本澤二郎の「日本の風景」(1458)

<誰でも拘束できる特定秘密保護法案>
 まともな福島原発報道をしたNHK記者が、その後に痴漢行為で逮捕された事件を、ずいぶん後になってネットで知った筆者である。政府政策を批判した経済学者にも、痴漢事件をひっかけて大学教授の椅子を奪い取った事例がある。既に日本の言論の自由は、官憲によって制約を受けている。今度は安倍内閣の3本の毒矢の一つ、特定秘密保護法案が成立すると、誰でも拘束可能になる。日本記者クラブでの日本弁護士連合会の「秘密保全法制対策本部」事務局長の清水勉弁護士の記者会見で明らかにされた。



<教唆・共謀で身ぐるみはがされる正義の市民>
 日本はまともな近代法治国家と教え込まれてきた日本人ばかりだが、決してそうではない。政治家でもまともになると、小沢事件やら鳩山事件が待ち構えている。まだ記憶に新しい。
 国民の代表でも虎の尾を踏むと、それがまともであればあるほど悪しき官権の牙は鋭い。戦前であれば獄死事件になる。治安維持法がその法的役割を担い、特高警察が暗躍した。
 同じような事態が想定される特定秘密保護法案なのである。極右・国家主義政権の野望には、ひたすらあきれるばかりだ。
 そもそも特定秘密をジャーナリストや国民は知らない。防衛・警察・外交の大臣が、官僚の言いなりになって、秘密裏に特定するものだから、国会議員もわからない。新聞やテレビで、あるいは大学の講義や講演会などで、どうも「これが怪しい。問題だ」という場面があったとする。
 その人物が、政府に批判的だと当局に睨まれていると、共謀や教唆の規定によって拘束されてしまう。そのさい、家宅捜索によってパソコン・携帯から全ての個人情報も押収される。それの悪用が永遠に付きまとうことになる。
 逮捕という事実で、その人物は社会から、はては家族からも抹殺されてしまうのだ、ということも想定される。
 安倍側近で極右の女性担当大臣、それに自民党公明党は、必死で「それはない」と強弁しているが、政治家や政治屋の嘘は、安倍の福島発言で、あるいは、野田の消費増税発言で証明されている。政治屋の発言など信用できない今日である。
<政府批判できない独裁国家への道>
 清水は「新聞社などでの取材企画会議が共謀罪とされかねない」というのである。簡単に当局は、身辺捜査や任意同行で市民を封じ込めることが出来る。自由な市民活動にも刃が向けられかねない。
 これはもはや自由な国ではない。強権的な独裁国家である。日本国憲法が容認しない反人道・反人権秘密の国家を意味する。
 筆者のいう平成の治安維持法なのである。外国特派員協会や米ニューヨーク・タイムズ社説が反対して当然なのである。

 彼は「官邸前でのデモや農民のTPP反対デモもテロの恐れがあると判断される。県庁前のデモにも適用可能」という、なんとも恐ろしい法案が国会で議論されている。清水会見は11月8日のことである。
 これに日本記者クラブさえもNOという声明を出していない。政府の毒矢にもあきれるが、これに反撃できない日本新聞協会や記者クラブの不甲斐なさにも、怒りでうんざりするばかりである。
言論の自由を完璧に封じ込める悪法>
 この毒矢のために隣国との対立を仕組んだカラクリを、愚民でなければ理解できるだろう。自ら軍国主義者を名乗り、米連邦議会調査局からは国粋主義者とレッテルをはられた安倍である。
 戦前の国家総動員体制に向けたものか。お話にならない。日本の軍事利権に手を突っ込んでいるR・アーミテージごときに示唆されたので作ったと公言する、特高警察を父親に持つ町村ごときに平和国家を委ねていいのだろうか。
 西山太吉事件は、日米政府の民意に反した悪しき核密約を公にした正義のジャーナリスト活動を、犯罪に仕立てた国家犯罪である。まともな日本であれば、西山はヒーローなのである。
 マスコミでさえも、当の毎日新聞でさえも、この事実に胸を張れないという。ジャーナリスト不在に問題の根源がある。
憲法違反の天下の悪法>
 日本国憲法は世界に誇れるものである。筆者を含めて正義の言論は、この憲法を基本にして成り立っている。これに官権も政治家も従う義務がある。安倍も憲法尊重義務を負っている。そうでないのであれば、憲法の名において即座に罷免される対象である。
 昨日、知り合いが「安倍側近に米ボストン大学で情報操作を勉強した者がいる。父親は戦後の隠退蔵物資でカネをため込んで、大学を設立している」と連絡してきた。全く知らない情報だったが、もしも事実だとしたら?
 安倍内閣の情報sousaが抜きんでていることは、筆者も認めないわけにはいかない。確かである。
2013年11月14日8時30分記