本澤二郎の「日本の風景」(1361)

<二匹の虎の尾を踏んだ国家主義政権>
 安倍も麻生も、共に戦前日本の国家主義の亡霊にのめり込んでいる。それでいて彼らは、新聞テレビを抑え込んだことで、日本人の眼を曇らせることに成功、参院選で大勝した。それも有権者の2割にすぎない。それでいて、日本を戦争の出来る軍国主義の日本に大改造する、と大風呂敷を広げている。手口をヒトラーが率いたナチスに学んでいると、麻生が本心をさらけ出して国際社会に衝撃を与えている。あわてて撤回したが、反省も謝罪もしない。



 世界に二匹の虎が棲んでいる。欧米とアジアだ。安倍はアジア、麻生は欧米の虎の尾を踏んでしまった。分かりきっていたことだが、ナショナリスト政権の前途は危うい。二人とも中国封じ込めに必死だったが、逆に世界から封じ込められてしまった。
 戦後体制を否定、ナチスを肯定する天皇国家主義の復活には、CIAも手を貸さないだろう。


侵略戦争を受け入れない安倍>
 ご存知、戦後レジームからの脱却というスローガンを高く掲げてきた安倍である。他方、価値観外交論で中国封じ込めに狂奔してきた麻生だ。提携して政権転がしをしてきた二人だが、共通項は戦前の天皇国家主義の信奉者である。米連邦議会調査局は、安倍の正体を詳細に分析、ナショナリストと決めつけて、不勉強なアジア諸国民に衝撃を与えた。
 この事実を、いまも新聞テレビは報道しない。安倍に塩を贈って参院選勝利に手を貸した。だが、オバマ政権は容認していない。冷ややかな対応である。そのはずで、安倍は侵略戦争を認めない。従軍慰安婦に対しても。
 韓国・中国はこれに衝撃を受けている。「安倍と会うな」という両国の世論に縛られている。アジアの虎の尾を踏んでしまったのだ。信頼の構築は不可能である。
ナチス戦術を学ぶ麻生>
 麻生が安倍に輪を懸けて本心をさらけ出した。「ナチスに学べ」「ヒトラーのワイマール憲法潰しに学べ」と公言してしまった。右翼の改憲派シンクタンクの行事だったため、安心して日ごろの本音をぶちまけたのだ。
 日本の国家主義者は、常日ごろからナチスの研究に忙しい。その政治手法を学んで実行に移している、と一部専門家は見ている。貧困を逆手に取ったヒトラー流を、不況と失業の日本に適用しようというのだろう。
 歴史を反省しない国家主義者にとって、ナチスは今も特別な存在として受け止められているようだ。「日本は天皇中心の神の国」と信じるナショナリストの本尊は、靖国神社靖国信仰である。天皇の戦死者を英霊とする、特異な祭政・政教一致の政治体制にある。近代人にとって、それは狂気・カルトの世界といってもいいのだが。
 したがって、ヒトラー信仰もゆえなしとしない。「平和憲法ヒトラー流で封じ込めよ」が麻生の信念なのである。しかし、彼らにとって予想外の怒りが表面化した。ユダヤ社会からである。
 韓国の反発に対して、安倍側近の下村文科相は「民度が低い」と反撃したが、実は太平洋の向こう側から、ユダヤの怒りも伝えられてきた。欧米の虎が咆哮したのだ。
<反省も謝罪もなし>
 あわてて安倍も、麻生に中止を命じたようだ。麻生は、役人に書かせた文章を新聞テレビのヒラメ記者の前で読んだ。撤回宣言である。
 そこには反省も謝罪も見られなかった。天皇国家主義は、依然として反省と謝罪を拒絶する。新たにユダヤ社会に怒りの原因をさらけ出してしまった。
 ユダヤ社会の力は欧米の政界に及んでいる。ドイツは現在もナチスの残党に対して容赦しない。今回、日本国家主義は、今も彼らの悪しき実績を手本にしていることが発覚した。欧米では想像も出来ないことを、東京のナショナリストは、自慢話のようにぶちまけてしまったのだから。
<咆哮する欧米・アジアの虎>
 安倍内閣は、日本政府を代表している。その正体はナチスを信奉する天皇国家主義政権だ。これは決してうがち過ぎの見方ではない。

 日本の右翼からナチスヒトラー批判を聞いたことが無い。ヒトラー演説を真似する右翼政治家は少なくない。この点は注目していいだろう。日本のナショナリストは、アジア諸国民を見下げてきているが、欧米に対してはその逆と見られてきた。
 だが、欧米が一番嫌うナチスを評価していたことが、麻生発言で露見した。これは麻生一人の問題ではない。安倍だけでもない。安倍や麻生と同じ価値観が、今の自民党の主流となっている。

 欧米とアジアの二匹の虎の尾を踏んでしまった安倍・自公政権に対して、今後、国際社会は厳しく見つめることになろう。戦争の出来る日本大改造を警戒する国は、アジアばかりではないのだ。
2013年8月2日21時05分記