本澤二郎の「日本の風景」(1378)

東芝3号機は核爆発>
 「東電福島第一原発3号機は水素爆発」という東電・原子力ムラの発表は、真っ赤な嘘である。素人でも1,2号機と3号機の爆発を映像で比較すれば、明らかに違いがわかる。東芝製3号機の核爆発は、欧米の学者らの常識となっている。それでも東電は事実を認めない。東芝は沈黙している。新聞テレビも議会も追及しない。空恐ろしい悪魔のような日本社会である。炉心溶融メルトダウン)さえも、2カ月以上も隠し続けてきた東電と政府である。実際はメルトスルーのため、溶けた核燃料の所在を誰も特定できないし、見た人もいない。



 地上最大の危険地帯に責任ある指導者は、誰も近寄ろうとしない。東電首脳陣さえ現場に行かない。安倍内閣の閣僚も、誰ひとり現地で采配を振る姿を目にしない。事故は収束どころか危険が一杯詰まっているため、誰も怖くて立ち寄ろうとしないのである。
 「昨夜3・11直後の嘘情報を垂れ流して国民の怒りを買ったNHK解説委員が、また復帰していた」との情報を得た。さすがに、もう一人の東大教授のテレビ出演はない。
 放射能汚染水は地下水から海へと垂れ流されていて、食い止める手も打てないありさまだ。地上の保管タンクからも大量の汚染水が漏れ、それを隠していた東電も、ここにきて表面化している。無様もいいところで、もはや悲劇を通り越している。原発は悪魔のエネルギーだ。人間が手を出してはならない核エネルギーである。
 それでも安倍は、東芝・三菱・日立の原発輸出に必死である。中東訪問で新たな売り込み先を開拓しようとしている。
 人類はドイツの懸命さを学ばねばならないのだが。
<藤原元原発検査官も断言>
 8月17日和歌山県田辺市の紀南文化会館の講演会で、元原子力安全基盤機構の原発検査官だった藤原節男さん(64)は、はっきりとした日本語で「3号機は核爆発」と断定した。東芝製の3号機はプルトニウムMOX燃料を使用している。プルトニウム核兵器になる。
 「3号機は黒煙が上空に上がっている。鉄骨が飴細工のように溶け落ちている」と指摘して、東電のいう水素爆発ではない、核爆発だと証言した。「都合の悪いことを隠す官僚や東電は、何も知らない人たちに悪事を働く構造になっている」とも断罪した。
 元原発検査官は、勇気ある正義の日本人である。彼こそが英雄なのだ。
<反骨の最高裁の山本判事>
 8月20日付で最高裁判事に就任した山本庸幸前内閣法制局長官も、勇気ある反骨の官僚である。「集団的自衛権憲法解釈で変えることは出来ない」との法制局の立場を、就任会見で明言した。
 歴代内閣の憲法認識は、すべからく内閣法制局の仕事だった。「専守防衛」の自衛隊については妥協してしまったが、世界各地での自衛隊の戦争を可能にする集団的自衛権は、憲法9条は禁じていると断固、主張してきた。

 もしも、そんなことにでもなったら、誰も自衛隊に入らない。ならば徴兵制にすればいい、が国家主義の立場である。アメリカの産軍体制に寄り添うことで、戦前の大日本帝国に近づけようとの策略でもある。
 隣国・隣人が2度と見たくない日本である。ワシントンのリベラル政権も、それはNOである。オバマは安倍・国粋主義に困惑している。知らぬは日本国民だけである。新聞テレビを掌握した安倍の強みでもあるが。新聞テレビが戦前に回帰していることを、人々はわかっていない。

 「集団的自衛権の行使はNO」という岩盤を突き崩そうとした最初の政治屋中曽根康弘だった。だが、法制局は屈しなかった。中曽根と読売が強行に主張したが、法制局は断固としてはねつけてきた。法の番人としての、当然の立場なのだが、安倍は「中曽根とは違う」というのだ。
ナチス改憲にNO>
 安倍の手口は麻生太郎のいうナチス流で処理する、というものだ。ナショナリズムの恐怖は、目標が定まると、使える手段は何でもやる。民主・人権侵害お構いなしなのだ。
 かくして、安倍は法制局長官人事で処理するという禁じ手を用いたのだ。極右外交官を就任させた。これで法制局見解を変更するという安倍戦略に対して、山本前法制局長官が、猛然とかみつき、NOと言明した。
 ナチス流は通用しない、と新任の最高裁判事が言明した政治的効果は大きい。これでボンクラ野党も、ヒラメ記者も少しは覚醒するに違いない。
 ナチス流を編み出してきた菅官房長官が激怒したが、あとの祭りだった。勇気ある人々の誕生の背景には、善良な知識人であれば、国家主義への恐怖が存在する。ワシントンでさえも、国粋主義者・安倍を分析、警戒するようになったのだから、当然といえば当然なのだが。
<韓国では靖国参拝リストを世界に公表>
 韓国議会も警戒を怠らない。36年間の植民地支配がこびりつく韓国社会である。安倍・国家主義との対抗策に必死なのだ。
 韓国の聯合ニュース(8月21日)は、与党議員が靖国参拝の全リストを世界・国際社会に公表するとの方針を打ち出した、と報じた。侵略戦争を否定する日本の政府・議会人をあぶり出し、それを世界に向かって公表する、というのだ。
 これは効果的な手段である。国家主義政治屋をあぶり出すことで、有権者の目も変わるだろう。政治屋の評価・採点表ともなる。国際社会で通用しない政治屋など、21世紀において不要なのだから。
 ネットでも流れることになる。中国や韓国は言うに及ばず、欧米社会からも冷たくあしらわれるだろう。韓国与党議員の勇気ともいえる。

 韓国の検察は、いま軍事独裁大統領だった全斗カンの不動産を差し押さえているとして、評判になっている。東電の捜査をしない日本のそれとの違いは、明らかであろう。地に落ちた検察の東京である。
メルケル首相はナチス収容所跡訪問で追悼>
 また、ドイツのメルケル首相は、南部のダッハウ強制収容所跡を訪問して、追悼の花輪を捧げた、と日本の新聞が小さく伝えた。1933年にヒトラーが政権奪取した年に造られた強制収容所という。
 政権を握るまでは、柔軟な姿勢で人気を博した独裁者は、ひとたび権力を掌握すると、ヒトラー批判を許さない、そのための強制収容所も同時並行して準備していたのだ。そこの犠牲者を追悼したメルケルも立派だ。
 ナチス礼賛の麻生に対して、メルケルナチスに抵抗した人々に頭を垂れたのだ。
 東京新聞が伝えたところでは、東北の地での安倍選挙演説の最中に「原発再稼働反対」のプラカードを持っていた有権者を警察が排除したという。早くも言論弾圧が行われている、と指摘されている。これもナチス流かもしれない。

 筆者が気にしていることの一つは、消費税10%を強行した黒幕の勝とかいう財務事務次官天下り先が、ネット情報を統括する機構の社長に就任している、という事実である。何かを策しているのだろうか。
2013年8月22日9時55分記