本澤二郎の「日本の風景」(1347)

<官僚に抵抗できない政党・政治家>
 今日の日本を窮地に追い込んでいる元凶は、財閥と官僚機構である。これに政党・政治家も、そして新聞テレビも手も足も出ない有り様だ。ずるずると地盤沈下する中で、財閥の利害に比例する政策が遂行されている。その典型が、官僚の手による消費大増税・TPP参加・原発再稼働である。この深刻な問題を、不思議にも新聞テレビも本気で報道しない。選挙の争点をぼかして、与党の自公に塩を送っている。官僚機構に大胆なメスを入れないと、この国の再生などあり得ないのだが、全ての政党がこのことに触れようとしない。



財政破綻を放置する選挙戦>
 税収40兆円の下で100兆円前後の予算を編成してきている日本の現状は、危機的なのだが、誰も口にしない。多くの日本人は気付いてもいない。
 法人税の頂点はバブル崩壊前の1989年。約19兆円。2010年はざっと9兆円だ。半分以下に激減している。それでいて法人税減税をわめく政党は、財閥に屈している証拠である。
 89年の所得税は21兆円。2010年には13兆円と激減している。これが世界第3位の経済大国?いえるわけがないだろう。消費税は3兆円から10兆円と3倍以上に増えている。
 法人税の激減を庶民が少しだけ肩代わりしている。
<まともな政党不在>
 かつて鈴木善幸内閣は「増税なき財政再建」を公約した。ごく普通の政権は、行財政改革に取り組む。現在は違う。野田内閣は「白アリを退治しない限り、増税はしない」との約束を破棄して、自公を巻き込んで10%消費税法案を強行成立、民主党を解党へと追い込んでいる。
 嘘つき大増税有権者が反撃したものだ。いま野田政策を追認する自公政権に対しては、有権者は圧勝させると新聞テレビが報じている。恐らくそうだろう。死に体の民主党以外は小党乱立の野党だからである。日本にまともな政党は一つとして存在しない。
<自公圧勝後の日本政治>
 公明党創価学会の支援で自民党は1人区で勝つ。複数区はもちろんだ。比例区を加えると、70議席に迫るかもしれない。改憲軍拡を打ち鳴らす国家主義者の内閣の下での、その後の政局を展望すると、恐ろしい事態が招来するだろう。
 戦争の出来る日本にアジア諸国も震え上がるだろう。武器弾薬財閥の暴利もそうだが、徴兵制や軍法会議にも市民は怯えなくてはならなくなる。平和の旗を降ろす危険性に隣国の反発はすさまじくなろう。当面、1カ月先の8・15靖国参拝に世界は震え上がることになろう。

<覚醒しない政党・政治家>
 8・15は、靖国神道を軸とする政教一致体制を既成化しようというのだから。1930年代を想起する理性派も少なくないだろう。それは急激な円安政策で、刷りまくる円を、軍拡予算へ回す破壊的な路線に、無知な民衆を巻き込もうとしている?
 現在もデフレ経済に変わりない。10万円以上もしたパソコンは、4万円で購入できるほどだ。メガネも安い。普通の老眼鏡は1000円足らずだ。円安政策は、財閥の懐だけを潤している。庶民は高いガソリン代に悲鳴を上げている。車を手離す者も少なくない。
 40兆円の税収のほとんどが、役人の懐に入ると、お釣りが来ない、こんな日本を放置する自民党から共産党までの政党ばかりである。7・21参院選に投票する政党が見つからない。こんな無様な日本ではないだろうか。
<求められる世紀の行財政改革
 「白アリ退治をしない日本」「官僚の天下りを放任する日本」において、財政は破綻する。そうさせないための大増税を強行する自公政権である。
 日本の屋台骨は白アリで腐りきって、今にも崩壊しようとしている。それに目をつむる政党とマスコミである。こうした危機を左右両翼は、にんまりと待ち構えているのだろう。

 はっきりと言わせてもらうと、官僚機構・日本の役人・お上は、89年のバブル期の報酬体系を維持している。これにメスを入れない政党・政治家ばかりの日本なのである。
 世紀の行財政改革を世界・国際社会は、日本政府に迫っているのだが、歴代政権はお茶を濁して、今も、参院選の渦中においても放置している。嘘とハッタリをかました演説で、支持者・有権者を愚弄している。
官尊民卑の日本>
 官尊民卑の日本を卒業できない、そんな民主主義国などあろうはずがない。1930年、1945年の教訓を学ぼうとしない政党・学界・言論界・官界・財界・宗教界・思想界の日本に、希望を見出すことは不可能だろう。
2013年7月18日10時15分記