本澤二郎の「日本の風景」(1353)

<安倍攻撃の3本の矢>
 参院選大敗した民主党で幹事長が辞任する。当たり前だ。しかし、代表は留任するらしい。まだまともな政党ではない。安倍の自民党は、しばらくは恐ろしい改憲軍拡の牙に蓋をして、10%消費増税のための景気対策に専念するという。150万円所得増という詐欺まがいの公約に向かって演技するというのだが、早くも米中韓から3本の鋭い矢が飛んできている。ナショナリスト国家主義の恐怖を経験しているワシントン・ソウル・北京の警戒は、当然のことながら強い。日本の新聞は堕落していて嘆かわしい。



<米紙は改憲靖国NO>
 自民党政治は、霞が関が操る官僚政治である。霞が関は財閥の意向を政策に反映させる。安倍内閣が推進するTPP・原発・消費税は、いずれも民衆が反発する政策ばかりだ。民意を排除した政策である。
 露骨すぎる急激な円安政策は、財閥の株と貿易を潤すもので、これも民意ではない。そこに愚かな宗教政党を巻き込んだ手口は見上げたもので、この策略は小沢一郎も形無しだろう。そろそろ引退してはどうか。

 順風満帆の安倍丸といきたいところだが、太平洋の彼方・米国の高級紙ニューヨーク・タイムズが、22日付の社説で強烈なストレート・パンチを繰り出してきた。国家主義政権の暴走に怒りのNOを表明してきたのだ。
 大学時代の安倍の頭脳や米留学時代の素行を調べ上げているワシントンにとって、3流政治屋に遠慮などいらないらしい。日本の堕落NHKや読売とは違う。同紙は今のオバマホワイトハウスと同じリベラル価値観である。

 官邸や自民党・マスコミ界に食らいついている、ワシントン右翼のジャパン・ハンドラーズではないのだ。「8・15靖国参拝改憲軍拡もNO」と、誰が読んでも分かる言葉で、安倍の顔面に左右のストレートを打ちこんできた。
 わが世の春を謳歌しようとしていた矢先の、安倍の両腕のガードが下がっていたものだから、選挙疲れでむくんでいた顔面が大きくゆがんでしまった?大腸に持病のある身だから、なおさらきつい。
<中国紙は安倍排除>
 負けるものかと、北京で発行している国際関係記事で定評のある環球時報が、中国政府に対して「安倍との折衝はするな」という予想外の社説(23日付)を掲げた。安倍のあごに突き刺さるようなアッパーカットである。
 「安倍を相手にするな。その価値が無い」というのである。この新聞は中国の政府・党の意向を伝える人民日報の姉妹紙である。天皇国家主義政教一致の安倍政治を、ワシントンも北京も気付いたのだ。
 米連邦議会調査局の対日研究チームの報告書は、米国の民主・共和両党に影響を与えるものだ。「安倍はナショナリスト」という真実の評価は、欧米からアジアにも伝染している。
<韓国政府も改憲NO>
 韓国政府の対応について、日本に福沢諭吉レベルの韓国蔑視論が存在していることに最近、気付かされたばかりだが、歴史の歪曲は国際社会で全く通用しない。従軍慰安婦問題を消すことは不可能である。
 同碑はアメリカ各地に設置されている。国連の人権担当の常識ともなっている。安倍やナショナリストらの神社グループが否定しようとしても無理である。
 この問題について、安倍を擁護した大阪市の橋下に対して、今回の参院選は回答を出した。国民の多数は、河野談話を受け入れている。当たり前の史実を歪曲しようとしても、日本国民を騙すことは出来ない。

 日本にリベラルな政権が誕生すれば、財閥の跋扈を阻止できれば、日本は隣国との関係を正常化することが出来る。善良な平和と安定を求める市民は、結束してこの目標を達成しなければ、安穏な生活を確保することは出来ないことを指摘しておきたい。

 韓国政府スポークスマンは、23日の記者会見で、改憲軍拡を目指す安倍内閣に、改めてNOとの意思表示を行った。韓国は女性大統領を選択したことで、歴代政権になかった勇気ある行動を取っている。女性の特性をいかんなく発揮している。
 朴大統領はワシントンと北京での人気がすごい。リベラルが覆っている証拠なのだ。日本はナショナリズムが列島を包んでしまっている。新聞テレビが財閥に屈してしまったからである。

 日本の将来は、水面下の闇の権力である財閥を丸裸にできるか否か、に全てがかかっている。ここに内外の研究者が、しっかりと認識できるかどうか。彼らの多くは、財閥の世話で日本研究をしてきた欠陥研究者である。本来は真実を一番熟知しているのだ。勇気を出せ、スノーデンを見習え、といいたい。
<狂気の安倍カルト思想>
 安倍は、自ら辞任した1期目の、悔やんでも悔やみきれない一事を、靖国参拝が出来なかったことだ、と語っている。彼の靖国信仰・神道信仰は、尋常ではない。お祓い・まじないの世界にのめり込んでしまっている。これは卑弥呼の世界ではないだろうか?
 それは首相在任中6回も参拝した小泉レベルか、それ以上なのだ。天皇国家主義は、政教一致靖国参拝神道の国教化を根底としている異様な偏狭ナショナリズムなのである。
 岸・安倍一族が統一教会にはまっているという事実も、最近のネット掲示板に載っている。石原一族も新興宗教と結びついている。まともな精神の持ち主なのかどうか。それは小泉にもいえる。今の安倍体制は、小泉を支えた官僚らが、今も活躍している。飯島参与だけではないのだ。
<日本は神国?>
 「日本は神国」と途方もないことを信じるナショナリストに政権が掌握されてしまった。源流は岸一族である。CIAを利用して政権の中枢に浮上した長州閥だ。会津の反撃に期待したい。ワシントンは、岸一族の全ての資料を手にしている。
 残念ながら韓国にはない。北京もないだろう。日本人であれば「神風」を信じて散った多くの青年のことを思うと、8月の心は痛む。「神風特攻隊」の全貌が、神国論の狂気を証明している。
<根源は靖国神社
 これを可能にした靖国神話である。「天皇のために死んで、靖国の英霊になれる」という狂気神話に呑みこまれた先人のことを考えると、彼らに踏みつぶされた無数の隣人の悲劇をどう受け止めるべきなのか。頭がくらくらしてくる。
 歴史を知らない日本人、過去を忘却させることで経済成長をしてきた戦後の日本に、いかほどの価値があろうか。ナショナリストは、こうした当たり前の真実を「自虐」とわめく。
宇都宮徳馬ナベツネ
 余談だが、筆者は宇都宮徳馬に出会い、彼の思想・哲学を聞くなかで、それなりにこの国の正体を知る機会を得た。その教えの中に「偏狭ナショナリズムの飼い主は財閥」という指摘に、大いに覚醒することが出来た。政権与党を、官僚を、巧みに操作する正体である。
 本来、宇都宮によって、人生全てのレールを用意してくれたナベツネこそが、宇都宮思想の継承者のはずだった。だが、彼は恩師を裏切って財閥と手を結んで、そこからの資金で新聞テレビ界を制圧してしまった。
 歴代の政権に癒着、現在は安倍路線の宣伝マンになり下がっている。靖国・神国論に屈した堕ちた元言論人である。
2013年7月24日9時45分記