本澤二郎の「日本の風景」(1348)

<10%消費大増税は100%実施される>
 参院選終盤にかけて10%消費大増税は、民主党を壊滅させる一方で、争点から隠れてしまっている。原発再稼働もTPPも、である。新聞テレビが、ヒラメ記者とヒラメ編集幹部によって報道しているからだが、真実は財閥の厳命に逆らえないからなのだ。10%消費大増税はまだ確定していない、景気しだいだ、とお茶を濁している自公与党だが、財閥の指令は甘くない。10%消費税は100%実施される。自民党は、財閥傘下の政治部門に過ぎないからである。国民主権も絵にかいた餅なのである。




<財閥からの厳命>
 財閥の本丸は金融部門である。資本主義社会では、言及するまでも無く金融資本が頂点に君臨している。全国銀行協会は、格好の隠れ蓑に過ぎないのだが、実権は三菱や三井にある。
 7月18日付のロイター電子版は、全銀協会長発言を取り上げて大きく報道していた。現在の会長職は、三井住友銀行頭取の国部毅という人物らしい。国部は「消費税率(10%)は計画通り引きあげる」と記者会見で言明した。
 これが財閥中枢の意思なのだ。これに自民・公明も従う。むろん、彼らの小間使いのような安倍も、である。まず8%、ついで10%へと、大衆向けの大増税は強行されるだろう。
 中曽根バブル崩壊のツケを民衆にかぶせる、それが財閥の意思といっていい。彼らは、主権者の意思など虫けらのように弾き飛ばすだろう。日本の1%も、実にえげつない。
<財閥は国家なり>
 小泉内閣を想起すれば、無知な日本人も少しは理解出来るかもしれない。小泉も竹中も財閥の配下に過ぎなかった。彼らは郵政民営化にだけ特化したわけではなかった。
 中曽根バブルで衰退した財閥銀行を再生させるために、民衆の税金・血税を悪用した。それどころかメガバンクを誕生させた。これに公正取引委員会は手も足も出なかった。中曽根バブルが、彼らの実権をより強化したのである。
<財閥が養成するナショナリスト
 戦前の侵略戦争の主犯である財閥は、天皇国家主義を有効活用して肥大化してきた。これに立ち向かったのは一部の右翼だけだった。左翼は官権によって始末された。
 財閥にとって、天皇国家主義が一番暴利を得やすい政治制度であった。しかし、ワシントンは彼らの不正を見逃すことはしなかった。日本敗戦後、真っ先に解体した。だが、不死鳥は朝鮮戦争で蘇った。財閥の手先でしかなかった商工官僚の岸信介を、CIAと協力して政権に就けてしまった。
 国家主義の眼目は、平和憲法の解体にある。石原慎太郎は「破棄する」といい、安倍が「自衛隊国防軍にする」とわめくのも、リベラル日本国憲法をぶち壊すことにある。
 戦後体制を崩壊させることは、安倍路線が国際社会に挑戦状を突きつけていることなのだ。彼の歴史認識も、ここから派生している。アジアはいま重大な岐路に立たされているのである。
 財閥の支援がそれを可能にしている。ここが欧米極右との違いなのである。日本の1%は異質なのだ。
焼け太りメガバンク
 中曽根内閣のバブル経済で暴利を手にして世界の文化遺産やリゾートを買いまくった財閥銀行は、バブル崩壊で破綻するや、小泉内閣を操って血税注入で再生した。同時に、財閥銀行を合体させた。焼け太りで、独占肥大化した。
 これに議会も新聞テレビも抗議するどころか、推進に一役買ってしまった。メガバンクが君臨する日本である。三井や三菱は、欧米のロックフェラーやロスチャイルドに相当するかもしれない。
 これらに日本共産党は「大企業」というだけで、なんとも微笑ましい。
<今も納税ゼロ?>
 彼らは現在、破綻寸前の財政を支援するために、税金を払っているのであろうか。納税義務を果たしていないはずだ。今も、ではないのか。
 安倍内閣誕生で、中央銀行にも手をまわした。急激な円安政策を強行させて、財閥の暴利に貢献させている。そのツケである輸入品の値上がりは、庶民の台所に回している。
 安倍内閣の悪政は、もってかくの如し、である。
<英の銀行監視力・韓国の財閥監視力>
 英国の新聞テレビは、日本ほどではない。国民の怒りは巨大銀行経営者の高給批判へと向けられている。脱税のためのタックスヘイブンにも。韓国でもタックスヘイブンに人々の関心が集まっている。
 韓国における財閥攻撃世論は小さくない。財閥攻撃の学者は、いわばヒーローとして扱われている。手を焼くサムスンは、そんなヒーローを講師に招いて、経済の民主化にも取り組み始めている。
 日本で財閥という言葉は、まだ筆者しか使用していない。財閥批判は筆者だけである。そうした中で、国家主義が爪をかきたてている。
2013年7月19日9時10分記