本澤二郎の「日本の風景」(1345)

参院選東京選挙区に異色の候補>
 参院選公示直後から「自公圧勝」を広報宣伝する新聞テレビの体制寄りの世論操作は、許しがたいモノがある。これによって7月21日の投票率は大きく下がることになろう。野党もだらしない。すっかり国民を裏切った民主党と、あとは小党乱立である。投票したい政党など見つけようがない。投票しても死に票になるだけだ。かくして巨大な組織票を味方にした自民党が圧勝して、国家主義首相に塩を送ることになろう。この国の厳しい前途を暗示する結果になる。数日前に選挙広報が届いたので、珍しく開いてみると、東京選挙区に面白い候補者の存在を目にした。



<不正選挙に挑戦する犬丸かつこ>
 この広報紙も、民間の独占選挙屋「ムサシ」が作成したものだろうが、その一番前に「不正選挙」という文字が踊る候補者が、掲載されている。「ムサシ」のサービスなのか?聞いたことも見たこともない中年女性の顔写真と共に「犬丸かつこ」という名前が載っている。
 なんと彼女は、広報の冒頭で昨年の総選挙後に「不正選挙」を知った、というのだ。元小学校の教員、現在は介護会社を経営しているという。組織・支援者はいないだろう。失礼ながら、泡沫候補に違いない。供託金も没収されるだろう。
 それでも立候補?狙いは何か?不正選挙を裁判で争っているのだとも。公約には、不正・不公正な課題を羅列している。憲法改悪に反対している。惜しむらくは、安倍・ナショナリスト政権の言葉が無い。彼女のいう「不正の温床となる制度」の根源である財閥にも触れていない。わからないのだろう。
 異色の候補者に違いない。怒るやり場のない庶民の一部の支持を得られるかどうか。いまを象徴している。
象徴天皇制廃止の森純>
 もう一人いた。自らの「基本公約」に象徴天皇制の廃止を掲げている。
自民党憲法草案など読む気もしないので、よくわからないが、中曽根康弘は以前「天皇元首論」を訴えていた。戦前の明治憲法に戻すべきだと公表していたと記憶している。
 国家主義者・戦前回帰論者は皆、天皇元首論であろう。対抗するように森純候補は、天皇制を廃止すべきだ、と公約した。
 安倍の改憲軍拡論に対抗しようというのだろうか。日本国憲法は世界に冠たる立派な憲法である。唯一、問題点を探そうとすれば、それは国民主権論と矛盾する象徴天皇制の規定である。
 憲法を読んでない国民は多い。読んだ日本人であれば、誰しもが矛盾を感じるのだが、誰も右翼暴力団が怖くて声に出せない。そんな中での廃止論は、時代を反映させているのだろうか。
自民党候補は平和主義?>
 自民党は二人の候補を擁立している。「東京から日本を取り戻す」とハッタリを利かせる「医師会のドン」のセガレは、外交ビジョンに平和主義を掲げて、安倍路線との違いを見せる。
 安倍の改憲軍拡に反対するのだろうか?無理だろう。反対するというのであれば、投票しても悪くないが、それはありえない。
 もう一人は安倍側近といってもいい、もう灰色がかった女性タレント候補の公約にも、安倍の改憲軍拡論は全然見られない。ただ、6つの公約の最後の6番目に「日本の自主・自立・自尊を取り戻す」と謳っている。恐らくは、これが安倍路線に歩調を合わせたものだろう。「頭隠してお尻隠さず」だ。女性だからと言って、平和主義者とは限らない。
<雑草になれない野党の小党乱立>
 昨日は、雑草が腰近くまで茂る埴生の宿で、電動草刈り機を動かした。しかし、つる草が邪魔をしてなかなかうまくゆかない。とはいえ、前の鎮守の森からウグイスが美しく鳴いて、元気をくれるものだから、少しは成果を出すことが出来た。
 暑さのせいなのか、沢山実っていた柿の実が枯れ落ちていた。自然に生き物は勝てない。途中、携帯電話が鳴った。新華社のK君が「ネット選挙」について聞いてきた。「熱中症にご注意」というあいさつに従って途中で止めた。
 それにしても雑草はすごい。群れることで爆発的な威力を発揮する。電動草刈り機さえも排除する。その点で、日本の野党は雑草になれない。情けない。
国家主義に塩を送る永田町と新聞テレビ>
 安倍の改憲軍拡論を公然と支持してきた新聞は、読売と産経グループ、それに財閥新聞の日経だった。それが朝日や毎日にも伝染してしまっている?かろうじて東京・中日新聞日刊ゲンダイが対抗しているようなのだが、国民に奉仕する新聞テレビがこれではお話にならない。
 国民の意識に影響を与えるマスコミが、健全性を喪失してしまっている日本である。そろって国家主義の台頭に塩を送って、批判をしないで、有権者を盲目の淵に追いやっている。
 歴史の教訓を学ぼうとしない、こんな日本を見ようとは思ってもみなかった。哀れ!日本丸
2013年7月16日7時20分記