本澤二郎の「日本の風景」(1343)

<的中した「アメリカの大警告」>
 筆者の密かな実績の一つに「アメリカの大警告」(データハウス)がある。1993年に出版した単行本だ。当時、日本きってのアメリカ通の宮澤喜一元首相が、自宅に絶賛するはがきをくれた。93年3月、民主党クリントン政権が発足したばかりのアメリカを、1カ月かけて取材旅行をしてまとめたものである。宮澤さん直々の評価を今になって喜ぶ筆者だ。




国家主義台頭が日米衝突の元凶>
 当時は小沢一郎の羽振りが良かった時代だった。今の安倍ほどではなかったが、やはり改憲軍拡論に取りつかれていた。読売新聞が改憲新聞へと変質したころでもあった。
 「震源地はワシントンか」と推測した筆者は、ホワイトハウス国務省国防総省など一回りして、当局の本音を聞き出そうとした。意外や、予想は大外れだった。
 既に、民主党リベラルのクリントンがワシントンの主になっていた。官僚らもそれに合わせていた。対日政策に変化が起きていた。共和党人脈にぶら下がっていた日本人特派員は、棚上げされていた。

 本書の“あとがき”で「真の日米摩擦は、経済問題ではなく国家主義の台頭だ。これこそが日米衝突の元凶となりうる」と決めつた。オバマ2期目のワシントンで、米連邦議会調査局は「安倍はナショナリスト国家主義者」と断罪した意味の大きさを裏付けている。

 予測が見事に的中しているのである。安倍の国家主義に対抗してワシントンは、中国の国家主席、韓国の大統領を招待、前例のない歓待をして国際社会に衝撃を与えた背景でもある。“安倍封じ”が米中韓によって進行している2013年である。
 安倍外交は深刻な事態に追い込まれている。中韓との首脳会談は実現しない。おわかりか。
アメリカン・リベラルは健在>
 ケネディアメリカは、クリントンアメリカへ、そして今オバマアメリカへと継承されている。人類から信頼されるアメリカン・デモクラシーは、民主党のリベラルによって開花する。
 国家主義の日本政府に対抗する3国連携について、日本の新聞テレビは報道しない。ジャーナリズムを喪失してしまっているからである。だからといって、彼らが、日本の国家主義を容認するということはない。

 広島や沖縄の平和の祈念式典に姿を見せるようになった米国大使から判断しても、リベラル大統領府は間違いなく変化している。小沢を退治したCIAと2期目オバマホワイトハウスは同一ではない。違っていることに気付くべきだろう。
<米中韓3国連携と安倍封じ>
 共和党右派と連携してきた自民党霞が関ホワイトハウスの間には、深い溝が出来ている。ホワイトハウスと、ネオコン代理人で知られるジャパン・ハンドラーズ(対日調教師)は、もはや離婚している。安倍はホワイトハウスにとって好ましからざる人物なのである。

 米中韓3国連携は、日本の孤立を意味している。最近の安倍から歴史認識改憲発言のトーンが急降下している原因は、ここにあるのである。日本人は国際社会で通用しないナショナリストの政党を、圧勝させようとしているのだ。公明党創価学会が内側から、外側から共産党が支援している?
 イソップ物語の世界が、猛暑の列島で繰り広げられている。
<ブッシュのいないワシントン>
 分かりやすく言うと、共和党右派は1%・産軍複合体・ネオコン・CIAを経由して、日本に改憲軍拡を指令、暴利を得ようと襲いかかる。安倍路線との一体化だ。他方、アメリカン・リベラルは国家主義の日本政府を信頼しない。

 既に自民党は、安倍色丸出しの国家主義憲法草案をぶち上げて、ワシントンを驚愕させている。明治憲法の再現狙いなのだ。
 それを評価してくれるかもしれなかった?ブッシュは、ワシントンにいない。逆に、日本の国家主義の不条理を退治する機会と能力を手にしている。安倍の恐怖はこの1点にあろう。残念なことに安倍退陣後の受け皿がない。自民党にリベラルが消滅してしまっているからだ。野党はこの点で、日本国民を裏切っている。
改憲軍拡に欧米・アジアが反対>
 本書の“まえがき”の冒頭の書きだしも、アメリカン・リベラルの本音を紹介したのだが、それは「日本が憲法を改正して軍事力を増大させる?とんでもない。それはどうみたって好ましくない。米国も反対だ。第一、アジア諸国も絶対NOだろう。ヨーロッパも、だ」というワシントンの生の声である。

 イラク・アフガン戦争に反対して大統領の切符を手にしたオバマの本領が、2期目になってようやく開花してきている。米国民は初めて1%にNOの意思表示をした。ブッシュ戦争で多くの若者を失った悲しみが、癒えることなどない。厭戦気分のアメリカ社会が、オバマに自信と勇気を与えている。

 平和・軍縮派の宇都宮徳馬氏は、ワシントンの動向にいつも注視、その主だった政治家と交流していた。相手は皆、民主党リベラルの大物だった。

 安倍の国家主義を非難しない日本の新聞テレビだ。日本国民は気付かない。そうだからといって、安倍の孤立が解消することはない。選挙後の安倍外遊は、また中東だという。原発売り込みの先兵をこなすというのだ。むろん、三菱と三井(東芝)の指令を受けての外交権の乱用である。

 核の地球拡散に人類はNOだ。中国の人民も核にNOの動きを見せている。福島の教訓を学ぶ人類だ。それは国家主義の台頭に対しても人類はNOなのである。平和を愛する日本人は、希望を捨ててはならない。
2013年7月13日8時45分記