私見:シリアをめぐる中東情勢
黄泉の国から 「岩下俊三(旧姓)のブログ」からリユーアル
現地に行ってないから断言はできない。だからといって、まことしやかな嘘をつくほど器用でもない。
しかし蓋然性として当然言えるだろうことは、、、ある。
シリアの反政府軍のアルカイダ勢力のコントロールが難しくなったアメリカが諜報謀略を諦め、強硬手段出ることがなくなった、、、というより開戦の構えだけでよくなった。オバマのシリア介入については国民にちかい下院の承認を
得ることが事実上不可能であるばかりか、戦闘当事者である肝心のアメリカ空軍が反対しており思うにませない「大統領の失策」状態であった。それがなんとか面子を保てたのだ。
またそれは戦(いくさ)疲れや厭戦気分だけでなく、やはりアメリカ空軍としてシリア政府に攻撃するということは結局、反政府軍に加担することになり、アメリカ空軍の「アルカイダ空軍」肩代わりだけはしたくはなかったということでもある。それにエジプトのイスラム同胞団政権ですら「コントロール」出来ず、結局サウジとイスラエルの仕掛けた軍部独裁に指をくわえているうえ、またしてもイスラエルの保護のためヤンキーの血をこれ以上流したくはないというのが偽らざるペンタゴンの本音であろう。軍人はこれ以上複雑なホワイトハウスと国務省の権謀術数外交に振り回されたくないのである。
そこで、
今回の「ロシア提案」は、ととえアメリカ政府筋からあらかじめ打診されていたものにせよ、いかにもプーチンの奇策のように扱われた「落としどころ」として、オバマ自身が振り上げたこぶし「だけで」終れる最高のシナリオであったのだ。
オバマはさぞホッとしていることだろう。しかもこれには国連管理下に置くという大義名分でシリアの化学兵器がイスラエルに向かう恐れがなくなったというおまけまでついている。渡りに船とはまさにこのことである。
ここで改めて言うまでもないが、シリア政府は非公式に化学兵器を有しているが、それを国内鎮圧のためにつかうほど「アホ」ではないことを確認しておこう。(NHKがわざと混乱した報道をしているので)
そこで、事実関係は分からないが確実な情報から「推論」すると、、、
イスラエルはそんなことは百も承知、中東におけるアメリカのプレザンスなどすでにあてにしてはいないということである。
そしてアメリカの中東における存在感が著しく衰えた今日、イスラエルは後ろ盾を失いアラブの勢力と和解するしか手がなくなっているのだ。そうすると中東の秩序は同じく対米従属を建前として王族の利権を守ってきたサウジアラビアとイスラエルの呉越同舟しかないのである。イスラムのテロリスト勢力をここで押さえていないとイスラエルの国家存続すら危うくなるのだ。
ただでさえアメリカはイランが穏健路線に変わったことをいいことにイランに戦争を仕掛ける気など全くなくなっており、以前にあったイスラエルの強硬路線は危うくなっている。世界世論は相変わらずイスラエルがアメリカを動かしているというが、そんなのはもう通用しないのである。そこでイスラエルとしては、仇敵イランと敵対したままで、このうえシリアと下手に対立するよりイスラム包囲網を懐柔するためにもサウジと手を組み、ロシアとすら協調していくしかなくなったとみるべきであろう。
もちろんイスラエルにとってシリア政権は決して快くはないが、ヒズボラやアルカイダに力をつけさせるよりベターな政権であり、人権を振り回して世界の警察官をアメリカに演じてもらいアルカイダ系を結局援助することになるとかえって迷惑だというのがネタニヤフの腹の内に違いない。
この危機を救い、中東情況を「三方一両損」にもちこんだプーチンが期せずして男を上げたようだ。
*余談ではあるがオリンピックにばかり浮かれていないでマスコミは世界情勢にもすこしは気を配ってほしいものだ。