本国憲法に生かされている。平和主義と国際協調主義である。戦争を否定・拒絶する平和憲法は、鈴木善幸首相(当時)ではないが、これは世界に冠たる日本の唯一の誇りである。
 誕生させた吉田茂が歴史に名を残せる成果なのだ。それをワシントンの対日政策強行派は「日米同盟にとって邪魔だ」と公然と言いふらしている。本心は、アジア人同士の争いにある。日中戦争の再現狙いだ。こんな罠にはまってたまるものか。
 その罠にはまって決起したのが、極右の石原慎太郎だった。連動したのが、野田佳彦である。石原は都民の金で尖閣の所有権を買い取る、と言い出し、野田は「尖閣国有化」を宣言した。これが中国の全土に火をつけた。9・18反日デモは、中国史上空前の広がりを見せた。日本商品ボイコットだ。
 日本財閥は驚愕し、欧米は大喜びだ。韓国でさえも。
<背後にワシントン>
 石原の背後には、ワシントンのネオコンがついていた。共和党右派シンクタンクで知られるヘリテージ財団と手を組んでの、尖閣の政治問題化だった。日中分断への策略である。
 日本の極右がワシントンの極右と連携したお芝居を、日本の財閥配下のマスコミが大宣伝して、問題を大きくさせた。日本人の国家主義化を狙ったものだ。
<自民復活を策す>
 石原の黒幕は、大阪の橋下との連携と新党立ち上げを要請した。民自公に反発する無党派を吸い上げる狙いからだ。石原の尖閣狙いには、反民自公の小沢潰しだった。
 橋下と安倍の黒幕は、小泉が起用した竹中平蔵と専門家は指摘している。昨日、郵送された月刊誌「ザ・フナイ」にも取り上げられている。竹中という人物は要注意である。
 小泉内閣で急浮上した、表向きは経済学者だが、背後に米ウォール街がついている。1%だ。彼が郵政民有化を強行した人物だ。格差を持ちこんだ表の顔は日本人だが、心はそうではない。
 今竹中が安倍と橋下を操作している、というのだ。彼らの原発・消費増税・TPPの政策は、ワシントンの指令を竹中経由で安倍と橋下に伝えられてきている。先の首班指名で橋下が「安倍に投票したい」といって石原と大げんかした。石原は竹中とは不仲らしい。
 こうした正確分析を日本のマスコミはしない。マスコミこそがワシントンと財閥の配下だからである。こうした真実を外国の日本研究者は気付こうとしていない。彼らもまた、そことのひも付きを見てとれる。
 要は、自民復活に彼らの野望があった。そのための橋下利用だった。これに唯一、噛みついた週刊朝日は立派だったが、意外や簡単に屈して、彼らに塩を送ってしまった。
<小沢潰しと司法革命>
 ワシントンの不安は、ひとえに自立する日本、売国奴政権から離脱する日本・アジア重視の日本を、何としても抑え込む点にあった。そのために、日本の全ての権力を駆使した。
 最高裁からマスコミまで、あらゆる権力を駆使したが、失敗した。小沢を収監することが出来なかった。ネパール人を15年もの間、獄に入れた司法も、小沢に対しては失敗した。小沢側近の石川元秘書の成果だ。彼が取り調べの最中に持ち込んだ小型の隠し録音器だった。智恵を授けた人物は立派である。

 検察は証拠ねつ造の証拠を、石川に取られてしまったのだ。これこそが快挙だが、それは日本司法の崩壊を物語っていたからである。日本の検察は、戦前と変わっていなかったのだ。人権侵害も極まっている。ロッキード事件の二の舞は起きなかった。
 マスコミは検察のねつ造証拠を書きまくっていたのだ。それを信じた愚民の日本人だった。日本人は石川に感謝すべきだろう。取り調べの録音・可視化は歴史の必然である。
 当局とマスコミ関係者は、愚民に懺悔する責任と義務がある。だが、今もそれをしていない。教訓を学ぼうとしない司法官僚と言論界である。しかし、歴史から逃げることは出来ない。ここに明言しておきたい。
 小沢潰しの最後の手がハシシタ利用だった。
原発と消費大増税隠し>
 それにしても安倍内閣を実現させたワシントンの手口は、敵ながらあっぱれである。そもそもは嘘つき内閣への市民の怒りが、背景としてあった。これに自公も共犯関係にある。それでいて、政権を民から自公に移転させる。これの方程式は、なかなか解けるものではない。
 その前には原発事件での嘘と隠ぺいが、これまた政府・東電とNHKなどマスコミによって進行しており、日本国民は信じるものがなくて辟易していた。経済不況による生活不安は、人々の心理を圧迫していた。
 そうした中での解散・総選挙で自公政権を実現する、この方程式には、どうしても大増税隠しと原発封じが必要だった。これにマスコミは大々的に利用された。尖閣浮上作戦だ。その結果が見事に花開いた。極右の快挙だ。
 ワシントンの対日担当者・CIAは、またしても勝利した。あたかもA級戦犯容疑者の岸信介を内閣の首班にした時のように。思えば、岸は前任者の石橋湛山が病から1カ月で退陣したことで政権を手にした。パレスチナアラファト議長の死因が、間もなく判明する時代になったが。謀略機関の工作は手段を選ばないのだから。
 石橋の病とCIA工作を疑う必要があろう。石橋は日中国交を回復しようとした政権だった。CIAは石橋潰し工作をしたのではなかろうか?
改憲軍拡の本格政権>
 ともあれワシントン極右・ネオコンが待望した政権が東京に誕生した。ワシントンの操り人形だ。日本人の覚悟が求められる。それはアジアの人民も、である。          2012年12月31日9時10分記