本澤二郎の「日本の風景」(1261)

東芝の素顔>(その三)
 安倍内閣は、自民党史上きっての改憲・反共・極右路線を踏襲している。不正選挙疑惑の12・16総選挙における選挙公約が、わかりやすく言うと、平和憲法を踏みつぶして戦争の出来る再軍備軍国主義化の日本に改造する、というものだ。過去の同党政権で改憲軍国主義化を選挙公約にした事例はない。一度だけワシントンの圧力で、鳩山一郎内閣が改憲を公約して選挙をしたが、国民も野党・言論界はNOを突きつけて、その公約を押しつぶしてしまった。



 安倍内閣の恐ろしいまでの野望は、官邸の人事にも竹の子のように噴き出している。原子力ムラの首相秘書官を配していることが、その一つだ。それと連動するかのように、日本最強の原子炉メーカーの東芝社長・佐々木則夫原発ブレーンに据えている。
 なぜ東芝なのか。春秋の筆法をもってすれば、東芝の安倍・自民党への莫大な献金をみてとれる。しかも、それは帳簿に載らない裏献金と見ていいだろう。さらに東芝は武器・弾薬メーカーでもある。東芝にとって安倍は、一番操りやすい、そしてうま味のある政権であるのだ。
 想起すると、第一次安倍政権を誕生させた小泉内閣を完璧に支配した東芝であった。小泉・郵政民営化も、ワシントンや金融機関の意向を受けて推進した。そして第二次安倍政権もまた、東芝資金が投入された成果?の起用なのかもしれない。うがちすぎだろうか。
 財閥・東芝の野望を、安倍政権で花開かせようというのだろうか。ここを油断すると、本当に平和憲法は重大な局面に立たされるかもしれない。それはアジアの人民も、である。
<東電との蜜月>
 それというのも、武器・弾薬メーカーと原子炉メーカーを兼ね備える東芝にとって、さらにその先の「核兵器製造」も射程内に置いている、という予測へとつながるからだ。論理的に成り立つだろう。核武装化は石原慎太郎だけの思いではない。極右・国家主義者の悲願ともなっている。それは同時に、核武装化した日本を背景にした国際的経済活動が、財閥の野望なのである。日本のアメリカ化である。改憲軍拡論の根っこは、実を言うと、戦前と変わらない財閥が震源地なのである。これらは日本国憲法が断じて許さない路線である。天皇国家主義の再興を悲願とする安倍の祖父・岸信介の野望とも一致する。
官邸に太いパイプをつないだ東芝は、東電の意思を体現することが出来る。しかし、そのことは福島県民や東北の人たち、さらには首都圏民を愚弄するものだ。悪辣すぎないか。新聞テレビを傘下に置いてしまっている財閥ゆえの暴走を、主権者・国民はじっと手をこまねいて見守るだけの子羊の群れというのだろうか。新聞テレビが報じなければ、何でもできる、という傲慢さを筆者はジャーナリストとして許容できない。
 真相を知れば、多くの国民も同様であろう。
 言及するまでも無く、東電と東芝の蜜月ぶりは、3・11以後の東電の対応で明らかである。普通であれば「なぜ地震津波に壊れる不良品を売りつけたのか」と購入者は、販売者に文句をつけるところである。だが、東電は製造責任を問うという当たり前の対応をしていない。
 東電のうさんくささは筆舌に尽くせないのだが、それにしても東芝原子炉をかばい続けるところに両者・原子力ムラの不条理を、露骨に感じ取れるだろう。
 東電も東芝も共に三井・超巨大財閥の傘下にある。同じ穴の狢なのである。
<柏崎再稼働と東芝戦略>
 3月29日の東京発のロイター電は、東電の柏崎原子力発電所の再稼働準備が着々と進んでいるとの見出しで報じた。これに新潟県や北陸各県の関係者・市民は驚いているだろう。「冗談だろう」と一蹴されそうな場面に違いない。
 だが、間違いなく安倍内閣東芝ラインで、再稼働に向けた動きは本格化しているとみて間違いないだろう。「再稼働しなければ、ただでさえ世界一の電気料金をさらに引き上げるまでだ」との脅しも、マスコミを通じて発進させているようだ。
 米国では原発コストが、他の発電所に比べて高額という結論が出ている。欧米での原発建設は不可能な状況にある。中国などでも人民の根強い反対運動が起きたりしている。人類は自然エネルギーの優位を知ってしまった。原発はもっとも高額で危険という事実を、スリーマイルやチェルノブイリで学んでいる。福島でその脅威を映像で何度も何度も見てしまっている。
 悪しき独裁者は、そこからプルトニウムを取り出して核兵器の生産を考えている。そんな国だけが高コストの危険な原発に手を出すくらいだ。今日では、原発は時代遅れのエネルギーなのである。
 こうした世界常識に原子力ムラを代表する東芝と東電は再稼働に動いている。新聞テレビを動員すれば、馬鹿な国民はついてくる、と判断しているのだろう。日本国民はそんなに馬鹿なのか?
放射能廃棄物が食料品?>
 事情通が3月13日、厚労省が公表した放射能汚染食品の調査数値データを知らせてくれた。彼によると、日本人は放射能廃棄物を食品にしている、と厳しく指弾していた。それもそうだろう、高濃度の汚染食品が海産物や原乳や肉で見つかっている。それを厚労省が公表しているのだから。新聞テレビは報道規制がかかっていて報じないだけだ。
 事情通は、いくつかの数値を提示してくれた。宮城県のマダラ64ベクレル。茨城県イワナ68ベクレル、同スズキ50ベクレル、同イシガレイ49ベクレル、同クロダイ38ベクレル。岩手県牛肉17ベクレル、群馬県原乳1・1ベクレル。
 ちなみに欧州の基準は子供4ベクレル、大人8ベクレルである。いかに高い放射能汚染食品かがわかるだろう。東芝や東電は、放射能廃棄物を食品にしている、こうした悲劇的現状について、責任を感じないのだろうか。
2013年4月1日19時05分記