本澤二郎の「日本の風景」(1300)

<安倍・石原に振り回される東京・ワシントン>
 最近の内外政を整理すると、どういうことなのか。新聞テレビも報道しないため、あえて分析すると、それは要するに戦後否定した国粋主義国家主義が永田町を支配しているからなのだ。固有名詞を挙げると、それは安倍と石原である。彼らを操る強欲資本・財閥なのだ。東京は言うに及ばず、ワシントンも振り回され、手を焼いている。



皇国史観論>
 ワシントンの怒りに驚いた官邸は、数日来、あわてて議会答弁で軌道修正しているが、頭隠して尻隠さず、になんら変わりない。
 侵略と植民地支配を認めようとは決してしない。この明白な過去の史実を口にしない。安倍そのものともいえる自民党政調会長の言動が、そのことを立派に裏付けている。皇国史観論が彼らの脳を支配してしまっているからだ。森のいう「日本は天皇中心の神の国」なのだから。
 この戦前の狂気を、納得し受け入れる日本人は小数だ。人類も従うことなどしないだろう。

 それでも「戦後70年の安倍談話」で、これまでの政府方針である村山談話、そして河野談話を改変する、と安倍の意気込みは固い。国粋主義者の本領であろう。安倍長期政権を自ら信じているのだ。野党の無力がそうさせている。新聞テレビの右翼化がそうさせているのだが、急激な円安政策(アベノミクス)の副作用の成り行きを意識していない。
 愚かな財閥配下の自民党と、それに付着する公明党の日本は、いつまで続くのであろうか。石原―橋下チームは、安倍の期待を裏切って早々に消滅過程に入っている。「従軍慰安婦制度は必要だった」と公言する政党を、女性有権者は支持しないだろう。「欧米もそうだった」と決めつけたものだから、世界の婦人団体も怒り狂ってしまった。そんな橋下発言を、とことん擁護する石原の失墜も確実である。
<周辺国との緊張>
 国家主義の致命的な弱点は、民意を反映しない、外交政策において寛容さを発揮できない。自己の悪しき立場を強要する。排外主義そのものだから周辺国との緊張を作り出す。これを意図的に演じるのだ。
 石原が、ワシントンのネオコンと組んだ仕掛けが、それである。尖閣などの領有権問題であるが、これをわざわざ起こして中国との緊張を作りだした。周辺国との緊張を悪用して、世論を右傾化させる。新聞テレビでそれを連日、大々的に報道させることで、容易に無知な国民を変質させることが可能なのだ。
 産経・フジ、読売・日テレ、日経・テレ東だけではない。NHKを先導させる。これに毎日・TBS,朝日・テレ朝もかませると、日本国民の頭脳を右翼化させてしまう。新聞テレビは電通経由で、これまた簡単に操作できる。黒幕は財閥である。この政治経済構造を理解している日本人・外国人は今もいないか、少ない。
 昨日も上海テレビの取材を受けたのだが、彼らの関心は「政府はともかく、日本国民はどうなのか」という点にある。日本を全く理解していないための愚問ということが、外国人は全く理解出来ていない。
<ひとえに改憲軍拡のため>
 ナショナリストの悲願は、戦争の出来ない9条憲法をいじって、なんとか戦争の出来る日本に改造したい、その1点に尽きる。平和憲法を潰したい、ただそれだけである。これの主役が安倍であり、石原なのだが、彼らは単なる操り人形でしかない。
 かつて小沢一郎も「普通の国になりたい」と言っていた時がある。権力を握っていた自民党幹事長のころだ。彼もスポンサーの意向に屈していたからである。改憲軍拡を叫ぶと、金が湯水のように転がり込んでくる、そのことを彼は先輩の金丸信から学んだからである。金丸は建設利権で政治活動をしてきた人物だったが、防衛庁長官になって軍事利権の巨大さに驚くや、そこへとのめり込んで行った。
 政治は金で動く。それはワシントンもロンドンも、どこも皆同じなのだ。民主という洋服で、着飾っているだけのことである。金を提供する側(財閥)は、武器弾薬による暴利狙いである。
 ワシントンはこの鉄の構造(産軍複合体)にはまり込んで久しい。不条理・悪徳のワシントン外交は、この鉄の鎖から解放されていない。ここに人類・地球の不幸が存在する。
<黒幕は三菱と三井(東芝)>
 筆者はこのところ、安倍の原発外交を取り上げてきた。非常に分かりやすいテーマだったからである。安倍を原発ビジネスに駆り立てた震源地が、誰にもよく理解出来るからだ。
 官邸を実質支配している黒幕が見えるからだ。原発メーカーの三菱である。もう一人が東芝だ。東芝は三井配下の財閥原発企業で知られる。おわかりか?戦前体制そのものであろう。
 戦前の軍国主義の正体は財閥だった。だからこそ占領軍は財閥を解体した。オバマの言う強欲資本・1%は財閥なのだ。財閥の暴走がナショナリスト政権を誕生させた元凶である。あえて断定したい。
 財閥に操られる霞が関と永田町なのだ。これが日本の姿なのである。思えば、これを発見するためのジャーナリスト人生だったことになる。改めて宇都宮徳馬の「50,60は鼻たれ小僧」「男盛りは80」という至言を理解することが出来る。マルクスを全く知らないが、彼も同じ思いで資本論を著わしたものだろう。
 解決策は、武器弾薬や原発から手を引いて、平和産業で飯が食える財閥にすればいい。無理なら独占禁止法で解体させるしか方法はない。しかし、そんな法律を財閥は実現させないだろう。

 民衆革命が不可欠なのだが、新聞テレビは全て財閥に握られている。世論はメディアによって形成される。日本国民の多くが憲法を読んでいない。教育を受けていない。大学の法学部で、しっかりと学んだ人間でないと、全体を理解できない。
憲法を学ぶ活動を>
 人々はNHKや読売に左右されてしまう。市民に正論は届かない。唯一、ネットが存在するが、ネット人口は多くないし、第一、正確な情報を手にしようとする真面目な、能力のある市民は少ない。この厚い壁をどう乗り越えられるのか。
 筆者も考え込んでしまう。友人の中には「今一度、とことん沈没する。そこから民意を体した政府を作り上げるしかない」と厳しい見方をする。仮面の民主主義・仮面の独立国の、仮想の戦後を生きてきた日本に絶望した、まことの知識人の的確な視点である。

 教育の重要性を感じるのだが、ナショナリスト政権は懸命に逆流させている。やはり、憲法を学び、憲法を生かす努力をする市民を生み出してゆく。地道な努力が課せられている日本ではないか。
 改憲軍拡に抗する道は、改めて市民が憲法を必死で学ぶことである。世界に冠たる平和憲法は、人類の宝物なのだから。
2013年5月16日10時55分記